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デルフィーヌ・アルノー=ディオール本国トップに聞いたジョナサン・アンダーソンの理由

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ディオール(DIOR)」は6月2日、先月開催した2026年クルーズ・コレクションを中心としたランウエイショーを最後に勇退したマリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)の後任をジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)が務めることを発表した。ジョナサンはメゾンの歴史上初めて、ウィメンズとメンズ、そしてオートクチュールの全てを統括するクリエイティブ・ディレクターを務める。なぜジョナサンなのか?そして、なぜ1人のデザイナーに全てを託すのか?デルフィーヌ・アルノー(Delphine Arnault)=クリスチャン ディオール クチュール会長兼最高経営責任者(CEO)に日本の媒体では唯一「WWDJAPAN」が話を聞いた。

PROFILE: デルフィーヌ・アルノー=クリスチャン ディオール クチュール会長兼最高経営責任者(CEO)

デルフィーヌ・アルノー=クリスチャン ディオール クチュール会長兼最高経営責任者(CEO)
PROFILE: 1975年4月4日生まれ。国際的な戦略コンサルティング会社のマッキンゼー社でキャリアをスタートし、2年間コンサルタントに従事。2000年、ジョン・ガリアーノ社の開発に加わり、ファッションビジネスの具体的な経験を積んだ。01年にはクリスチャン ディオール クチュールに入社し、08年から13年までマネージング・ディレクターを務めた。13年には、ルイ・ヴィトンのマネージング・ディレクターに任命され、製品に関わる責任者を務めた。23年2月1日から、クリスチャン ディオール クチュールの会長兼CEOを務めている。PHOTO:STEPHANE GALLOIS

「今デザイナーを変えるなら、彼がベストチョイス」

WWD:なぜ、新しいクリエイティブ・ディレクターにジョナサン・アンダーソンを選んだのか?

デルフィーヌ・アルノー=クリスチャン ディオール クチュール会長兼最高経営責任者(CEO)(以下、デルフィーヌ会長):ジョナサンと知り合い11年になるが、まだ40歳の彼は今、その世代で最もビジョナリーで手仕事への造詣が深く、才能ある素晴らしいデザイナーだと思う。「ロエベ(LOEWE)」で経験を積み、1846年に誕生した歴史あるブランドをモダンな言語で語ることから、ブランドのエレベーション(高級化)、そしてデザインチームのマネージメントなどを学んできた。今デザイナーを変えるなら、彼がベストチョイスだろう。

WWD:長きにわたる「ディオール」の歴史の中で、特に「ディオール オム」がデビューして以来、ジョナサンは初めてウィメンズとメンズ、そしてオートクチュールの全てを手掛けるクリエイティブ・ディレクターとなる。

デルフィーヌ会長:元来「ディオール」は、創業者クリスチャン・ディオール(Christian Dior)という1人の人物のビジョンから現在に至っている。そろそろウィメンズとメンズをプロダクトとコミュニケーション、店頭でのVMDに至るまで、一貫性を持って表現しても良いだろう。もちろんブランドの規模は当時とは比べ物にならない程大きくなったが、一般の消費者には今も、これまでの「ディオール」はメンズとウィメンズを異なるデザイナーが手掛けていたことを知らない人も多い。ジョナサンが全ての指揮を執ることは、そんな人たちにとっても一貫性を感じていただけるチャンスになる。

発表の25日後、メンズ・コレクションを発表

WWD:これまでのクリエイティブ・ディレクターは、基本的にオートクチュールでデビューした後、プレタポルテに挑んできた。メンズでのデビューは、前例がない。

デルフィーヌ会長:まさにアウトサイド・ザ・ボックス。既成概念を超えた新しい挑戦は、新たな時代にふさわしい。特にデザイナーに関するニュースが続出している今、ジョナサンは(ウィメンズのアーティスティック・ディレクターにも就任することが発表になった6月2日の)25日後、自身初の「ディオール」におけるメンズ・コレクションを発表することになる。さまざまな変化が起こっており刺激的なファッション業界の中で、「ディオール」もまたエキサイティングなモーメントを迎えていることをタイムリーに発信したい。一方、7月のクチュール・コレクションはスキップし、ウィメンズのプレタポルテは10月1日に発表する予定だ。

「1シーズンに3つのコレクションも、アトリエとなら可能」

WWD:7月のクチュールはスキップするが、来年の1月以降は、1シーズンに3つのファッションショーを手掛けることになる。ジョナサンの才能は理解しているが、果たして可能なのだろうか?

デルフィーヌ会長:「ディオール」のアトリエは、世界最高峰。クチュールとプレタポルテのアトリエは異なっているし、メンズだけに徹するアトリエも存在している。そこで働くスタッフは、クリエイティブ・ディレクター同様、さまざまなノウハウを持ち、社会の変化に柔軟に対応している。彼一人ではなし得ないことも、アトリエと一緒なら可能だろう。

WWD:ジョナサンは、アトリエにどう出迎えられたのか?

デルフィーヌ会長:彼は今、メンズのアトリエで仕事をしている。ウィメンズやクチュールのアトリエを訪ねるのは、これからだ。メンズのアトリエは、まさにエネルギーと刺激に溢れ、皆、熱狂をもってジョナサンを出迎えた。一方のジョナサンも、これから益々モダンに進化する「ディオール」に参画し続けてほしいとのメッセージを発信している。今はメンズの(2026年春夏)コレクションを手掛けているタイミングだが、彼は早速アーカイブと共に長い時間を過ごし、インスパイアされつつ、「ディオール」のビジョンを少しずつ理解しようとしている。ムッシュー・ディオールのみならず、イヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)やマルク・ボアン(Marc Bohan)、ジャンフランコ・フェレ(Gianfranco Ferre)、ジョン・ガリアーノ(John Galliano)、ラフ・シモンズ(Raf Simons)、そしてマリア・グラツィア・キウリの全てのアーカイブから刺激を得ているようだ。そんな彼の姿を興味深く見守っている。

ジョナサンとムッシュ・ディオールには共通点が多い

WWD:ジョナサンとは、「ディオール」をどんなブランドに導きたいと話している?

デルフィーヌ会長:ビジョンを語るのは彼の仕事だが、今後もハイエンドブランドとして、唯一無二のフェミニニティーやクオリティーを発信してくれるだろう。ジョナサンとムッシュ・ディオールには、共通点が数多い。お互いアートへの造詣が深く、ガーデニングを愛し、ゆえに花や香りに特別な思いを抱き、同時に神秘的な迷信を信じている。きっと皆、これからジョナサンとムッシュ・ディオールの共通点に驚くことになるだろう。

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