ファッション

アパレル業界“シロウト”3人で年商5億円 「クヌースマーフ」常識知らずの突破力

コロナ禍でバブル的に急増したEC主軸のアパレルブランドも、選別淘汰が進んでいる。生き残れるのは、強い個性を備えたブランドだけだ。IN Inc.が運営するEC主軸ブランド「クヌースマーフ(KNUTH MARF)」は設立(2021年11月)から1年で年商5億円に達するなど急成長を遂げた。アパレル業界未経験のコアメンバー3人が作る服と世界観は、既成概念に捉われない面白さがある。

IN Inc.のメンバー5人のうち、コアメンバーであるデザインディレクターのChiEmiは元保育士、クリエイティブディレクター和泉琴華の本職はイラストレーター。中井亮CEOは、吉本総合芸能学院で学び、本気で芸人を目指していた過去がある。「僕らが事業を始めたとき、それは今もかもしれませんが、アパレル業界の常識というものが全くなかったんです」と中井CEO。

カテゴライズできない服
着る人のときめきが最優先

2024年春夏は、マニッシュなチェスターコートやシャツもあれば、フェミニンなオフショルダーのワンピース、ヌーディーな透け感のあるラメニットもある。モノトーン配色にフリンジで表情感を与えたセットアップは、素材のテクスチャーを楽しめる玄人向けな一着。“フェミニン”“マニッシュ”といったカテゴライズにはまらない、多彩なラインアップだ。

いかにも工賃がかかっていそうな、デザインを効かせた服も多い。「一番大事にしているのは、お客さまがときめくようなひとクセある提案」とChiEmiデザインディレクター 。商品企画では「原価率」や「利益率」の業界の常識的な水準にも縛られない 。「ブランドがまだ若い今は、利益をいくら残すかよりも、お客さまに喜んでもらいブランドを好きになってもらうことがよっぽど大事だと思っています」。

個々人の役割が明確だから
全力投球できる

パリに「クヌースマーフ」の服を持ち込み、現地の人にアポ無し依頼で着てもらい スナップ撮影を敢行するなど、ビジュアル面でも予算と労力を惜しまない。クリエイティブディレクションは、イラストレーターの和泉の専任だ。「(ビジュアル制作は)服ができた。じゃあ、どう見せよう?という後付けの発想ではない。服のデザインはChiEmiの仕事、ビジュアル制作は私。それぞれに明確な役割があるから全力で面白いものを作れる」(和泉)。

元芸人という、経歴の異色さで言えば一番の中井CEO。ブランド運営全般と生産管理や品質管理などのバックオフィス業務を担う。コロナ禍で外部とのコミュニケーションがままならない中では、苦労も多かった。「初期の頃はサンプル商品が依頼と違う生地に変わっていたり、 倉庫会社のミスで、1つのご注文に対して二重発送をしてしまったり……」。さまざまなトラブルに見舞われながら、「本気でお笑いで食べていく」ことを目指した胆力で、縁の下の力持ちをこなしてきた。

「一人一人に得意分野があって、それぞれが最後の砦という自覚がある。僕らには業界の常識がないから、“怖い”も分からないし、ただがむしゃらにやっていくだけ」。

現在はTOKYO BASEの「ステュディオス(STUDIOUS)」の一部店舗でも卸販売しているが、今後はリアルでの接点を積極的に増やす。直近では23年11月、福岡天神地区のビルのワンフロアを借り、ブランド2周年のポップアップストアを実施。1100人超を集客し、売り上げも予算を大きく超えた。2月末には阪急うめだ本店でもポップアップストアを開催した。年内には名古屋、九州の商業施設でも計画する。2〜3年内には「週末営業やギャラリー形式など、既存の店舗のあり方にとらわれない形」での実店舗出店を目指す。

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