ファッション
連載 東京・コレクション

「ヨシオクボ」が東コレで見せたダイナミズムの“究極系” ベテランの決意と未来への第一歩

 久保嘉男デザイナーによる「ヨシオクボ(YOSHIOKUBO)」が、2023年春夏コレクションのショーを東京・渋谷のイベントホール「ベルサール渋谷ファースト」で開催した。「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」冠スポンサーの楽天が実施する支援プロジェクト「バイアール(by R)」のサポートによるもので、6月のパリ・メンズ・ファッション・ウイークでオンライン形式で披露した23年春夏コレクションをベースに、新作を加えて再編集した東京独自の内容だ。

 ショー直前のバックステージで、久保デザイナーは意外な言葉を口にした。「今回で、これまでのようなショーの形は一旦休憩するつもり。ファッションを夢見て、憧れて、情熱をかけてブランドをやってきた中で、ショーという形態を疑ったことはなかった。でも今、SNSで服の情報が溢れる中、既存のショーという形式にみんなが慣れすぎちゃっている。デザイナーの僕でさえ情報が多すぎると思っている。一歩引いて、服の見せ方と、服作りそのものを見直そうかなと。『バイアール』はそれにふさわしい舞台やし、これまでの『ヨシオクボ』の究極系のショーにしたい」。

ぼんやり浮かぶ人魂を
“透ける”ギミックで表現

 広々とした会場には、巨大な白い幕が吊るされていた。幕の向こう側でぼんやりとした青いシルエットが浮かび上がると、その独特な動きに魅了される。コレクションピースをまとったダンサー、KELOによるパフォーマンスだ。ダンスが終わると会場が暗転し、ランウエイショーが開幕した。シーズンテーマは、夜に浮遊する火の玉を意味する“人魂(ひとだま)”だ。

 ウエアは、ブランドの持ち味であるスポーティーなスタイルを軸に、オーガンジーやメッシュなどの“透ける”生地を多用し、宙に浮かぶ人魂を表現した。オーガンジーをたっぷりと使い、ボーンを入れて獣のような構造を作ったドレスや、同じくオーガンジーによる球体のようなフォームのブルゾンなど、ダイナミックなシルエットに振り切ったコレクションピースを連打する。一方で、身頃やヨーク、袖の一部をメッシュで切り替えたブルゾンや、全面をメッシュで作ったオーバーサイズのトップスなどのリアルクローズも登場した。いくつかのルックには、ヘアメイクアップアーティストの奥平正芳が制作した、妖怪の頭のようなヘッドピースを組み合わせて、奇想天外な世界観を強調した。

 メッシュに刺しゅうされた英字は、一見クールなスラングかと思いきや、“SHIRANGANA(知らんがな)”をはじめとする大阪弁だった。「アメリカに長くいたのに、今でも大阪弁が抜けんのは、僕の揺るがないアイデンティティーやから」と、久保デザイナー。さらに、しめ縄を彷彿とさせるテキスタイルや竹やぶのようなグラフィックといった“和”の要素や、NFTを想定した風船のように膨らむ構造など、ここ数シーズンで挑戦してきたクリエイションの要素を詰め込み、全54体の壮大なコレクションを完成させた。フィナーレではモデルたちが幕の裏側を歩き、ダイナミックなシルエットを印象付けた。

 ショー後の久保デザイナーの表情は晴れやかだった。「ブランドをやめるわけじゃないですよ(笑)。あくまで、服作りの方向性を変えて、新しいチャレンジをしようと決めただけ。服は今も好きやし、これからも作り続けたい。さらに芯の食った服作りを目指していきます」。

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