ビジネス

百貨店免税売上高、軒並み4割減

大手百貨店4社の2025年5月度売上速報が出そろった。国内顧客の売上は各社とも安定的に推移したが、免税売上は軒並み3〜4割のマイナスとなった。前年5月は円安が最も進行し、一時1ドル=155〜157円をつけた時期だった。訪日消費が過熱していた当時の反動が大きいとはいえ、高額消費の勢いの弱まりは明らかだ。

三越伊勢丹の免税売上は、前年同月比33.0%減と大きく落ち込んだ 。基幹3店(新宿、日本橋、銀座)合計でも同30.2%のマイナス。前年の高水準からの反動が顕著に表れている。同社広報は、「ある程度の落ち込みは織り込み済み」としたうえで、次のように説明する。「特に昨年5月は訪日客による高額品購買がピークだったが、今回はそのブームが一段落したという側面もある。ただし、買い上げ点数は落ちていないため、不安視はしていない。アプリなどを通じて訪日客の識別化を進め、秋口からの回復を見込んでいる」。国内売上は堅調に推移しており、全国既存店の日本人売上は同3.9%増だった。

大丸松坂屋百貨店も、免税売上高が前年同月比40.1%減と大幅に落ち込んだ。訪日客数自体は同2.9%増だったが、ラグジュアリーブランド、時計、宝飾品など高額商材の販売が低迷し、客単価は同41.7%減と大きく落ちた。髙島屋も、免税売上は同41.7%減とマイナス幅が大きい。スポーツ用品や子供服など一部カテゴリでは訪日購買は堅調も、ラグジュアリーを中心とする高額品の不調が全体に影響した。阪急阪急百貨店は全店、旗艦店の阪急うめだ本店ともに、免税売上高が約4割減。モードやインターナショナルブランド、バッグ類が特に影響を受けた。一方、うめだ本店の国内客売上は、底堅いブライダル需要などによって同月の過去最高を記録した。

高額品依存の揺り戻し “インバウンド偏重”から脱却なるか

百貨店の好業績をしばらく支えてきた、ラグジュアリーを中心とした訪日客の高額品消費が一巡している。その一方で、国内客の購買は底堅く、食品や化粧品といった日常性の高いカテゴリーが支える。免税売上が不安定化する今、三越伊勢丹や阪急阪神百貨店が進める「訪日客の識別化」による囲い込みに加え、高額品に頼らない売上構成への再編成、国内顧客への訴求の再強化が、中長期的な競争力の鍵となりそうだ。

関連タグの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

Is AI GOOD?AIがもたらす「ゲームチェンジ」

「WWDJAPAN」12月1日号は、ファッション&ビューティ業界でいよいよ本格化する“AIゲームチェンジ“を総力特集しました。11月19日のグーグル「ジェミニ3.0」発表を契機に、生成AIは「便利なツール」から「産業の前提インフラ」へ変貌しつつあります。ファッション&ビューティ業界で浸透する生成AI及びAIの活用法とゲームチェンジに向けた取り組みを紹介しています。

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。