(右)益成恭子/記者:暗いニュースが多い地方百貨店だが、工夫次第ではデスティネーションになる可能性を十分に持っている。1つのモデルケースが各地で広がると地方がもっと面白くなると思う ILLUSTRATION : UCA
毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2026年7月20日号からの抜粋です)
林:百貨店は名前の通り「百貨」をそろえる業態でした。衣食住にわたるあらゆるものをそろえて、お客さまに買っていただく。しかし、ECモールや各種専門店が台頭した現在、品ぞろえだけで優位性を保つのは難しい。誰でも海外の情報にアクセスできる時代です。元来の競争優位性が低くなった今、百貨店のアドバンテージとは何なのか。これが特集の出発点でした。答えは「売る力」。百貨店は、顧客1人1人のインサイトに踏み込んで、本人の想像を超える提案をする力に長けています。商品を感動とともに買っていただく、その「売る力」こそが強みです。
益成:象徴的なのが外商ですね。
のれんの
力は大きい
林:はい。外商のルーツは、江戸時代の呉服商が大名や裕福な武家などを訪ね、商売していたことにあります。強みは原点に戻ってきているなと強く感じます。そごう・西武は、銀座と表参道に外商サロンを設け、担当者が周辺のラグジュアリーブランドと提携しながら買い回りを世話するサービスを始めました。西武池袋本店は大規模改装で売り場が従来の約半分になり、9月には西武渋谷店が閉店します。店舗の規模は縮小する一方で、百貨店と顧客の信頼関係は究極的には売り場がなくても成り立つんだなと思いました。そういうことはおそらく他のプレーヤーが容易にまねできない、唯一無二ののれんの力でしょう。
地域と結びつく
売り場に可能性
益成:かつては家族みんなで週末に百貨店に行き、食事と買い物を楽しむのが一般的でしたが、今はそういう時代ではなくなりました。これからは、百貨店各社がそれぞれの顧客とのつながりをいかに強固にしていくかが鍵になると思います。私がすばらしいなと思ったのは、群馬県の高崎高島屋にある国内ファクトリーブランドを集めた売り場「メゾンドエフ」です。1人のバイヤーの発案でスタートした施策ですが、既存の品ぞろえではカバーできていなかった部分に光を当て、顧客だけでなく、日本各地の産地と結びつきながら新しい価値を作っています。地方百貨店の「売る力」を磨くモデルケースだと思いました。
林:やっぱり300年、400年と続く老舗企業の生存本能は強い。この先も「売る力」を武器に形態はさまざまに変わっていくでしょう。それを追いかけるのが楽しみです。