ファッション

「オープニングセレモニー」がオンワードと提携解消しジャパン社設立 創業者が語る日本上陸10年目での決断

 ウンベルト・レオン(Humberto Leon)とキャロル・リム(Carol Lim)が手掛けるセレクトショップ兼ブランド「オープニングセレモニー」(OPENING CEREMONY、以下OC)は、日本事業を担ったオンワードとのパートナーシップを解消し、今後はジャパン社を設立してダイレクトに日本でのビジネスを行う。同ブランドはさまざまな国が一斉にそろうオリンピックのオープニングセレモニーのように世界各国のファッションやカルチャーを集め、2002年にニューヨーク・ソーホーに1号店をオープンし、09年に日本上陸から今年で10年を迎えた。

 10周年では、これまでブランドと親交があった水原希子やクロエ・セヴィニー(Chloe Sevigny)、「Jプレス(J.PRESS)」「スーパーラバーズ ×リトルサニーバイト(SUPER LOVERS × LITTLE SUNNY BITE)」「ブラックアイパッチ × ウィムジー(BLACKEYEPATCH × WHIMSY)」とコラボした5つの限定コレクションを発売しキャッチーなアイテムで次へのステップをスタートさせた。

 7月に「ケンゾー(KENZO)」のクリエイティブ・ディレクターを退任し、これから日本事業において新たな章を開く2人にこれまでの10年と、今後について聞いた。

WWD:日本上陸10周年、おめでとうございます。日本で10年、本国では17年も「OC」が支持される理由は?

ウンベルト・レオン(以下、レオン):2002年に始めたときは、世界中を旅しながら(若手のブランドなど)新たな発見を、世界中に届けるというミッションを掲げた。17年後、今もその信念は変わらずに続けている。例えば昨年は1年間メキシコのデザイナーやクリエイターにフォーカスした。特に今アメリカ(の移民問題)を見ていると、メキシコのクリエイターに光を当てなければならないと強く思ったからね。

他のブランドにないわれわれの強さは、やっぱり若いうちから有望なブランドを見つけだす発見力だと思う。今も毎シーズン100ブランド前後がルックブックを持ち込んでくるけど、しっかりしたストーリーがあって、共感できるミッションがあれば、どんなに無名なブランドであっても取り扱うことが多い。でも、若手ブランドは正直ビジネスについての知識が浅いことも多いから、適正な価格設定や生地の調達などについてアドバイスをして、メンターのような役割も担っている。イエール賞やLVMHプライズ、日本のファッションプライズに選ばれる若手ブランドの8割は「OC」に出店経験があるほどだよ。ある程度成功してからではなく、デビューシーズンから扱うブランドもたくさんあるし、ここまでオープンドア(受け入れる)なお店はないんじゃないかな。今は有名な「ジェイ ダブリュー アンダーソン(JW ANDERSON)」や「アレキサンダー ワン(ALEXANDER WANG)」も若いうちからOCで取り扱ったからね。

WWD:新規ブランドを発掘する基準は?

キャロル・リム(以下、リム):「OC」は昔からファッションだけでなく、食や音楽、アートなどカルチャー全般を扱ってきた。ただの洋服店ではなく、さまざまな人が自由にカルチャーについて触れ、語り合う“町の広場”のようなスペースを目指してきた。だからプロダクトを扱ったり、コラボする相手は必ずしもファッションデザイナーではないわ。デザイナーにしろクリエイターにしろ、プロダクトのクオリティーはもちろん、共感できるストーリー、われわれが一緒に協業したいと思わせるパッションがあることは必須ね。

レオン:われわれが興味を持っていることのうち、ファッションはわずか10%くらいにしか値しない。ファッション以外にもアートだったり、音楽、食などのカルチャーにも興味があるし、アクティビストや学者からも刺激を受ける。行動力があって、環境問題や政治、ビジネスについて真剣に向き合い、新しいアイデアを生み出す人に引かれる。この間も環境アクティビストとコラボしたし、メキシカンコミュニティーをここ1年でサポートしてきたのもその一環。それ以外にもLGBTQ+やアジアンコミュニティーも支援してきた。ファッションというプラットホームを生かして、こういったマイノリティーグループをサポートしたり、社会問題について考えるきっかけを作るのも「OC」のミッションだよ。サポートの仕方も彼らが作る製品を扱ったり、はたまたコラボ製品の売り上げの一部を慈善団体に寄付したり、その方法もさまざま。真面目なトピックスだけれど、ファッションを通じてだったらみんな手軽にサポートできるだろう?そいうのも、今まで洋服店では珍しかったことだから、ここまで成長できたのだと思う。

WWD:EC市場も拡大し、過去10年でかなりファッション市場も変化してきたと思うが、どのように対応してきたのか?

レオン:1年に一度、“リフレッシュボタン”を設けるようにしているよ。市場は常に進化していくものだし、その変わり方は消費者が直接的にも間接的にも教えてくれるものだと思う。だから毎年、自分たちのビジネスの仕方について改めて考え直す期間を作っている。時には大きな変革が必要なこともあると思うし、今回の日本ビジネスについてもそう。「OC」でも「ケンゾー」でもメインとプレ・コレクションを1月と6月に発表すると決めたのも、今のファッションシステムはサステイナブルでないと考えたから。それはブランドでもあり、リテーラーでもあるからこそ、製品の生産から販売までには6カ月が必要だって分かっているからでもあるね。いつまでもやり方や考え方を変えないブランドは、置いてけぼりになってしまう。昔は「毎年ロゴを変える!」なんてことも言い出したけど、流石にそれはサステイナブルでないし、ちょっとやりすぎだと気付いたよ(笑)。

リム:よくオンラインとオフラインのバランスは?と聞かれるけど、正直バランスなんて意識していない。オフラインのセレクトショップとしてスタートしたけど、今はオンラインもビジネスの大きな柱になっている。そして「そのうち全ての店がオンラインのみになるでしょう?」と聞かれたこともあるけれど、われわれはそうは思わない。やっぱり製品を実際に手にとってから購入したいと思う人も多いし、店頭で人と人とのつながりも求める消費者もまだまだたくさんいる。2つはそれぞれ異なる役割とポテンシャルを持つし、どちらもそれぞれなりに成長しているわ。

WWD:10年前、数多くある国の中から、日本に出店しようと思ったきっかけは?

リム:ちょうど当時日本を取り上げていた時で、リサーチのために何度も日本に足を運んだ。日本の店も数多く回ったけど、「OC」のようなコンセプトの店がなかったことと、アメリカーナへの憧れが洋服に反映されていたことも多かったことから、チャンスがあるのではと思ったのがきっかけかな。この10年で本当にたくさんのブランドとコラボし、今はみんな「OC」コミュニティーの一員として大切な友人。水原希子が初めて洋服のコラボレーションをしたのも「OC」だったしね。

WWD:今後はジャパン社を設立するというが、これから日本のビジネスはどう変化するか?

レオン:オンワードはこれまで素晴らしいパートナーとしてビジネスを支えてくれたけど、お互いの合意のもと、リレーションシップを解消することになった。今後はダイレクトにビジネスをコントロールできるから、ファッションを通じてのマイノリティーグループのサポートやカルチャーの紹介など、われわれが今までずっと掲げてきたメッセージを色濃く出せるようになる。そして市場の変化にもより俊敏に対応できるようになると思う。まだ具体的には話せないけれど、今までにない面白いプロジェクトをたくさん計画しているから楽しみにしていてほしい。

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