
情報やものにあふれる現代社会の中、ブランドらしさを見つめ直したり、引き算の美学を探求したりするデザイナーが、今季は目立った。過剰な装飾や複雑な構造をそぎ落とし、研ぎ澄ますことで美しさや衣服の本質に迫ったクリエイションの背景にあるメッセージは、本当に大切なものとは何かを問いかけるようだ。(この記事は「WWDJAPAN」2026年7月6日号からの抜粋です)
「サンローラン(SAINT LAURENT)」
霧に包まれた空間で見せる
「抑制」という名の魅惑
ショーの舞台は、現代美術館のブルス・ドゥ・コメルス(Bourse de Commerce)。アーティストの中谷芙二子が手掛けた霧のインスタレーションを演出に取り入れ、「抑制」の美学を示した。「誰もあなたを魅惑しようとしていない。そうする必要がないことこそ、魅惑的だからだ」という考えのもと、そぎ落とすことで生まれる豊かさを追求。力強いショルダーとジュエルボタンが特徴のテーラードジャケットとタック入りの柔らかなパンツや細身のパンツを中心に、カラフルなテクニカルタフタのブルゾンやタイトなリブセーター、透明なPVCのシューズなどを合わせた。霧の中から現れては消えるモデルたちは、「見えないもの」や「語られないもの」から得られる喜びを呼び起こす。
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