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進む雑誌とECの融合、“物売る編集者”時代の到来か?

 出版業界と小売業界の融合が加速している。幻冬舎は3月、ファッションEC「ショップリスト(SHOPLIST)」を運営するクルーズと組んで通販直結型の無料ファッションマガジン「リスタ(LiSTA)」を創刊した。20〜30代の女性をターゲットに、「ショップリスト」で扱う商品だけを使い、幻冬舎がコンテンツを制作する。出版社とECサイトの蜜月は今に始まったことではなく、幻冬舎は2015年にも楽天と組んだEC直結型のウェブメディア「ジンジャーミラー(GINGER mirror)」を立ち上げた経験がある。雑誌「ビス(bis)」も今週、「キャンディ(Candee)」と組んだライブコマースを発表した他、17年には講談社が楽天と組んだEC連動型のウェブマガジン「BeViVi」を創刊したり、16年に提携した講談社のウェブマガジン「ミモレ(mi-mollet)」とハースト婦人画報社が運営するECサイト「エル・ショップ(ELLE SHOP)」などはその先進事例といえる。

 ウェブ専門のメディアでも同じような動きはあり、早くから通販に注力してきたメディアといえば、カルチャーメディア「CINRA.NET」を運営するCINRAが挙げられる。同媒体の通販サイト「CINRA.STORE」は今年7年目を迎えたが、大きな特徴はセレクトよりもここでしか買えないオリジナル商品に注力していることだ。「取引先は380アカウントほどあるが、そのうち個人のアーティストが250くらい」と同社が言うように、個人アーティストとコラボした限定アイテムが一番人気なのだという。「CINRA.NET」のコンテンツと提携することはもちろんのこと、一部商品をパルコに卸すなど、単なる通販サイトを超えたメディアならではの企画力が同社の魅力となっている。5月にはLINEと共同でアート展「SNS展 #もしもSNSがなかったら」を実施するなど、リアルへの進出も計画する。

 反対に、ECを運営するブランドが自社でコンテンツを制作するというのはよくあることだ。ただ、EC化率の上昇やデジタルコンテンツの進化がそれに拍車を掛けていることは間違いない。実店舗よりもEC販売がメーンの韓国市場では、まるで雑誌のような作り込みをしたECサイトがたくさんある。これは、試着できないというデメリットをたくさんの写真や文章で説明しようとした結果なのだが、最近ではECとウェブメディアの融合を目指した「29CM」が韓国の大手企業に買収されるなど、コンテンツとECの融合がビジネスとして確立されつつある。海外では、ラグジュアリーEC「ファーフェッチ(FARFETCH)」が「スタイルドットコム(STYLE.COM)」を買収してコンテンツ力を獲得したという大規模な融合の事例もある。

 こうした背景には、広告収益を柱にしてきた出版業界が販売収益という新たなビジネスモデルを獲得したということもあるだろうが、どちらかといえば、SNSやインフルエンサー市場の発達によって“紙媒体”の役割が減ってきたという危機感が強いように感じる。日本国内ではインフルエンサーがSNSで紹介したアイテムをファンがネットで購入するという構図が出来上がってきており、個人が簡単にネット通販を行えるBASEなんかは45万ショップを抱えるまでに成長した。

 個人がメディアとなって、販売するという時代の流れにおいて、紙媒体、ひいては出版社が置き去りにされているようにさえ見える。ライブコマースアプリ「ピンクル(PinQul)」を立ち上げた井手康貴Flatt社長も、「今後はフォロワーではなく、“販売力”のようなものを可視化して基準値にしていきたい。ものを売れないインフルエンサーは淘汰される時代が来るのではないか」と予測する。今後雑誌とECの融合がさらに進む中で、こうした個人=メディアの時代に出版社が生き残るためには、編集者にも“売る力”が求められるようになるのかもしれない。

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