LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)は7月7日、マイケル・バーク(Michael Burke)LVMHファッショングループ会長兼最高経営責任者(CEO)を、LVMHアメリカ(LVMH AMERICAS)の会長兼CEOに任命した。同日付で着任している。
同社によれば、これは北米および南米事業を統括する新たなポジションで、「地政学的な状況が複雑さを増し、進化し続ける中、当社の南北アメリカにおける最大利益を考え、促進する」ことが期待されるという。なお、今回の人事に伴い、アニッシュ・メルワニ(Anish Melwani)LVMH北米会長兼CEOと、ダビデ・マルコビッチ(Davide Marcovitch)LVMHラテンアメリカ社長は、バーク新会長兼CEOの直属となる。
ベルナール・アルノー(Bernard Arnault)LVMH会長兼CEOは、「長年にわたって共に仕事をし、大きな成果を上げているマイケルは、当社の価値観を完璧に具現化してきた。また、その比類のないリーダーシップにより、業界全体の魅力と技能を新たな高みへと導くことに貢献している。彼の長期的なビジョンやユニークな起業家精神は、戦略的に取り組むべき時期にある南北アメリカ市場において、かけがえのない財産になるものと確信している」と語った。
アルノー会長兼CEOの“腹心”として長年活躍
バーク新会長兼CEOは、フランスの名門ビジネススクールとして知られるEDHEC経営大学院(EDHEC Business School)を卒業。アルノー会長兼CEO一族の持株会社グループ アルノー(GROUPE ARNAULT)に入社後、1980年代半ばから2010年代にかけて「ディオール(DIOR)」「フェンディ(FENDI)」「ブルガリ(BVLGARI)」とLVMHが擁するブランドの要職を歴任。13年から23年1月まで「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」の会長兼CEOを務めた。LVMHはブランド別での業績を開示していないが、情報筋によれば、バーク会長兼CEOの任期中、同ブランドの売り上げは約3倍に、利益率は約4倍に成長したという。同年2月には、アルノー会長兼CEOの顧問に就任。また、21年には、「ティファニー(TIFFANY & CO.)」の取締役会の非業務執行会長にも就任している。
24年2月には、「セリーヌ(CELINE)」「ジバンシィ(GIVENCHY)」「ロエベ(LOEWE)」「エミリオ・プッチ(EMILIO PUCCI)」「ケンゾー(KENZO)」「マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)」「パトゥ(PATOU)」などのブランドを統括するLVMHファッショングループを率いるシドニー・トレダノ(Sidney Toledano)会長兼CEO(当時)がアルノー会長兼CEOの相談役に就任したことに伴い、その後任に就任。しかし同年5月、バーク会長兼CEOはファッショングループを統括する職務を離れており、再びトレダノ新相談役がその役割を担っているようだと複数の海外メディアが報じていた。
売り上げ全体の4分の1を占める米国市場
LVMHの24年12月期決算は、売上高が前期比1.7%減の846億8300万ユーロ(約14兆3961億円)、営業利益は同16.2%減の189億700万ユーロ(約3兆2141億円)、純利益は同17.3%減の125億5000万ユーロ(約2兆1335億円)と減収減益だった。なお、売り上げ全体のおよそ4分の1を占めている米国市場は、同1.0%減の215億5400万ユーロ(約3兆6641億円)と微減。米国内の店舗数の合計は、24年12月末の時点で1193店だった。
中国市場が停滞する中、回復基調にある米国市場はラグジュアリー企業にとってさらに重要性を増している。一方で、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領政権による関税政策が二転三転している影響で複雑さも増しており、バーク新会長兼CEOは難しいかじ取りを担うこととなる。