ファッション

コピーライターが手掛けるジュエリー「アンナ ダイヤモンド」 パリへ拠点を移し欧米市場で拡大を目指す

ジュエリーブランド「アンナ ダイヤモンド(ANNA DIAMOND)」は、コピーライターの森春菜が2021年に夫である土谷健斗と立ち上げたブランドだ。ブランド名は、森の10歳下の妹の名前アンナから。妹が成長した時には前向きな社会になってほしいという思いが込められている。森は、大学卒業後、シューズブランド「オールバーズ(ALL BIRDS)」や佃煮「フジッコ」などのコピーライターとして活躍。言葉ではなく手に触れられるモノ作りをしたいと同ブランドを創業した。ジュエリーを選んだ理由は、「寿命を超えて残るものを生み出したい」という思いから。また、少しでも社会にいい影響を与えたいと素材選びや生産などにもこだわっている。今秋からは、パリに拠点を移して活動を始めた。コピーライターとジュエリーデザイナー二足のわらじを履く森に話を聞いた。

コピーライターとしてのフィルターを生かしたクリエイション

PROFILE: 森春菜(もり・はるな) /「 アンナ ダイヤモンド」代表兼デザイナー

森春菜(もり・はるな) /「 アンナ ダイヤモンド」代表兼デザイナー
PROFILE: 1997年神奈川県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業後、コピーライターとしてキャリアをスタート。「オールバーズ」をはじめ国内以外のブランドのコピーライティングを手掛ける。2021年12月ジュエリーブランド「アンナ ダイヤモンド」を設立。25年秋にフランスへ拠点を移す

ブランドのコンセプトは、"言葉や詩を、ジュエリーという永続的なかたちに昇華する”。森のクリエイションプロセスは、自身の考えや感じていることの言語化から始まる。「心地良い生き方や社会的なルールに思いを巡らすこともあれば、美しい景色からインスパイアされることもある。それを言葉や詩として”宝箱”と呼ぶメモに書き留める」。彼女が日常で感じたことを、自身のフィルターを通してデザインに落とし込む。「反骨心や多様性への賛美をテーマにすることが多い」と森。彼女にとって反骨心は、“常識をほぐす”こと。それをデザインで表現する際は、トゲのような攻撃的なモチーフではなく曲線を使ったデザインになるという。ジュエリーを通して物語を届けるというテーマ性に基づき、ボックスも本型にした。使用する素材は、天然ダイヤモンドよりは環境負荷の少ないラボグロウン・ダイヤモンドや自ら産地に訪れ買い付けるアコヤ真珠、そして、 “都市鉱山”と呼ばれる家電や携帯電話の廃棄物から採れる再生金属、リファインメタルだ。ジュエリーの製造は、山梨・甲府の工房で行う。 自社ECをはじめ、今年オープンした代官山店で販売している。

画一的ではなく、共感を持てるブランドに

リングやブレスレット、ピアスなど、ジュエリーの価格帯は5万〜85万円。売れ筋の平均価格は15万円程度だ。ブランドのアイコン商品は、ラボグロウンダイヤモンドを使用した“リシャイン スクラッチ リング 30”。シルバーを使用しているため、16万5000円と手に取りやすい価格帯だ。「指の上に星を生み出したいという思いで作った。シルバーを採用した理由は、時間経過に伴い変化するその特性に魅力を感じたから」と森。彫り留めという高度な職人技により繊細な輝きを実現した。ベストセラーは、“アコヤパール リング”だ。「人間も真珠も“みんな違って、みんな良い”。それぞれの美しさがある。そう思って、産地を訪れて一つ一つ真珠を選んでジュエリーにしている」。

ターゲットは、20〜50代の女性だ。森は、「消費者としていろいろなブランドに触れてきたが、型にはまりすぎて面白みに欠け、画一的で共感できるものが少ない。ステータスや価格だけでなく、個人的な共感を求める層にアピールしたい」と話す。今まで、顧客の口コミやスタイリスト、編集者など業界人および百貨店外相などの紹介によりブランドの認知を広げてきた。店今後も、その方針は変えず、顧客一人一人とDMなどを通して密にコミュニケーションをとっていくようだ。

パリに拠点を移しユニバーサルなブランドを目指す

夫婦二人でブランド運営しており、森の役割はデザインからビジュアル制作までクリエイティブ全般。夫は経営とマーケティングを担当している。クリエイティブとビジネスでは意見が異なるケースも多々ある。森は、「夫婦だからこそ、手加減なしに論議することができる。それがブランドのアイデンティティーの追求につながっている」と言う。

今秋から夫妻はパリへ拠点を移す。森は、「移住は、さほど大きなことではない。国境などに左右されず、SNSなどオンライン中心に個人の価値観でコミュニティが形成されていくはず」と話す。パリは、ファッションをはじめ、さまざまなクリエイションにおけるハブとも言える場所だ。移住する場所にパリを選んだ理由は、「ユニバーサルなブランドにするのが目的。パリの上昇志向を持つ人々に刺激をもらい、感性を磨いて表現していきたい」。

夫妻がビジネス拡大を目指すのは、欧米市場だ。今までの活動の中で、パリやニューヨークの展示会などで手応えを感じたという。現在は、ニューヨーク発ファッションブランド「コルボ(COLBO)」のショップでも販売。「欧米の方が、われわれのブランドの情緒的価値に目を向けてくれて評価してくれる」。今後は、欧米中心にトランクショーを開催し、海外展開を加速していくそうだ。

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