
今、売れるデニムの条件にジャパンデニムがある。日本ならではの精緻なモノ作りが付加価値となり、世界から熱視線を集めている。ここでは、その強さを知る3人のキーパーソンに、それぞれの視点から魅力と可能性を聞いた。(この記事は「WWDJAPAN」2025年8月25日号からの抜粋です)
「タナカ」

タナカ サヨリ デザイナー
カイハラデニムを核に
未来に残るマスターピースを
タナカサヨリとクボシタアキラが手掛ける「タナカ(TANAKA)」は、まさにファッションの新しいスタンダードをつくることに挑む。コンセプトは、「今までの100年とこれからの100年を紡ぐ服」。ブランドの核としているのが、カイハラデニムを使ったアイテムだ。
デザインを担うタナカは、「ヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)」を経て、「ユニクロ(UNIQLO)」でウィメンズグローバルデザインチームのリーダーを務めた経歴を持つ。ブランド立ち上げ当時、「世の中にあふれるほど洋服があることを知っていたからこそ、ずっと価値が変わらない服を提案できなければ作る意味がないと強く思っていた」とタナカ。未来に残る、自分の個性を追求した唯一無二のファッション。それを最大限に表現するために選んだパートナーが、世界有数のデニム生地メーカー、カイハラだった。「色の出方や筋の入り方など、海外のデニムとは明らかに違う。日本特有のきれいな表情が魅力だ」と言う。端正なジャパンデニムを生かした「タナカ」のアイテムは、日常になじむ上品さとモードさを兼ね備える。その絶妙なバランス感が、現代のワークウエアとして幅広い顧客層から支持を得ているゆえんだ。「ポップアップでは、20代から70代までさまざまな年齢層のお客さまが来てくれる。男女の比率も半々。デニムが好きだけど、より今っぽいシルエットやフィット感できれいにはきこなしたい人たちが選んでくれているようだ」。
振り返れば、タナカにとってデニムはいつも欠かせないアイテムだったと言う。原体験は画家である、父の姿。「周りの友人の親はみんなスーツで出勤している中で、自分の父はいつも家の離れでブルージーンズをはいて絵を描いていた。その自由な雰囲気に引かれたのを覚えている」。学生時代は、1990年代の裏原、アメカジカルチャーに触れながら、デニムを軸とした自分のファッションスタイルを形成していった。「映画でも音楽でもいつもかっこいいカルチャーの側にはデニムがあるなと感じていた」。
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