ファッション
連載 マリエが本音で語る「私の33年目のサステナブル」

京都府亀岡市で出合ったローカルサステナビリティ マリエが本音で語る「私の33年目のサステナブル」Vol.32

 以前もコラムでお話したが、私の活動の中で大切なことの一つは、現場に足を運ぶことだ。工場や職人さんに会える機会があれば、すぐに行動する。工場の環境やモノ作りに感動することは常々。現場で見つけた素材のゴミや不用品を見つけ、サステナブルなアイテムを新しく作るきっかけを掴むことも多い。

 ブランドデビューから、全国の現場を回るファッションツアーを決行したり、地域の信用金庫などに協力していただき鞄産業の聖地、豊岡市でアイテムの生産をスタートさせたりは、いずれもサステナブルな社会を目指す上で大切なこと。ファッションにおける分散型社会を目指すアプローチとはなんだろう?と日々模索している。

 今回私が出合った亀岡市の活動も素晴らしかった。「環境問題に意識を向けた面白い場所があるから」と簡単な説明だけ受けてたどり着いたのは、京都府の市街地から30分ほどの場所にある亀岡市。2018年12月に「かめおかプラスチックごみゼロ宣言」を発表し、さまざまな取り組みがスタートした。

 豊かな自然あふれる古き良き街並みの中で出合ったKIRI CAFE(古民家を京都芸術大学の学生と一緒に改修した、かめおか霧の芸術祭の拠点でカフェを備えた文化芸術活動交流スペース)は、地域の食材を大切に使ったフードを提供するほか、隣接する古民家では「ホズバッグ(HOZUBAG)」というサステナブルなバッグを製作していた。「ホズバッグ」は、安全基準によりリユース不可となったパラグライダーからできる、地上資源として循環させるプロジェクト。回収・解体・パーツの製作をここ亀岡市の大きな古民家で行っていた。資源が循環する社会を目指すとともに、地域の活性化、福祉貢献にも取り組むことを目指し、地域の雇用も生み出している。

 文化芸術活動が環境問題の解決の現場になっていることの素晴らしさにアートやひらめきの意味を感じた。軍服を解体してアイテムを作る私は、安全基準が高かったモノに由来する素材の良さと、丈夫さゆえの解体の苦労を知っていたため共感。”消化資材”として考えるのではなく、”永久資材”と捉える大切さを改めて理解した。

 しかもデザインがかわいい。それもそのはず。事業の構築は、発起人であるファンション・レーベル「シアタープロダクツ(THEATRE PRODUCTS )」の武内昭デザイナーが企画・デザイン、生産、販売オペレーションまでを担当している。この活動を積極的に広げ、更なる地域の活性化や交流のために活動を続ける彼らのアンティークのような古民家のスタジオには、ミシン数台と行き場のなくなった色鮮やかなパラグライダーの数々が大量に並び、まるで美しいカラーパレット。「空を飛びたいという人間の願いを叶えるのに、こんなにゴミが出てしまうのか?と少し考えてしまった。ならば、少しでも無駄にならないように使ってきたい。

 紐や他のパーツもアイテム化できそうな素材ばかりだったので、今後「「パスカル マリエ デマレ(PASCAL MARIE DESMARAIS)」でも取り入れていきたい。

 昨今、各地域の芸術コミュニティでサステナブルマインドあふれるアートワークやモノづくりが広がっている。コミュニティがムーブメントに変わるのもそう遠くないのでは?ファッション界もサステナブルマインドにどんどん舵を切っていきたい。

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