ファッション

軽量化の時代に重さを貫いてきた老舗ラギッドブランド「フィルソン」とは 知る人ぞ知る「100年目のスタートアップ」

PROFILE: ティム・バントル/フィルソン社長

ティム・バントル/フィルソン社長
PROFILE: 米セントルイス大学卒業後、アウトドアおよびライフスタイル分野でキャリアをスタート。パタゴニアやブラックダイヤモンド・イクイップメントを経て、その後「ザ・ノース・フェイス」のグローバル・ゼネラルマネジャーとして、ブランドの成長を主導。2016年から19年まではVFコーポレーションのゼネラルマネジャーとして、「ザ・ノース・フェイス」「ヴァンズ」「ティンバーランド」など複数の主要ブランドの事業を統括した。直近では米アウトドアブランド、エディー・バウアーのCEOを務め、25年1月から現職 PHOTO:SHUHEI SHINE

1897年の創業の米アウトドアブランド「フィルソン(FILSON)」はゴールドラッシュ期、アラスカへ向かうパイオニアたちのために誕生した。代表商品である、高密度に織り上げた厚手のウール素材“マッキノーウール”や、防水・防風・耐摩耗に優れたオイルドコットン“ティンクロス”を使ったジャケットは、命を預ける道具としての信頼性を最優先して設計され、軽量化の時代においても、その重さをレガシーとして貫いてきた。アラスカの過酷な環境に耐える実用的な装備を供給するという、極めてニッチなローカルニーズから生まれた同ブランドは、多くのコレクターが存在し、いま若者たちの間でも支持を集める。

日本では伊藤忠商事がマスターライセンスを保有。アウターリミッツが日本国内における独占販売代理店契約を結び、国内展開を進めてきたが2025年12月末をもって終了。26年1月1日からはセレクトショップ「フリークス ストア(FREAK’S STORE)」を運営するデイトナ・インターナショナルがサブライセンシーとして、自社ECストア「デイトナパーク」や全国の「フリークス ストア」店舗で順次取り扱う。

インラインに加えて、ファッションディレクターの金子恵治がディレクションする日本限定商品のアパレルおよび雑貨も企画・販売。卸販売も計画している。価格帯はインライン商品のジャケット9万6800円、シャツ2万9150円〜4万4000円など。日本企画は、ジャケット5万9950円~6万4900円、シャツ2万9920円、パンツ3万9930円。(日本企画は2月下旬発売予定)

来日したティム・バントル(Tim Bantle)フィルソン社長に、老舗ラギッドブランドの現代における強みを聞いた。

「重さ」を捨てなかったブランドの進化

WWD:「フィルソン」の強みは?

ティム・バントル=フィルソン社長(以下、バントル):「フィルソン」はアメリカで最もオーセンティックなブランドだ。創業当初の開拓者精神はいまもブランドの核にある。「フィルソン」が1914年に特許を取得した“マッキノーウール”をはじめ、100年の歴史を経てもなお同じ調達先から同じ素材を使い続けるなど、創業当初の商品になるべく忠実でいるよう努めてきた。だからこそ素材そのものが非常に独自性を持っている。例えば、代表商品の“ティンクロス・ショート・クルーザー”は、「バブアー(BARBOUR)」のジャケットと比較しても約2.5倍重い。でも私たちはその重さこそをブランドらしさとして誇りに思っている。

WWD:ヘリテージを保ちながら、現代のライフスタイルにどう適応するのか?

バントル:今後より多くの人に届けるのに重要なのは、品質を保ったまま、軽量な素材を取り入れることだ。最近では従来14オンス(約397g)だったワックスドコットンを、6オンス(約170g)のドライワックス素材に置き換えたジャケットを開発した。着用シーンも広がり、実際に売り上げも好調だ。正直に言えば、軽量化というトレンドは、これまで私たちが積極的に参加してこなかった分野でもある。ほかのアウトドアブランドがこの30年、より軽く、より軽くと商品開発を進めている一方で、「フィルソン」は重くあることを貫いてきた。こうしたプロダクトを通じて、私たちはいま、ようやくその流れに加わり始めた段階だ。

同時にラギッド(無骨)で重厚なアイコンモデルたちは今後も残していく。“マッキノーウール・クルーザー”の新しいチェック柄が出るたびに購入し、コレクションとして自宅に保管しているコレクターたちがいるからだ。シグネチャーである定番商品を目当てに、何度もブランドに戻ってきてくれるファンがいることは私たちにとってとても重要だ。

WWD:テックを強みにしたブランドが台頭しスポーツ・アウトドアブランド市場はレッドオーシャンなのでは?

