ファッション

“ロイヤル オーク”ファンは当初否定 「オーデマ ピゲ」の新作が市場に受け入れられたわけ

 スイスの時計ブランド「オーデマ ピゲ(AUDEMARS PIGUET)」は、10月19日から11月4日まで東京ミッドタウンで開催中の「東京ミッドタウン デザインタッチ(TOKYO MIDTOWN DESIGN TOUCH)で「時計以上の何か」展を催している。時計の文字盤をイメージした12の部屋で、アーティスト池田亮司の動画作品やスイスから来日した時計師の作業と共に、1875年に創業者の一人ジュール・ルイ・オーデマ(Jules-Louis Audemars)が時計学校の卒業制作で作った懐中時計から、2019年に発売した“コード11.59 バイ オーデマ ピゲ(CODE 11.59 BY AUDEMARS PIGUET)”まで150本以上の時計を展示する。オリヴィア・ジウンティーニ(Olivia Giuntini)=チーフブランドオフィサー(以下、CBO)に話を聞いた。

WWD:12時位置から6時位置にかけてアーチ状のカーブを描くサファイアクリスタル製の風防や、ギリギリまで幅が絞り込まれたベゼルなど新作“コード11.59 バイ オーデマ ピゲ”は独創的なデザインやディテールを多数持つ。市場にはどう受け入れられた?

オリヴィア・ジウンティーニ オーデマ ピゲCBO(以下、ジウンティーニ):賛否両論があった。もともとの「オーデマ ピゲ」好きやアイコンモデルである“ロイヤル オーク(ROYAL OAK)のファン、さらには時計業界は否定的だった。ただ、それは1972年に“ロイヤル オーク”を発表したときと同じ。そもそも市場は、“ロイヤル オーク”のような基幹モデルが発表されるとは思っておらず、そこにわれわれは13モデルを一気に投入した。それにより“ざわめき”が起きたが、「オーデマ ピゲ」は“新しい家族”が生まれたことを高らかに宣言したかった。

WWD:その後の市場の動きは?

ジウンティーニ:好転した。客が買い、身に着けてSNSなどで「すばらしい時計だ!」と拡散してくれた。つまり“コード11.59 バイ オーデマ ピゲ”は市場に歓迎された。

WWD:“ロイヤルオーク”や、同じくアイコンモデルの“ミレネリー(MILLENARY)”に代わる存在となりうるか?

ジウンティーニ:第3のモデルとして、これまで「オーデマ ピゲ」が獲得できなかった層にリーチできている。実際、購入者の6割が新客で、これは当初の見込み以上の結果だ。現状は8割が男性客だが、新たにレザーストラップモデルも投入したので、今後は女性客も増えるだろう。それに購入者が男性であるというだけで、それは女性へのプレゼントかもしれない。

WWD:“コード11.59 バイ オーデマ ピゲ”はどんな人に支持されている?

ジウンティーニ:“伝統的でシンプルなラウンド型のデザインだが、内に秘めたストーリーを持つ”、そんなユニークな時計を求める人が購入している。彼らは既成概念にとらわれることなく、新しいものを求めている。

WWD:日本では高級時計が売れており、中でも40代のキャリア女性がそれらを選択するケースが増えている。「オーデマ ピゲ」は彼女たちにどんなアプローチをする?

ジウンティーニ:対象が女性だからといって、アプローチの方法を変えることはない。ただし「オーデマ ピゲ」には、女性にアピールできるモデルがたくさんある。例えば、2019年9月に発売した単針(針を1本しか持たない)モデルの“ミレネリー・フロステッドゴールド・フィロソフィーク(MILLENARY FROSTED GOLD PHILOSOPHIQUE)”は新ムーブメントを搭載しており、槌(つち)目を思わせるハンドメードダイヤルの美しさも特徴だが、「現代人にとって時間とは?」とあらためて考えるきっかけを与えてくれる。

WWD:非常にコンセプチュアルだ。

ジウンティーニ:問題は、そのコンセプトがしっかりとユーザーに伝わるかどうかだ。だから今回の「時計以上の何か」展のように、幅広い層に「オーデマ ピゲ」を知ってもらう機会を増やしたい。

WWD:そのために、大掛かりな展示であるにもかかわらず無料開放している?

ジウンティーニ:その通りだ。

WWD:20年4月、「オーデマ ピゲ」不在の「S.I.H.H.(サロン・インターナショナル・オート・オルロジュリ)※」が開催される。「S.I.H.H.」を撤退した「オーデマ ピゲ」は今後、どのように消費者やメディアと接していくのか?

※コンパニー フィナンシエール リシュモン(COMPAGNIE FINANCIERE RICHEMONT以下、リシュモン)が1991年にスタートした、ラグジュアリーに特化した国際時計見本市。毎年1月にスイス・ジュネーブで開催され、リシュモン傘下の「カルティエ(CARTIER)」「ヴァシュロン・コンスタンタン(VACHERON CONSTANTIN)」「A.ランゲ&ゾーネ(A. LANGE & SOHNE)」のほか、ケリング(KERING)傘下の「ユリス ナルダン(ULYSSE NARDIN)」や「ジラール・ペルゴ(GIRARD-PERREGAUX)」なども参加する。10月16日に、名称を「S.I.H.H.」から「ウオッチ&ワンダー ジュネーブ(WATCHES & WONDERS GENEVA)」に変更することが発表された

ジウンティーニ:「S.I.H.H.」撤退の理由は、いっそう顧客と寄り添うためだ。1月に「S.I.H.H.」で新作を発表しても、実際の発売は夏。このタイムラグが問題だった。今後はネットやSNSを活用して、またこれまで通り雑誌やウェブサイトとも連携しながら、発表した新作はすぐに店頭で触れられるようにする。見聞きする→興味を持つ→購入する、というステップを凝縮する。また「時計以上の何か」展で「東京ミッドタウン デザインタッチ」と協業したように、「オーデマ ピゲ」はデザインやアートと積極的にリンクしている。3月に香港、6月にスイス・バーゼル、12月にマイアミで開催される世界最大級の現代アートフェア「アート・バーゼル(ART BASEL)」にも出展しており、こういった形でもタッチポイントを増やしていくつもりだ。

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