※この記事は2023年02月27日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから。
今週発売の「WWDJAPAN」には、半期に一度の恒例となっているビジネスリポートをセットしています(定期購読の皆様限定です)。小田島副編集長、五十君副編集長、新関記者、そして益成記者らが、今回も示唆に富んだデータ&記事でラグジュアリーから駅ビル、古着店までの最新動向をまとめています。
その中で、気になる言及がありました。ラグジュアリーマーケットにおけるシューズブランドの動向についての一節です。
ラグジュアリーマーケットは、全般的には好調ですが、一部シューズブランドは行動制限が解除されても、なかなか回復基調に戻せません。そんな動きについて以前、リステアの柴田麻衣子クリエイティブ・ディレクターは、「行動制限からは解放されたけれど、外出の頻度はまだ少ないのかもしれない」と分析されていました( リステアのウィメンズフロアで好調な肌見せアイテムは? 「売れている&売れたもの」特集 )。理由の1つだろうと思います。と同時にビジネスリポートでは、「好調なラグジュアリーブランドが、シューズの売り上げも伸ばしているから」も理由の1つと分析しています。つまり総合的なラグジュアリーブランドが、シューズに特化したラグジュアリーブランドのシェアを奪っているのです。
一方、若い世代の間では、シューズどころか、特定のシューズに特化した歴史あるブランドが好調です。代表例は、こちらの「アグ」( 「アグ」の売れ筋は?Y2Kトレンドを追い風にブランド人気再燃中 「売れている&売れたもの」特集 )。誰もが知っているシープスキンブーツは、厚底バージョンも登場した影響で購入者層が拡大しています。「ビルケンシュトック」は、“ボストン”という名前のスエードレザーサンダルを中心に、ここ数年売り上げを伸ばし続けているそうです。“ボストン”は、「ザ・『ビルケンシュトック』」なサンダルです。そして「クラークス」では、“ワラビーブーツ”。セレクトショップでの存在感も増し、若い世代が履きこなす姿を見かける頻度は明らかに増えました。
「アグ」や「ビルケンシュトック」「クラークス」は、価格で言えば、いずれも2万〜3万円まで。上述の商品は歴史があるので総合的なラグジュアリーブランド同様の安心感がありつつも、価格的には若い世代にも手が届きます。中高年は、履きこなしていた原体験があるので、これまた安心感が高くて手が出しやすいのでしょう。ラグジュアリーブランドが値上げを続ける中、こうしたエントリー〜ミドルプライスのシューズブランドにスイッチしたり、興味・関心を高めたりしている人たちも増えているのではないか?そんな風に思うのです。
そう考えると、歴史って本当に大きな財産です。総合的なラグジュアリーブランドの本質は、過去のレガシーのモダンなアップデートにあります。それを繰り返しているからこそ、レガシーのストーリー発信力が強まり、憧れを醸成しているのです。一方で「アグ」や「ビルケンシュトック」「クラークス」は、同じものを愚直に作り続けるからこそ、そのブランドでしか提供できない価値が高まりました。やっぱりコレも憧れに繋がっているのではないでしょうか?
ポッドキャストの記者座談会を聴きながら、「ラグジュアリーが売れているのは、歴史だな」との思いを強くしています。日本のブランドにも、いよいよ本気で、「歴史をちゃんと築いていこう」という発想が求められています。
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