ファッション

バイオアーティスト、エイミー・カールはなぜファッションで人間の内側を表現するのか

 エイミー・カール(Amy Karle)は、人間の身体や身体機能の拡張をテクノロジーを通じて表現するバイオアーティストだ。これまで、3Dプリンターと幹細胞を使用して人間の手の骨を再現した作品の他、人体の内側を表現したドレスや本物の肉を使用したドレスなどの作品を発表している。アパレル企業でデザイナーとして働いた経験もある彼女は、バイオアーティストとして今とこれからのファッションをどう見るのか。「YouFab Global Creative Awards 2017」でグランプリを受賞し、受賞作品の発表のために来日したカールに自身の作品について聞いた。

WWD:このキャリアをスタートしたきっかけは?

エイミー・カール(以下、カール):私の作品は全て人の身体からインスピレーションを得ています。私は生まれつき皮膚形成不全という病気を抱えていました。だから他の子どもたちと同じように遊んだり泳いだりするためには、どうしたら体がよくなるのかを常に考えながら成長してきました。そこから身体の仕組みや、どうやって身体の制限がありながらも生き抜くかなど、身体のアイデンティティーについて疑問を持つようになり、こうした疑問から心と身体の関係を探求する私の作品が生まれています。また、ファッションは服を通して自身を表現することができるので、どうしたら身体の内側の状態を外側に表現することができるのかということも私が課題としているところです。

WWD:大学ではファッションを専攻していた?

カール:私の学位はアートデザインと哲学です。人間やアイデンティティーとは何なのか、アイデンティティーをどうやって目に見え、手で触れることができる形で表現するかをずっと考えてきました。だから私の作るアートは自分の内側を他の人に対してさらけ出す、とてもパーソナルなもの。アート作品は見た人の感情に訴えかけることができるものです。一方、デザインは私にとってより普遍的なもので、人が自分自身の世界を理解することを手助けするもの。そのため、より大きな力を発揮し、さまざまな方法で世界を変えることができると考えています。

WWD:ファッションから人間工学や遺伝子工学に興味が広がった理由は?

カール:私の一番の課題は身体の意味を追究し、身体の内面を感じ、身体を表現すること。だから私にとってファッションとバイオアートは、テクノロジーが人間とその生活をサポートできるように活用し、自分たちを世界に向けて表現するためのビジョンです。現に、美容整形の広まりなど、身体の能力を高めることができる時代になってきています。ヘアスタイルやメイク、服を変えることで、本当になりたい自分に近づくことができる。でも、マインドコントロールや哲学、それに生物学やテクノロジーを今までと違う方法で活用してもっと根幹から自分を変える方法もある。つまりこれは表面的なドレスアップではなく、根幹から本当になりたい自分になる新たなファッションの可能性だと思っています。

WWD:「ケネス コール(KENNETH COLE)」でアシスタント・デザイナーをしていたこともあるそうですが、その経験はアート作品にどう活きている?

カール:アシスタント・デザイナーをしていた経験から、ブランド戦略や、どうしたら顧客の心をつかむデザインを作れるかを学びました。でもその後、ファッション業界よりもアートの道を極めたくなり、今に至っています。

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