1. 三越 vs 高島屋「お江戸日本橋の百貨店戦争」 老舗は別々の道を歩み始めた

三越 vs 高島屋「お江戸日本橋の百貨店戦争」 老舗は別々の道を歩み始めた

コラム 企業動向 商業施設 リブランディング

2018/9/19 (WED) 12:00

 東京・日本橋の三越と高島屋といえば、建物は威風堂々たる重要文化財、中心顧客は富裕層や中高年、品ぞろえはコンサバといったように、性格が似たライバル百貨店として長年しのぎを削ってきた。売上高も三越日本橋本店が1553億円(全国5位)、高島屋日本橋店が1342億円(同7位)と全国屈指だ(2017年度)。そんな2大店舗が別の道を歩もうとしている。老舗に重い腰を上げさせたのは、ネット通販など新しい消費スタイルの荒波である。

ポケモンから高級時計まで SC化で顧客層を広げる高島屋

 百貨店として初めて国の重要文化財の指定を受けた高島屋日本橋店の本館。その荘厳なファサードを連続させたような外観の新館が隣に完成し、9月25日にオープンを控えている。地下1階・地上7階の約1万7000平方メートルに114店の専門店を誘致した。百貨店ではなく、テナントから賃料をとって運営するショッピングセンターとして営業する。

 新館オープンに伴い、百貨店の本館、15年に開店した時計専門館「タカシマヤ ウオッチ メゾン」、今年3月に開いた東館の「ポケモンセンター トウキョーDX&ポケモンカフェ」を合わせて売り場面積6万6000平方メートルの4館体制になる。これを機に全体の名称を「日本橋高島屋S.C.」に改める。百貨店を核にした都市型ショッピングセンター(SC)という位置付けだ。

 高島屋はグループの不動産会社・東神開発と共に二子玉川や新宿、シンガポールなどで同様の手法を用いて成功してきた。百貨店と専門店の両輪で、手頃な商品からラグジュアリー・ブランドまでの商品をそろえ、幅広い世代を集客して買い回りを促す。高島屋の木本茂・社長は自信をのぞかせる。「(足元の)中央区および臨海エリアは若いファミリー層が急増しています。さらに日本橋のビル開発で多くのオフィスワーカーが存在する。日本橋高島屋S.C.の完成で、これら新しいお客さまのニーズに応えられるようになります」。長年の課題だった顧客の高齢化を、専門店導入をテコにして一気に若返らせる狙いだ。

 すでに「ポケモンセンター」は、日本橋にはこれまでは少なかった子供連れのファミリー客で平日もにぎわうようになった。タカシマヤ ウオッチ メゾンは都内屈指の高級時計の品ぞろえが注目され、数百万円の時計が活発に動いている。オープンを控えた新館にはセレクトショップやコスメ、雑貨、ヨガスタジオ、そして集客力抜群の飲食店や食物販店を誘致し、20〜30代の客を呼ぶ。ポケモン、高級時計、スポーツ施設、飲食などネット通販には代替できないコンテンツを重点的に集めているのがポイントである。

感動を与えるスペシャルな接客 富裕層を深掘りする三越

 一方、高島屋とは橋梁の日本橋を挟んで200〜300メートルの距離にある三越日本橋本店は、日本で初めてデパートメントストア宣言をした元祖・百貨店だ。同店は10月24日に大規模改装オープンする。

 小売業の改装とは売り場を変えることだが、同店の改装は売り方の刷新に重点を置くものだ。ブランドに所属する販売員とは別に、婦人服、紳士服、食品、美術、リビング、宝飾&時計など各分野の専門販売員であるコンシェルジュ約90人と、売り場を超えて買い物に同行しコンシェルジュと客とをつなぐガイド約100人を配置する。緊密な接客で顧客一人一人の満足度を高める。理念としてのおもてなしではなく、事業戦略として“稼ぐおもてなし”の導入である。

 例えば、大事なプレゼンを控えるキャリアウーマンの顧客に対して婦人服のコンシェルジュは、イメージコンサルタントの資格を持つスタッフと一緒にその人に最も似合うパーソナルカラーの診断やコーディネートの提案をブランドの垣根を超えて行う。いわば専属のスタイリストを雇うのに近いイメージだ。しかもプレゼン自体に心配があれば、メンタルトレーニングまで紹介する。「ここまでやってくれるのか」という感動を顧客に与える接客である。

 三越日本橋本店の一角には現在、「もしも叙勲内示がお手元に届いたら」のキャッチコピーと共にタキシードとドレスのマネキンのディスプレーがある。顧客には勲章をもらうような名士が少なくない。彼ら彼女らのために、授賞式や受賞パーティーに際しての服装、勲章や表彰状を収める額縁、記念品、パーティーでゲストに配るお土産まで、ガイドとコンシェルジュが最適のものをアテンドする。他にもクルーズ旅行、ホームパーティー、ガラパーティー、乗馬、新生活など、あらゆる要望に対して商品分野をまたいでパッケージで応える。これまで外商顧客に行ってきた特別なサービスを一般客にも広げる試みだ。

 併せて販売員一人一人が持っていた顧客に関する精緻な情報を、デジタルツールを使って一元管理する。コンシェルジュやバイヤーは商品情報と紐付けしたかたちで顧客情報を共有し、その人に最適な提案を行えるようにする。

 百貨店業界では近年、ローコスト経営が叫ばれてきた。他の小売業に比べて百貨店は人件費が高く、収益を圧迫していた。売上高の減少にも歯止めがかからないため、店舗運営に関わる人件費を抑える必要に迫られた。具体的には販売に関する人員は取引先であるアパレルメーカーなどの外部スタッフに任せ、自前の社員スタッフを減らす動きだ。今回の三越日本橋本店の手法はこの逆張りといえる。

 人員を厚くすることで収益は悪化しないのか。そんな疑問を同店の営業担当者は一蹴する。「お客さまに接する社員は増員しますが、売り場運営の社員やバイヤーなど商品に関わる社員を集約しており、店舗全体の人件費は同じか、少し下がる見通しです。それに実は4月から一部でコンシェルジュを先行導入したところ、お客さま一人当たりの購買単価は数倍に跳ね上がっています」。2020年度(21年3月期)は、コンシェルジュサービスによる50億円の押し上げを含み、改装効果で100億円の増収を見込む。

 大胆な変革を後押ししたのは、百貨店を取り巻く環境変化だと浅賀誠・本店長は語る。「この十数年、カテゴリーキラーやSPA(製造小売業)、ネット通販などの競合に売り上げを食われてきたことで、逆に百貨店が進むべき方向性が明確になったと言えます」。

 浅賀本店長は「富裕層に(ターゲットを)絞ったサービス強化ではなく、三越ファンを増やすことが狙い」と説明する。とはいえ、この手厚い接客サービスの需要はやはり富裕層が中心となるだろう。特に60代以上のシニア顧客の比率が高い同店にとって、40〜50代の新しい富裕層の囲い込みが課題だ。

 高島屋がショッピングセンター化によって顧客の幅を「広げる」戦略をとるのに対し、三越は顧客の客単価や来店頻度のアップによって百貨店業を「深掘りする」戦略を選んだ。保守本流の百貨店として日本橋で併走してきた両店の新しい挑戦は、百貨店の未来を占う上でも目が離せない。

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