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サッカーという言葉の入口を広げた「シュウキュウ マガジン」

 雑誌の“面白さのベクトル”が少し変わったように思う昨今、新たに読者を惹きつけているのは一貫したコンセプトがあるものなのかもしれない。特にインディペンデントシーンにおいてその傾向は顕著であり、ここ数年で加速化している。近年創刊したもので例を挙げると、川島拓人さんが手掛けた「パートナーズマガジン(PARTNERS magazine)」、元「アイスクリーム(EYESCREAM)」編集長の稲田浩さんが発行している「ライス(RiCE)」や猫に特化したロンドン発の「プスプス(PUSS PUSS)」などだ。1つのテーマを深掘りし、あらゆる角度から捉える雑誌が目立つ。今回紹介する「シュウキュウ マガジン(SHUKYU Magazine以下、シュウキュウ)」(SHUKYU、2〜5号は1500円、1号のみ1300円)もその1つだ。

 編集長は原宿のカルチャースペース、VACANTの創設メンバーの1人としてさまざまなイベントや企画を形にしてきた大神崇さん。小学生の頃からサッカーに親しんでいた、元プレーヤーでもある。サッカーは国内外のあらゆる地域で盛んで、老若男女誰もが知っているスポーツだ。そんな背景を生かし、サッカーを入口と考えたことがはじまりだったと大神さんは明かす。今までのスポーツ誌はプレーヤーや観戦者のためのものだったが、「シュウキュウ」は違う。サッカーを観戦しない私のような人間にも興味を持たせてくれる。

 具体例を挙げよう。まずは創刊号、“ルーツ”特集内の機関誌「蹴球」についての記事。サッカー専門誌が日本で創刊されるはるか前の1931年に機関誌として大日本蹴球協會(現・日本サッカー協会)が創刊した「蹴球」が、情報の少なかった当時の日本でいかに大きな役割を果たしていたのかがわかる。黎明期の先人たちの苦労は計り知れない。「蹴球」創刊当初の時代背景から現代を取り巻くメディア環境に目を向け、検索に引っかからない多様なものにどう出合い伝えていくのかの疑問提起をしている冒頭のエディターズノートにも激しく同意した。3号目の“アイデンティティ”特集のはじまりには、揺れ動く世界情勢の中で自分たちのアイデンティティーがどう変わっていくのかを問い、「これからの未来について一緒に考えていきましょう」とある。壮大なテーマのように感じるが、これをサッカーを切り口としてまとめるのだから恐れ入る。何がどう取り上げられているかは、ぜひ実際の誌面を手にとって確かめてほしい。

 最新号の5号目では、テクノロジーをテーマにレフェリーとの関係性や選手とSNSについてや、フットボールリークスという内部告発サイトなども取り上げられている。そして、面白いのは雑誌だけではない。「エンダースキーマ(HENDER SCHEME)」とのコラボレーショングッズでレッドカードとイエローカードまで製作したのだから、この究極な遊びに脱帽だ。サッカーという言葉に対するこれでもかという切り口の広さが、この雑誌の一番評価したい部分である。

 表紙と裏表紙に毎号配置されるキービジュアルは、各企画を象徴する1枚が選ばれている。ビジュアルから想像力を膨らませ、ページをめくる。雑誌が“紙”であることの醍醐味だ。この感覚をうまく落とし込んだデザインにも拍手を送りたい。

 どんなところを切り取っても、好きなことを届けたいという大神さんの思いが伝わってくる「シュウキュウ」。それはサッカーを心底愛しているからこその編集だと思うし、その愛の形が「シュウキュウマガジン」なのではないだろうか。

高山かおり:北海道生まれ。北海道ドレスメーカー学院卒業後、セレクトショップのアクアガールで販売員として勤務。在職中にルミネストシルバー賞を受賞。その後、4歳からの雑誌好きが高じて転職、2012年から代官山 蔦屋書店にて雑誌担当を務める。主に国内のリトルプレスやZINEの仕入れを担当し、イベントやフェアの企画、新規店舗のアドバイザー業務(雑誌のみ)、企業・店舗などのライブラリー選書、連載執筆など幅広く活動。18年3月退社。現在は編集アシスタントとして活動しながら本と人をつなげる機会を増やすべく奔走中。