星野リゾートが9月1日に開業する、群馬・尾瀬国立公園内の宿泊施設「ルーシー(LUCY)尾瀬鳩待」の内覧会を取材してきました。「ルーシー」は「星のや」「界」「オモ(OMO)」などを運営する星野リゾートが新たに立ち上げたサブブランドで、“心揺さぶる山ホテル”というコンセプト通り、山小屋とホテルのいいとこどりと言える施設。尾瀬の山のシーズンに合わせ、2025年は10月25日までの営業ですが、「既に今年の予約はほぼ埋まっている」(広報担当者)と聞き、人気ぶりに驚きました。
「ルーシー尾瀬鳩待」が立地する鳩待峠は、尾瀬入山者の60%が利用するというメジャー玄関口です。尾瀬は個人的にも大好きな場所で、ハイキングに山スキーにと何度も訪れていますが、鳩待峠で売店や乗合バスチケット販売を担ってきた「鳩待山荘」が老朽化に伴い今夏閉鎖。「ルーシー尾瀬鳩待」が宿泊者もそれ以外も含め、入山者を迎えることになりました。尾瀬は東京電力グループが土地の約7割を所有し、整備していますが、「ルーシー尾瀬鳩待」もオーナーは東京電力グループ。星野リゾートは運営を担っています。
取材日は最高の天気で、「ルーシー尾瀬鳩待」の奥に至仏山がくっきり。「ルーシー尾瀬鳩待」は2棟の建物からなり、向かって右奥が宿泊者専用棟、左手前が宿泊者以外も使えるカフェと売店の「はとまちベース」です。まずは宿泊棟の紹介から。
山小屋での心配事を減らす
“6つのプロミス”
星野リゾートは「ルーシー」ブランドで、一般的な山小屋では実現が難しいものも多い“6つのプロミス”を掲げています。「プライベートな寝室」「温水洗浄トイレ」「シャワー&パウダールーム」「肉・魚・卵のぜいたくごはん」「24時間使えるラストコンビニ」「充電・Wi-Fi無制限」の6つです。2人部屋、4人部屋だけでなく、1人客も山小屋あるあるの大部屋の雑魚寝ではなく、ドミトリーでプライベート空間を確保。ドミトリーを含めて金庫を備え、バスタオル、歯ブラシも無料。男女それぞれ3ブース備えたシャワー室(洗面台は男性用2台、女性用3台)には、シャンプー、リンス、ボディーソープ、ドライヤーも完備しています。登山に慣れた人にはちょっとした不便は山の醍醐味の1つですが、“6つのプロミス”で不安をできるだけ減らすことで、これから登山を始めてみたいといったエントリー層やライト層にも寄り添っています。
2階建てで、2階が客室とシャワー&パウダールーム。ドミトリー含め全25室で最大44人が宿泊可能です。1階は受付や乾燥室のほか、セルフレジ形式の売店=ラストコンビニ。いなり寿司や菓子パンなどの軽食やアルコール含むドリンク類、化粧水などのアメニティー、日焼け止めクリーム、カイロ、寝巻きにもなるオリジナルTシャツ、オリジナルマグカップなどを販売しています。
朝食はラストコンビニで各自購入する形式ですが、夕食は「はとまちベース」のカフェを17〜18時は宿泊者専用とし、提供します。6つのプロミスで「肉・魚・卵のぜいたくごはん」と掲げている通り、今年の夕食メニューは豚汁、鯖の塩焼き、玉子の揚げ出し、漬物で構成する「豚汁御膳」で、パワーの源、タンパク質もたっぷりメニュー。白米はお代わり可能とのことでした。宿泊料金は、2人部屋利用、夕食付きで1人1万4050円から。素泊まりプランもあります。
鹿児島睦とコラボした
「ルーシー」オリジナル商品も
宿泊者以外も利用できるカフェ&売店の「はとまちベース」は、10〜16時の営業。(前述の通り、カフェは17〜18時は宿泊者の夕食タイム)。地元名産の花豆(インゲン豆の一種)のソフトクリームのほか、湯葉あんかけそばなどを提供。売店では、群馬名産のお菓子などと共に、「ルーシー尾瀬鳩待」のオリジナルスーベニアも扱っています。造形作家の鹿児島睦さんと組んだ、プリントTシャツ(5500円)や、鹿児島さんによるハトのモチーフを刺しゅうした「ハロ コモディティー(HALO COMMODITY)」のキャップ(6000円)、ウォーターボトルなどと、グラフィックデザイナー真田緑さんによるプリントデザインの「トゥーアンドフロー(TO & FRO)」のサコッシュ(7700円)など。
「モンベル(MONT-BELL)」と「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」のコーナーもあり、Tシャツや防寒具、帽子、ストック、傘、サングラスなどを扱っているので、忘れ物をした登山客も安心です。「ザ・ノース・フェイス」は、真田緑さんのイラストをプリントした「ルーシー尾瀬鳩待」とのダブルネームTシャツも販売しています。
予約客の10%がインバウンド
「ルーシー尾瀬鳩待」を率いるのは、「山が好きで、常日頃から山(のそばの施設)に行きたいと社内で発信してきた」という福井ゆう子総支配人。星野リゾートでは新施設ができる際、メンバーを社内公募するそうで、今回7人の社員が集まり、鳩待山荘時代からのスタッフも含めて接客にあたります。宿泊棟に先駆けて、8月1日にオープンしていた「はとまちベース」は「開業前に想定していた以上に利用いただいている」と福井総支配人。宿泊予約は「ファミリー層や1人客など、まんべんなく予約をいただいており、うち10%が海外客。おそらくアジア系の方が中心」といいます。「(一部の層ではなく)より多くの方が山に踏み出しやすい環境を整えた。今後は地元ガイドと連携し、宿泊者が尾瀬をより楽しめる体験プログラムを充実していきたい」。
記事冒頭で書いた通り、部屋数が限られていることもあって、今年分の予約はほぼ埋まっており、「キャンセルが出てもすぐ埋まる」と広報担当者。26年分の宿泊予約は、春の鳩待峠の開通日程が公表され次第、開始する予定だそう。例年、鳩待峠の開通は4月下旬。気になった方はぜひ予約してみてください。
「ルーシー」の尾瀬鳩待以降の展開は「現時点ではお話しできるものはない」と福井総支配人。星野リゾートは施設を所有せず、運営に特化するスキームを採用しているため、「尾瀬鳩待を見た投資家やオーナーの方から声が掛かれば、次につながる」とのことです。