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ファッション写真界の巨匠、89歳のフランク・ホーヴァットが来日 ファッション写真の真実を語る

 写真家フランク・ホーヴァット(Frank Horvat)がシャネル・ネクサス・ホール(CHANEL NEXUS HALL)で開催中の大型写真展「Un moment d’une femme」のために来日した。同展のテーマはホーヴァットの長い写真家人生における重要なテーマでもある“女性”。 “女性”を切り口にしたホーヴァットのジャーナリスティックな初期作品の他、私的なプロジェクトなどを展示し、4月にはKYOTOGRAPHIE京都国際写真祭のプログラムとして京都にも巡回する。

 ホーヴァットは1940年代初頭、報道写真家としてキャリアをスタートし、世界中を旅しながら、フランスの週刊誌「パリ・マッチ(Paris Match )」などに寄稿を続け、55年にニューヨーク近代美術館(MoMA)で開催された展覧会「ザ・ファミリー・オブ・マン(人間家族)」に選出される。54年、パリに拠点を置いてからファッション写真に傾倒したホーヴァットは、モデルたちの偶然の表情や一風変わった構図など、報道写真家としての経験を活かしたルポルタージュ的な感覚を取り入れた表現を行う。60年代以降はファッションそのものよりも、無防備な色気の女性像を撮影し続けた。90年代にはいち早くデジタルカメラを採用し、フォトショップを用いた作品も発表。11年にはiPad用のアプリ「ホーヴァットランド(Horvatland)」を公開するなど、人並み外れた好奇心で時代の潮流を感じ取りながら写真の新たな可能性を見出してきた。現在89歳にして意欲的に活動を続けるファッション写真の巨匠が考える写真の定義とは?同展を開催するにあたり何に思いを馳せたのか。

WWD:日本で大型の回顧展を開催しようと思ったのはなぜですか?

フランク・ホーヴァット(以下、ホーヴァット):実は30年以上前に一度だけ日本で回顧展を開催したことがあるんだ。今回はキュレーターであるインディア・ダルガルカー(India Dhargalkar)が話を進めてくれた。私は今年で90歳になるんだけれど、世界各国で巡回展を開催するにあたって日本は序章という位置づけだよ。

WWD:“女性”をテーマにした理由は何ですか?

ホーヴァット:70年以上もさまざまな被写体を撮影し続けてきて、そのうちの半分くらいは女性だった。自然の流れでこのテーマにたどり着いたんだ。

WWD:非常に長いキャリアの大回顧展ですが、これまでの写真家としての生涯を振り返って今、何を思いますか?

ホーヴァット:少しだけ複雑な話しになってしまうのだけれど、私にとって写真はありのまま、演出しないことがベストなんだ。例えば、私が君を撮影するとして、今、たまたま手が口元にあるだろう。それをずらしたり、椅子から立ち上がらせるような演出はしない。あるがままの自然な姿こそ価値のあるもの。この考え方のために難しい問題に直面してきたことも事実だ。ファッション写真は洋服をいかに美しく見せるかが問われるため、モデルの視線や体の動きの変化を要求することになる。一方、私の考え方はその対極で、互いの相反する状態を求めている。私のファッション写真では、その葛藤の中でベストなバランスを模索し試みてきた。ディテールにフォーカスするための演出を指示した場合は、被写体を必ず私のコントロールできない環境に置く。モデルの横で犬を歩かせてみたり、群衆の中に立たせたり。予期せぬ何かが起こるシチュエーションを意識的に作った。おそらく、このような撮影をしたのは私くらいだろう。だからこそ、今があるとも思うよ。

WWD:報道写真家としてのキャリアはファッション写真にどんな影響を与えましたか?

ホーヴァット:演出で作られた状況ではないからこそ、写真の中で何が起こっているかを人は信じられるんだ。要するに写真家が作り上げた世界だけでは人の興味はわかない。今回の個展もそうだけれど、写真を見れば演出されたものなのか自然に起きた事象を捉えたものなのかが分かる。ある種の不思議な感覚や興味を持ってもらえるはずだよ。