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見た目はギャル、中身は“優等生” 「ジェイダ」を支えるマジメなPDCAサイクル

 2011年にスタートしたマークスタイラーの「ジェイダ(GYDA)」は、全国13店舗と規模は小さいながらも10-20代前半の派手な服装を好む若い女性、いわゆる“ギャル”から厚い支持を得ている。ブランドの通信簿は同社の中でも超優等生。ブランド単体では15年2月期から4期連続の増収で、19年2月期の売上高は前期比40%増。月単位で見れば、41カ月連続で前年超えを達成した(19年5月末時点)。インスタグラムなどSNSからの流入による自社EC売上が15%~20%を占める一方、SHIBUYA109店の売り上げは館の中でも常に上位で、18年度下半期は館の優秀賞を受賞。心斎橋OPA店でも2年連続で館の最優秀店舗賞に選ばれるなど、リアル店舗も強さを見せる。

 ブランドとして打ち出しているコンセプトは、海外のセレブのファッションをイメージした“LAカジュアル”。だが肌見せの多い開放的なテイストがギャルの好みにマッチしているようで、弊紙「WWDジャパン」4月29日&5月6日合併号「令和へ持っていく平成ファッション」に登場した22歳の赤荻瞳「エッグ(egg)」編集長は、「『ジェイダ』は永遠に不滅」と崇拝する。

 継続的な好調のカギは、二人のキープレイヤーが握っている。生産・企画担当を経て12年から同ブランドを束ねる栗山慶太事業部長と、本部と店舗をつなぐ役割を担う井上瑞規エリアマネージャーだ。ギャルに人気を博している理由について尋ねると、「そもそも(ギャルは)ターゲットにしていたわけではないから、分からないというのが本音(笑)。アパレルブランドとして、当たり前のことをしっかりやっているだけ」と顔を見合わせる。

 カリスマ店員やプロデューサーがけん引した00年代のブームに比べれば、ギャル市場は活気を失っている。ギャル文化を象徴するSHIBUYA109の売り上げは08年度の280億円をピークに、15年度には161億円まで落ち込んだ。そのような逆風の中でも「ジェイダ」はPDCAを回し、コツコツと売り上げを積み重ねている。

企画・生産畑から異例の抜てき
 デニムの品質で勝負

 栗山事業部長は、「営業担当が事業部のトップを務めることが多い中、(自分の抜てきは)驚いた」と振り返る。当時は「事業をたたむかどうかという瀬戸際」に立たされていたが、そこから持ち直して成長軌道に乗せた。要因は「いたってシンプルで、モノ作りに立ち返ったこと」。不調の中でもファンから支持のあったデニムの強化に取り組んだ。

 また、栗山事業部長はかねてよりヤング向けブランドの、広告による販促に頼りがちな点に疑問をもっていたという。「目先の利益を求めた安易な手法に頼ってばかりでは、根強いファンは作れず、トレンドが去れば一緒にブランドが沈んでしまう。これは企画・生産出身者のプライドかもしれないが、自分たちもそうならないよう、デニムという“武器”を作っていこうと考えた」と語る。

 デニムは国内工場での製造により「百貨店で売っているブランドのデニムと比べても遜色ない品質」だといい、定番品とトレンド商材合わせて10-15型を平均1万円台で提供。ブランドにおけるデニムの売上構成比は30%近くを占める。「店にわざわざ来てくれたお客さまのワクワクを裏切らない」ためにも、デニムの在庫は常に切らさないよう「週末に入荷して、週明けには追加発注を決めている」というスピード感にこだわる。エッジィなデザインのものが特に売れ行きが良く、ヒップ、腿に大きなダメージが入ったデニムはそれぞれ累計3万本以上を販売している。「若いお客さまにとってうちの商品は決して安くない。だが丁寧なモノ作りは確実に響いていて、『高見えするよね』『カッコいいよね』と直感的に買っていただけている。こういうリアルなお客さまの反応は、現場の声を聞くことでしか分からない」。

 売れ筋のダメージデニムについては販売員の意見をもとに、ダメージ部分を破れにくい形に変えたり、位置を変えたりといった試行錯誤を重ねた末に今の形がある。現場から上がってきた意見は迅速に取り入れ、フィードバックも行うことを心掛けている。「彼女たちの意見にも当たり外れはある。でもそれを恐れていたら前に進まない。自分の意見で『ジェイダ』が良くなってお客さまからほめられたりしたら、ますます売ってやろうというモチベーションになる。すると、また意見が上がってくる。そういうポジティブな循環を作っていきたい」。

熱い販売員たちを束ね、
自分らしさを引き出す

 本部と現場のコミュニケーションを円滑に進めるために、重要な役割を果たしているのが井上瑞規エリアマネージャー。現在は関西エリア(大阪、京都、名古屋、福岡、広島、金沢)の計8店舗を管轄し、週の半分はホテル泊というスケジュールで各店舗を飛び回り、店長指導を行っている。「そう言うと店長を裏手に呼び出して叱りつけているみたいですけど、ちゃいます(笑)。私な仕事は、栗山さんが分析した店舗の課題を、現場の販売員がやるべき具体的なアクションに翻訳して伝えること」。

 事前に店員1人1人の売上金額や商材別の売れ行きといった数字をインプットして店舗に出向き、「新人の販売員をもっと売れるようする」「デニムをもっと打ち出す」といった大まかなテーマを決める。だが、具体的な改善方法は店長に考えさせ、自身は現場を観察した上でヒントを与える役に徹する。「うちのブランドが大事にしているのは自分らしさ。接客にマニュアルもなくて、お客さまも販売員のスタイルにあこがれてファンになってくれている。だから、どうやったら自分らしいやり方で売り上げを伸ばせるか考えさせることが大事」だという。

 売り上げ目標の80%程度しか届かなかった販売員に対し、試着室での接客方法を改善して120%にまで伸ばしたという好例もある。「14~17年に店長をしていた頃は、販売員一人ひとりにくっついて、やいやいとやかましく言っていました。でも月の売り上げが前年を割ったことはなかった。私のやり方が正しかったかは置いておいて(笑)、1人1人に向き合うことが大事なのだと信じています」。だが、店長も販売員も「皆『ジェイダ』が好きだから、頑固で熱くなってしまう」がゆえ苦労することもある。「結果が出ていなくても、改善策はなかなか聞いてもらえません。数字みたいなファクトベースで説明するだけではだめで、時には一緒に食事をして、わいわいやって心の距離を縮めることも必要。でも、納得してもらえたら、最後までとことんやってくれる子たちです」。

デニムをフックに大人の女性へ訴求

 「ジェイダ」はこの間、強みの商材であるデニムの打ち出しをさらに強化するため、はき込んだデニムをアート作品のように壁に掛けたり、照明を当てたりという「デニムバー」の導入を各店舗で始めている。今後はデニムをフックに、大人の女性にも裾野を広げていく。いままでにない客との接点を増やすため、今年は横浜・赤レンガの「グリーンルームフェスティバル」(5月25~26日)にも出店した。「店舗には親子で来られる10代のお客さまも多く、お母さまには素材やシルエットをほめてもらえることが多い」と井上エリアマネージャー。「デニムを入り口に、大人の女性にもさまざまなアイテムに興味をもってもらいたい」。

 ブランドのビジョンとしては、国内店舗は今後増やしても2~3店で、ゆくゆくは海外出店も視野に入れる。「よくばって広げ過ぎてブランドがブレたら本末転倒だ。あくまで今のお客さまにしっかり軸足を置きながら、じっくりとファンを広げていく」(栗山事業部長)。