PROFILE: ラムダン・トゥアミ/アーティスティック・ディレクター

17歳でファッションの世界に飛び込んでから33年、ラムダン・トゥアミ(Ramdan Touhami)はデザインも含めると400以上の店舗に携わるなど、小売りに人生をささげている。33年の小売り半生では、フランス生まれの老舗総合美容専門店「オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリー(OFFICINE UNIVERSELLE BULY)」を復活させて、LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)に売却。一財産を築くと、昨年はパリにショップをオープン。ECやDXと叫ばれる時代にリアル店舗への愛を貫いている。その愛を、忌憚のない言葉で、豪快に語った。(この記事は「WWDJAPAN」2025年4月14日号からの抜粋です)
WWD:昨年はパリにアウトドアブランドをセレクトした「ア ヤング ハイカー(A YOUNG HIKER)」や、複合ショップ「ワーズ サウンズ カラーズ アンド シェイプス(WORDS SOUNDS COLORS & SHAPES)」をオープンした。小売りへの愛を貫いている。
ラムダン・トゥアミ(以下、ラムダン):最初にオープンした10店舗は、我を貫き通したからひどかった。そこからさまざまを学び、小売りの魅力に気づいて、今ではすっかり“オタク”になった。
WWD:改めて小売りの魅力とは?
ラムダン:街から小売店がなくなる姿を想像してほしい。人と出会うための場所、しかも映画館や美術館とは違って無料の場所が存在しない街は、退屈なものだ。小売店は、社会との接点。毎日を過ごす中では、「今日は、店員さんとしか話をしなかった」なんてときもあるだろう。小売りがなかったら、他人と一切会話しない人が生まれてしまう。もし世界がアマゾン(Amazon)に支配されてしまったら、私はきっと自殺するだろう。アマゾンやYouTube、Instagramは、中世の王と似ている。中世の王は領民に、土地の領有権の代わりに貢納や軍事奉仕を義務付け、時には彼らから搾取をしてきた。アマゾンやYouTube、Instagramは、プラットフォームの代わりに手数料を徴収し、時には出店者から搾取しているように思える。人類は、こんな社会から逃れなくてはならない。小売店は、それに抵抗するシステムだ。搾取する人たちに抵抗するのが私の仕事。「ア ヤング ハイカー」や「ワーズ サウンズ カラーズ アンド シェイプス」ではなく、「レジスタンス(抵抗)」という名前の店舗をオープンしたくらいの感覚だ。
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