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「アパレルのオンデマンドを実現する」 英発有力ファッションテックCEOの野望

 タッチパネル上でユーザーが自由にカスタマイズしたデザインを、プリントや刺しゅうで即時的に製品化する「ユア ライブ(YR LIVE)」は、2013年にイギリス・ロンドンでスタートしたサービスだ。当初はユーザーによるカスタマイズができるブランドとして設立されたが、ファッションブランドやメーカー、化粧品などさまざまな企業との協業が殺到し、ビジネスモデルを転換。レセプションやポップアップストアなどのイベントでサービスを活用する“ライブ”と、常設店に導入する“ストア”、そしてEC上でサービスを展開する“オンライン”の3つを軸にサービスを提供しており、導入実績は4000件を超える。現在はサービス導入のエリアを拡大しており、アメリカ・ニューヨークやロサンゼルス、日本、香港に支社を構える。カスタマイズに着目した「ユア ライブ」はどのように成長を遂げ、何を目指すのか。来日したティム・ウィリアムズ(Tim Williams)CEOに創業の経緯から今後の構想までを聞いた。

 もともとはソフトウエア企業に勤務していたというティムCEOが手掛ける「ユア ライブ」は、専用のアプリケーションと最先端のプリント・刺しゅう技術を用いたストレスフリーなデザイン体験が特徴だ。「自分の強みであるソフトウエアを用いたデザインやパターンのカスタマイズで、ユーザーがファッションを楽しめる環境を整えられるのではないかと考えた」と創業当時の考えを説明する。そうして生まれた「ユア ライブ」は、カスタマイズ特化型のブランドとして13年にロンドンのカーナビ―ストアに期間限定店を出店した。「15年までは全ての商品がカスタマイズできるファッションブランドとして運営していた。こういった考えが当時は新しかったせいか、周囲の人々に理解してもらうのは大変だった」と当時を振り返る。

 そんな同社に転機が訪れたのは14年のこと。英高級百貨店の「セルフリッジ(SELFRIDGES)」が「ユア ジャパン」のシステムを導入した。「これをきっかけにメディアにも取り上げられ、われわれの注目度が一気に高まった。企業やブランドの方から協業のオファーが来るようになり、われわれはファッションテックカンパニーとしての立ち位置になった」とティムCEO。16~17年には2倍の成長を見せ、その後も毎年20~30%は成長できているという。「現在、世界の主要地点に支社を構えることができており、ベースはおさえたと考えている。各拠点をしっかりと伸ばしながら、ゆくゆくはイベント需要の高い中国などにも進出したい」。

 「ユア ライブ」の創業地であるイギリスは、ファッションテック企業が数多く生まれている地域でもある。中には同社と同じく13年創業の、カスタマイズ可能な服を作る技術を提供するプラットフォーム「アンメイド(UNMADE)」といった競合も存在する。そういった状況の中で「ユア ライブ」が持つ強みは「オフラインだ」とティムCEO。「“オンデマンド”でのモノづくりがトレンドとなってきているイギリスでは現在、さまざまなカスタマイズサービスが生まれている。しかし、彼らはほぼオンラインに特化しており、オフラインへの参入は簡単ではない。一方でわれわれは“オンデマンド”をベースに、リアル店舗からスタートした企業。店舗とEC、両方においてブランドと共にユーザーにデザイン体験を届けることができる」。

 オンラインとオフラインの双方でサービスを提供してきた「ユア ライブ」は、今後どのように拡大していくつもりなのか?「アメリカを筆頭に、イベント需要はまだ伸びると思っている。さらにオンラインでは、ブランドのモノづくりにおけるオンデマンド化が進んでおり、非常に大きなポテンシャルを感じている。世界のファッションにおける市場規模は約3兆ドル(300兆円)と言われているが、そのうちの10%ほどはカスタマイズが占めることができると考えている。決して簡単ではないが、カスタマイズの先行者としてファッション業界のオンデマンド化をサポートしていきたい」。