PROFILE: 柳井康治/ファーストリテイリング取締役グループ上席執行役員

ユニクロ(UNIQLO)が20年以上にわたって取り組んでいる難民支援に、映画という切り口が新たに加わった。俳優のケイト・ブランシェット(Cate Blanchett)氏らが2025年1月に立ち上げた「難民映画基金(Displacement Film Fund以下、DFF)」に創設メンバーとして参加し、映画界からも注目を集めている。ファーストリテイリングで同プロジェクトを率いるのは、柳井康治取締役。柳井取締役は、23年のカンヌ国際映画祭で役所広司氏が最優秀男優賞を受賞した、ヴィム・ベンダース(Wim Wenders)監督作品「パーフェクト・デイズ(PERFECT DAYS)」のプロデューサーも務めた人物だ。“服のチカラ”のユニクロが、“映画のチカラ”で何を起こそうとしているのか。
WWD:ユニクロは2001年のアフガン難民への衣料支援以来、20年以上にわたって難民支援にさまざまな形で取り組んでいる。服の小売業の会社が、難民支援に熱心に取り組む理由は何か。
柳井康治ファーストリテイリング取締役グループ上席執行役員(以下、柳井):ユニクロは世界中で商売をさせていただいている以上、それぞれの国・地域で求められる存在になっていかなければいけません。自分たちが何を考えているどんな会社で、どのようにその国や地域に貢献できるのかは、非常に重要な問いです。世界で最も大きな問題の一つである難民問題は、自分たちが対峙していかなければならない課題。だからこそ、会社としてできることを最大限サポートしようという思いで、これまで支援活動を行ってきました。
僕個人としても、世界各地に出張する中で、難民問題を近くに感じる場面が何度もありました。特に欧米やアジアでは、難民問題は非常に身近な問題。バングラデシュのコックスバザールでは、ミャンマーから逃れてきたロヒンギャの難民キャンプを訪れました。目の前で難民の方の生活状況を見る中で、自分たちにはできることがあると強く感じましたし、服が実際に役立っている現場を見ると、 “服のチカラ”を信じてやってきたわれわれの支援は間違っていないと確信を持ちました。
WWD:ユニクロとしては、衣料支援だけでなく、難民雇用や自立支援など、多様な形で難民を支援をしている。
柳井:難民の方たちの一番の希望は、自分たちがもともといた国や地域に戻って、生活を取り戻すことです。そうなったときに役立つように、コックスバザールでは難民女性に自立支援として縫製技術のトレーニングも行っていて、キャンプの女性たちが必要とする布ナプキンや生理ショーツを縫っています。技術を身につければ、いつか自立するタイミングが来たときに生かすことができる。トレーニングの場が、同じ境遇に置かれた女性たちが集い、コミュニケーションする場にもなっています。
「映画は世界中に
届ける手段として有効」
WWD:そのような多様な難民支援の形に、「DFF」によって新たに映画という切り口が加わった。なぜ映画なのか。
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