バントル:テック系ブランドを競合とは考えていない。大きな違いは、「フィルソン」が基本的に天然素材のブランドである点。天然素材は、その性質上どうしても合成繊維より重くなる。そのため当社の製品を手に取るとよりしっかりとした厚みや重みを感じるはず。私はよく「フィルソン」の商品には“ガッツがある”と表現するが、合成素材の製品よりもずっと存在感がある。人々はそれを求めて「フィルソン」を選んでいるはずだ。

「知る人ぞ知る存在」から、世界へ

WWD:現在の顧客層は?

バントル:

これまで私はさまざまなグローバルアウトドアブランドで働いてきたが、そのなかでも一番多様だ。唯一共通しているのは、みんな高い品質を求めていること。シアトルの旗艦店では、学生時代から50年以上「フィルソン」を着続けている70代の顧客もいれば、ビンテージを通じてブランドを知った若いコレクターもいて、コレクターコミュニティーの規模も大きい。世界的にも特に若い世代の間で、ヘリテージやビンテージへの評価が高まっているのは大きな流れだ。米国では、少量生産の特別なプロダクトが15分で完売することもある。24年秋からはウィメンズカテゴリーも始動した。ここも期待以上に手応えを得ている。

WWD:コロナ禍以降の消費者のマインドセットの変化はビジネスにどんな影響が?

バントル:現在、米国において「フィルソン」は“アメリカ西部の価値観”を体現するブランドとして受け止められている。ここで言う西部的な価値観とは、自らの力で生き抜こうとするラギッドな姿勢や、自然と向き合いながら道を切り開いていく精神、そうした生き方への憧れのこと。そうした価値観の高まりと世界的に広がるビンテージやヘリテージ志向は、現在のブランドにとって強い追い風となっている。米国全体では、コロナ禍の期間中にアウトドア市場が大きく拡大したが、「フィルソン」はアウトドアへの参加人口の増減とは別に、アメリカンヘリテージやビンテージ文化への変わらないニーズがあり、機能性やパフォーマンスを軸にした従来型のアウトドアブランドとは異なる部分でもあると思う。

WWD:日本市場ではこのほどデイトナ・インターナショナルがサブライセンシーになった。

バントル:日本は、アメリカンヘリテージに対する理解と評価が非常に高い。しかし、日本市場には本物のヘリテージブランドが十分に届いておらず、「フィルソン」にとっての潜在顧客が多くいるとみている。ここにリーチするためには、強固なパートナーが不可欠だ。デイトナ・インターナショナルとの協業は、まさに始まったばかり。シアトルには、優秀なデザインディレクターが在籍しており、今後はそのチームが日本のチームと連携しながら、ブランドのヘリテージに忠実であることを前提に、ローカル市場にふさわしい形でプロダクトを設計していく計画で、とても楽しみだ。

「フィルソン」は1897年以降、一度も生産を止めることなく、自らの手で製品を作り続けてきた。それにもかかわらず、世界的にはまだ知名度が高いとは言えない。だからこそ、いま私たちは、このブランドをより多くの人々に紹介できる段階にあると考えている。日本で強力なパートナーとともにこのミッションを遂行できることを非常に心強く感じている。一度このブランドを知れば、多くの人がその魅力に引き込まれるはずであり、同じ存在は他にないと確信している。100年以上の歴史を持ちながら、いまだ知る人ぞ知るコレクターズブランドである点も、「フィルソン」の特異性。その意味で、私たちは自らを「100年目のスタートアップ」と呼んでいる。

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