ファッション

「ドリス ヴァン ノッテン」2016-17年秋冬パリ・コレクション

REPORT

緊張の中で映し出す 女性たちの「光と陰」

インビテーションには、モノトーンの水彩で目が描かれている。昨シーズンのインビテーションにも目のモチーフを用いていたが、今回のコレクションが前回とは異なる性質を持つものであるということはその時点で見て取れ、来場者に緊張感を与えた。ショーが始まる直前の数分間、会場には鼓動の音が響いた。その音はリハーサル中にモデルの鼓動を録音したものだと後から知ったが、暗転の中でその音に包まれた時には、「ドリスは今からどんな世界を見せてくれるのか」という会場中の胸の高鳴りがそのまま響き渡っているような感覚を覚えた。

 鼓動の音が弦をはじく音に変わると、ネイビーのテーラードジャケットとホワイトシャツに、フェイクファーで仕立てたレオパードのワイドパンツをコーディネートしたファーストルックが現れた。その姿は今回のテーマの一つとして挙げられた、写真家ヘルムート・ニュートンの代表作の一つである“スモーキング・ルック”の女性像をほうふつとさせる。その後はグラミーなフェイクレオパードのガウンとナチュラルな色合いの洗いざらしのコットンパンツ、カレッジ風ベストとワイドなジャージーパンツといった、エレガントな折衷主義を盛り込んだルックが続く。パープルのスタジャンとレオパードのパンツのコーディネートが飛び出したかと思えば、クラシカルな英国スタイルのグレンチェックのセットアップなどの正統派スタイルも登場し、女性が持つさまざまな側面を映し出していく。ホワイトのブラウスにスリップ風ドレスを合わせた一見センシュアルなルックや、細かなパールを無数につなぎ合わせたパーツを配したフェミニンなディテールも、ウエットになでつけたヘアと目の周りの深い陰影が強さと深みを持たせ、時には性別すらあいまいに感じさせる。

 ショー終盤にはネイビーやブラックをメーンに、スパンコールなどで格子柄の刺しゅうを施したアイテムやロングケープなど重厚感のあるルックが立て続けに登場し、最後まで緊張感を高めていく。全てのモデルがランウエイを去り、ドリス・ヴァン・ノッテン=デザイナーが笑顔で姿を見せた瞬間に、張り詰めた空気がゆるみ、温かい興奮に満ちた拍手と歓声が会場を包んだ。

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