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三越伊勢丹がデジタルで描く未来図は? 「シェアリング事業は絶対外せない」

 三越伊勢丹ホールディングス(HD)は2019年3月期中期決算発表に合わせて、事業戦略を発表した。グループとして今後目指す姿を、“IT・店舗・人の力を活用した新時代のプラットフォーマーとしての百貨店”と定義し、引き続きデジタル分野を強化。ポイントは、社内に大規模な撮影スタジオを設けてのEC拡大、アプリを活用したオンラインとオフラインでの境のない接客の実施、収集した顧客のデジタルデータを基盤にした7つの新事業という3点だ。

 まず手を付けるのはECの強化。消化仕入れのため、基本的に百貨店は自社で商品在庫を持っておらず、それゆえEC化が遅れているといわれてきた。しかし、「店頭にある商品は全てECサイトに載せる。相当な手間はかかるが、やり切らないといけない」と杉江俊彦・社長は語気を強める。伊勢丹新宿本店を皮切りに全商品のEC化をすすめ、ゆくゆくは全店に広げる。「既に取引先とは商品情報や在庫情報の共有を始めており、自社でECサイトを持っている取引先についてはほぼ共有ができている」という。

 自社ECサイトがなく、商品画像などがない取引先もあるため、19年4月に新宿のパークシティ伊勢丹1、2階を撮影スタジオに改装する。「ECのささげ業務(撮影、採寸、原稿作成)のために、ピーク時は同部門に200~300人を配属する」計画だ。3月に閉鎖した伊勢丹松戸店や、19年秋以降に閉鎖する伊勢丹相模原店、伊勢丹府中店などから出る余剰人員を充てる考えで、「19~20年度中に集中的にECサイトを強化する」。

 2点目のアプリを活用した接客については、10月24日に第1期リニューアルオープンした三越日本橋本店で既にスタートしている。コンシェルジュを大幅増員してパーソナル接客を強化しており、そのためにCRM(顧客情報管理)コンサルティングのセールスフォース・ドットコムと組んで専用の接客アプリを開発した。アプリを使い、他フロアも含めた販売員同士で顧客情報を共有し、売り上げ増につなげる。顧客向けのウェブサイトもリニューアルのタイミングで公開しており、顧客はサイトを通して接客予約や販売員とのチャットなどができる。19年2月に同サービスのアプリもリリースする予定。

 3点目の顧客データを基盤にした新事業は、パーソナルスタイリング、統合コスメ、定期宅配、カスタムオーダー、eギフト、オンラインSPA、シェアリングの7つを計画している。パーソナルスタイリングでは、購買力はあるが多忙で時間がない管理職女性など、これまで百貨店に来ていなかった客をいかに取り込むかを意識。チャットで聞き出した悩みやニーズをもとに商品を自宅に発送、気に入ったものだけを手元に留めてもらうといったサービスのテストを、既に婦人服分野で約100人の消費者に対して実施した。手応えを得たことで、19年春をめどに同サービスを開始する予定だ。

 統合コスメ事業では、国内外180ブランドを集めた化粧品のECサイトを立ち上げる。既存の百貨店化粧品ブランドに加えてバラエティコスメも扱い、「日本最大級の品ぞろえ」を目指す。メイクシュミレーションや新商品発売情報などもサイト内に盛り込む考えだ。これまで、百貨店コスメに興味はありつつも敷居が高いと感じていた若年層などにニーズがあると見込み、スムーズな発送作業のために「物流倉庫には最新のピッキング機能を装備する」考えを明かした。

 新事業のうち、「まだ研究中」とはしつつも「絶対に外せない」と強調するのがシェアリングだ。レンタルと2次流通の二軸で、特に2次流通にビジネスの芽があると期待する。「2次流通では、仕入れ先の確保と本物かどうかの証明が難しいといわれるが、われわれは既存顧客から商品を買い取ることで、その課題がクリアできるのではないか」と見る。

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