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友達同士で「アイシャドウ」を贈り合う!? Z世代の驚くべき「誕プレ習慣」【前編】

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 Z世代には、友人の誕生日に「コスメを贈り合う」習慣があるのをご存じだろうか?Z総研が2020年に12~26歳の女性80人を対象に実施したインターネット調査によると、友達へのギフトにコスメを選ぶ人が多数を占め、特に「デパコス」という回答が37.5%にのぼった。30代以上の女性たちと異なるのは、Z世代が選ぶのはアイシャドウやリップといったメイクアップ製品であることだ。大人にとっては少々驚きのこの習慣を通して、Z世代特有の友達観や、デパコスへの意識について考察したい。

誕生日にもらう&贈るギフトNo.1は「コスメ」

 Z世代のリアルなギフト&デパコス事情を知るために、今回はファッション系の大学に通う学生に協力を頂いた。萌さん(21歳・三重県出身)、なみさん(20歳・静岡県出身)、涼さん(24歳・千葉県出身)の3人だ。現在は東京在住だが、高校時代は地方(うち1人は都市圏)で過ごしていた。

 まず友人にコスメを「贈ったことがある」のか聞いてみると、3人とも「ある」とのこと。そして同じく3人とも「もらったこともある」という。コスメを贈り合う習慣は高校生くらいからスタートするらしい。

なみ:誕生日プレゼントは、2~3個のアイテムを贈ることが多く、そのうち1つは必ずコスメです。自分がもらう時も同じですね。

萌:アクセサリーと一緒に、リップをつけたりするよね。

涼:ギフトの場合、あげるのももらうのもほぼデパコスです。新しく買う必要がないくらい、プレゼントでデパコスのメイクアイテムはそろってしまう。

 「買わなくてもいいくらいデパコスが揃う」というコメントには、驚くほかないけれど、一方で素朴な疑問も。デパコスのメイクアップ製品に加え、その他の物も合わせて贈るとなると、それなりの金額になるのでは……? ギフトの予算感はどのくらいなのだろう?

なみ:5000円以上のことが多いですね。仲のいい子だと7000円くらい?

萌:私も、仲のいい子だと、そのくらいです。

涼:仲のいい子だと“来年のぶんのプレゼントもまとめてね”と、1万円以上のものを渡す場合もあります。

ギフトの予算は5000~7000円 背後あるZ世代特有の「友達観」

 学生が友人へのギフトに5000~7000円とは、高額な気がするのは私だけだろうか!? 今回取材したのは首都圏のZ世代であり、全国的には違うのかもしれないが、伊藤忠ファッションシステムが20年1月に行った調査でも、同じような回答が得られたという。伊藤忠ファッションシステムの廣瀨萌ナレッジ開発室リサーチャーは、「ギフトに1回あたりかける金額は、約3500~5000円でした。何人かでまとめてプレゼントを贈る場合、皆でお金を出し合うと予算が1万円を超えることもあります。Z世代にとって友人の誕生日は“気合いを入れる、ハレの日イベント”であり、投資を惜しまない傾向があるようです」と話す。

 その背景にはZ世代に特有の「コミュニティー」と「友達観」が影響しているという。「彼女たちにはSNSを通じて“ゆるく繋がる”友人が数多く存在します。その一方で“直接つき合う”友人は限定されており、大体5~6人程度でしょうか。このコアな友人とは密な人間関係を好み、時間もお金も費やす傾向がある。加えてコロナ禍を経て、同じ場所に集まる機会が減ったこともあり“気の合う友人とリアルに思い出を共有すること”に価値を見出しているようです」(廣瀨リサーチャー)。

 前述の学生に「仲のいい子」の人数を聞くと、5~7人程度であり、伊藤忠ファッションシステムの調査とも一致する。気心の知れた友人だからこそ「(好みが分かれる)メイクアップ製品をプレゼントし合うこと」が成立するようだ。

ギフトにデパコスを選ぶ理由と、親しい間柄ならではのリサーチ力

 40代の私が個人的に驚いたのは「アイシャドウをプレゼントする」というZ世代の感覚だった。恐らく30代以降の女性がコスメを誰かに贈るなら、ハンドケアやルームフレグランスなど「誰にも嫌われない」「当たり障りのないもの」を選ぶのではないだろうか?メイクアップ製品、特にアイシャドウは、個人の好みが反映されるため、ギフトにはまず選ばないように思う。Z世代は「友人が喜ぶメイクアップ製品」をどのように選んでいるのだろう?

