「WWDJAPAN」7月3日号は「特集:繊維商社」。繊維商社にとって、売上高から利益までを管理する「課」は一つの会社のようなもので、課長はある種の中小企業のトップに近い。また、商社パーソンが目指す最初のゴールでもあり、課長の仕事から繊維商社のリアルが見えてくる。繊維商社の課長の仕事の内容とは?「特集:繊維商社」の関連企画、「課長のお仕事」をお届けする。(この記事は「WWDJAPAN」2023年7月3日号からの抜粋です)
酒井聡太(さかい・そうた)/スタイレム瀧定大阪テキスタイル2部12課 課長 プロフィール
1986年9月13日生まれ、愛知県小牧市出身。愛知県立春日井高校普通科、同志社大学社会学部を経て、2009年に瀧定大阪(現スタイレム瀧定大阪)入社。22年2月から現職
酒井聡太課長率いるスタイレム瀧定大阪のテキスタイル2部12課は、国産生地の多いスタイレムには珍しく海外品を扱う部隊だ。課員は全部で17人ほど。課としての特徴は、海外品を扱うこととと並んで、チーム営業を確立していることだ。同社は長らく課別の独立採算制を敷いてきたが、その中心にあるのは課員一人ひとりの機動力と営業力の高さだった。現在は課を超えた連携も増えてきたが、課内でもチームプレーを重視する酒井課長のスタイルは、同社の変化を象徴する。そのプレースタイルは、酒井課長のバックグラウンドにある。
酒井課長のキャリアは、今の服地販売を行うテキスタイル部ではなく、OEMからスタートした。テキスタイル部に異動したときに、当時の酒井課長は新規開拓に注力する道を選んだ。とはいえ、服地卸最大手の同社にあってバッティングしない企業を探すのはなかなか大変だ。「新規開拓のためには、新規の商品開発が必要だった。なので海外で生産し、婦人服に比べるとシェアの低かったメンズにターゲットを絞った」。新規開拓で心がたのは、「飛び込み営業はなるべくせず、今後も成長しそうな企業を探すこと。取引したい企業が見つかれば、その担当者を、人伝にでも場をセッティングしてもらって、先方の興味を持ってもらうようなアプローチをしつつ、一緒に成長するためのソリューション提供の道を探った」。そうした中で行き着いたのは、チームプレースタイルだった。一つの取引先に対して2人で担当した。それまで一人で担当するのが当たり前だったし、効率で言えばとても悪い。それでも2人で担当することで、従来の2倍以上の売り上げを作れればペイできる。「従来の生地を売って終わりではなく、より包括的なサービスがしたかった」。
チームプレー方式は、営業スタイルそのものも徐々に変わっていったという。「取引先はもちろん、社内でも仕入先でもコミュニケーションがより重要になった。例えば商品開発のキャッチフレーズ。とにかく一言で伝わるような、『ニューベーシック』などのようにわかりやすさを徹底的に重視した」。こうしたやり方に行き着いたのは、もともと同社が持っていたカルチャーが大きいという。スタイレムの変わらないビジネスモデルの一つは、トレンドやシーズンなど変動の激しい服地ビジネスの中でも、需要を見越してストックしてテキスタイルを販売していく"リスクテイク型”の問屋スタイル。「この問屋スタイルがあるから、もともとものすごくコミュニケーションを大事にする社風だった。なぜこの商品なのか、なぜこのくらいの需要があると思うのか、誰にどのくらい売れそうなのか。今で言うところの仮説と検証を徹底的に繰り返すカルチャーがあった。結局答えは作ってから売っていくことでしか出てこない。それでも、『知り合いの若い女性がこう言っていた』みたいな傍から見れば些細な情報であっても、真剣に向き合って議論して、最終的にはリスクを張ってテキスタイルを作る。そうしたカルチャーをどうしたら自分なりに発展させられるか。それを考えて突き詰めていった」。
そんな酒井課長のやりがいは、「生活に近い商材をあつかっているので、日常が仕事に生きること。あとやっぱり、数字で勝ち負けがはっきりこと。自分たちが仕込んだ商品が世の中に出ていって、かつそれが数字にも如実に出る。面白くて仕方がないです」。今後は社内はもちろん、社外も含めて連携したり、チームを作ったりすることにも注力していく。コロナ禍が収束し、対面も増えてきたことで、再び「スタイレムらしさ」の本領を発揮できる手応えを感じている。「僕らはコミュニケーションを重視してきたから、対面して言葉をかわすことの重要性を特に感じています。やっぱりどんなに言葉を尽くしても、伝えられることは半分もないと思います。これからますます、国内外、特に海外のサプライチェーンをつなぐことも重要になっていく。お客の課題を探るため、そして解決のためにはますますコミュニケーションが重要になる。つまりは当社のカルチャーである問屋魂をベースとしたコミュニケーション力の高さが武器になると確信しています」。
1日のスケジュール
月:午前中は課で会議。午後 インドネシアの現法やタイ事務所、社内でのミーティングなど
火:午前:国内&海外の営業のMTG 午後 仕入先との打ち合わせ。
水:オンラインで外部の取引先(営業)、午後 課員と同行して営業
木:営業同行
金:大阪で社内mtg 午後:営業同行
愛用品/必須道具
休日の息抜きは映画を見ること。「少林寺三十六房」「デス・プルーフ」「グッフォフェローズ」は「まじで百回以上見てます」