コロナ禍以降のランニング、アウトドアブームからの流れで、山を走るスポーツのトレイルランニングが改めて注目を集めている。女性や20〜30代といった若い世代の参入者が少しずつ増え、体力自慢の一部の男性が行う過酷な競技、というイメージが変化しつつある。トレランギアに強い「サロモン(SALOMON)」「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」などは、街着としても年々支持を高めており、トレランはファッションやカルチャーの文脈においても見逃せないものになった。変化するトレラン市場を取材した。(この記事は「WWDJAPAN」2025年6月9日号からの抜粋です)
01. NHKの山岳番組で認知向上
トレイルランニングとは、山や未舗装の自然の中の道(=トレイル)を走るスポーツ。山を走る人は昔からいたが、トレランとして徐々に認知され始めたのは、日本では石川弘樹、鏑木毅ら第一人者がシーンを開拓していった1990年代〜2000年代。アスリートや自衛官、消防士など、限られた層が行う競技というイメージが変わったきっかけは2009年。モンブランを一周する世界最高峰のレース“UTMB(ウルトラトレイル・デュ・モンブラン)”に挑戦する鏑木にNHKが密着し、「激走モンブラン!〜166km山岳レース〜」として放映したところ、アラフォー以上の一般男性で参入者が急増、各地にレースが広がった。コロナ禍中はレース中止が相次いだが、コロナが明けると、ステイホーム期間中にロードランに親しんだ層がトレイルに興味を持つケースが増加。1990〜2000年代初め、10年代に続き、ここ数年は日本の「トレラン第3次ブーム」と言える。
02. 皆が自分らしく楽しめるスポーツに
トレラン市場の中心は40〜50代男性だが、「この1〜2年、20〜30代の新規客が増えている。ロードランから入る人もいるし、トレランに憧れて、ゼロから始める人もいる」と話すのは、大阪の有力店「ラン ウォーク スタイル(RUN-WALK Style)」(関連記事はこちら)。「女性が増えている」という声も多数上がった。ストイックな日本人は、トレランというと100kmや100マイル(約160km)レースを想像しがちだが、「海外では30km前後やそれ以下のレースも多く、レースをフェスのように楽しんでいる」とは「ザ・ノース・フェイス」。日本でも、短い距離のレースや女性が参加しやすいイベントが増加中。タイムや距離をシビアに追求するのではなく、自然を自分らしく楽しむ手段としてトレランが認知され、共感を集めている。
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