涼:仲の良い子は、家に遊びに行った時に好きなブランドや“今持っていないもの”を、さり気なくチェックします。お泊まりの時はメイク道具を借りたりするから、おのずとその子の好みは分かりますね。

なみ:「学校で“ブルベ&イエベ診断”のアプリを試したり、日常的に肌タイプやメイクの好みを話す会話があるんです。“あなたはこの色が似合うよね”とか、その子の好きそうなものや似合いそうな色は何となく把握している。

萌:一緒にデパートの化粧品売り場に一緒に行って、“これ可愛い!”って盛り上がったものを覚えておくんです。あとでこっそり買いに行って、サプライズで渡します。

 最後のシチュエーションは、他の2人も「そうそう、よくやる!」と言っていたので、Z世代の間では頻繁に行われることらしい。なるほど、ギフトに5000円以上かけるほど「親しい間柄」だからこそ、相手の好みもリサーチ済みというわけだ。では、あえてデパコスを選ぶ理由とは何だろう?

萌:ギフトボックスに入れてリボンをかけてもらって、誰かにあげる時にやっぱり特別感がありますよね。もらった時も、ブランドのボックスは部屋に置いてあるだけで気分が上がります。

涼:デパコスのリップは、持っていたら“これを塗ってがんばろう”って思えるんです。世界観が素敵で、プチプラのコスメではこうはいかないかも。

なみ:アイシャドウやリップも、シックな黒のケースにゴールドがあしらわれて、高級感が全然違います。

Z世代のギフトに選ばれるデパコスブランドとは?

 彼女たちに誕プレとして人気のデパコスブランド、さらにもらって嬉しい憧れのデパコスブランドは何かを聞いてみた。

萌:誕プレを交換し始める高校生の頃は、ネイルが多かったかもしれません。「RMK」「スリー(THREE)」や、「アナ スイ(ANNA SUI)」が人気でした。

なみ:私が最初にもらったのは、「M・A・C」のリップだった。

萌:私も「M・A・C」のリップでした!色の種類が沢山あって発色もきれいだから、プレゼントしやすいのかも?価格も3000円くらいで、高校生でも買いやすいんですよね。大学生になると、「ディオール(DIOR)」とか 「シャネル(CHANEL)」とか、憧れの高級ブランドに移行する感じです。

涼:私も「M・A・C」 のリップ、もらったことあります。まだメイクに慣れてない頃は、口紅の“キレイな色”に惹かれるんだと思う。

 「M・A・C」のリップは、どうやらZ世代の誕プレにおける定番であるらしい。アイテムでいうと、ネイルやリップは比較的渡しやすく、アイシャドウの場合は、初めて渡す時は単色カラーから贈ることが多いという。大学生になると、ラグジュアリーブランドのリップや、SNSで話題になったアイシャドウパレットが選択肢になるようだ。ちなみにアイシャドウで憧れのブランドを聞いてみたところ「スック(SUQQU)」「トム フォード ビューティ(TOM FORD BEAUTY)」「ドルチェ&ガッバーナ ビューティ(DOLCE&GABBANA BEAUTY)」があがり、驚いた。さすがに少々大人向けのブランドではないだろうか。

萌:「スック」はすごく上質な感じがします。SNSでもよく話題になってて、憧れる子は多いと思う。

涼:「トム フォード ビューティ」は、大人な感じ。憧れがありますね。

なみ:「ドルチェ&ガッバーナ ビューティ」は、歌をきっかけに有名になって、知ってる人が多いと思う。パッケージも可愛くて、貰うと気分が上がりそう。

 ことギフト用のメイクアップ製品に限っていうと、価格や対象年齢は関係なく「上質なもの」がZ世代の琴線に触れるようだ。「トム フォード ビューティ」や「ドルチェ&ガッバーナ ビューティ」は、洋服や小物は買えないけれど、コスメなら手が届く範囲で、世界観を楽しむことが出来る。さらにギフトとして贈る以上、ブランドの知名度は絶対必要とのこと。

なみ:友達に、あるブランドのアイシャドウをあげたら、そのブランドを知らなくて“えっ?”という反応でした。それなら「ディオール」とか「シャネル」とか、誰もが知っている憧れブランドのほうが良かったかなと……。有名ブランドなら何でもいいわけではなくて“おしゃれなイメージがあること”も大事です。

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