ファッション

デジタルプレゼン&日本でのランウエイはシステムからの脱却でさらに自由に【徹底解説・2022年春夏コレクションリポート】

有料会員限定記事

 デジタル・プレゼンテーションは、堰を切ったかのごとくリアルショーにカムバックしたニューヨークとミラノのブランドを中心に「ランウエイをライブ配信する」というシンプルな表現方法が主流となった。一方で各国のブランドが集うパリコレ、コラボプロジェクト「モンクレール ジーニアス(MONCLER GENIUS)」などは引き続き、さまざまな場所で撮影したムービーをデジタル配信。ミラノと上海でのランウエイを配信した「プラダ(PRADA)」、パリでのファッションショーの上映会を同じ時間にアブダビやソウル、日本などで催した「エルメス(HERMES)」、リアルショーの様子を架空のTV番組に組み込んで放映した「コーチ(COACH)」など、“コレクション発表のOMO”に挑戦したブランドもあった。

 コロナを機に既存のフォーマット、つまり「パリを頂点とする世界の主要都市で」「半年先のコレクションを」「半年おきに発表し続ける」という“当たり前”を再考し、「(コロナの 影響も大きいから)自分たちの街など好きなところで」「今一番見せたいコレクションを」「今回は、この方法で発表してみる」というムードが広がり、それが服作りそのものやコミュニケーションの進化を促している。「服作りそのもの」が進化したのは、「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」。「服作りの意図」さえ「不要と思うようになった」と言う川久保玲は、直感的かつ即興的なクリエイション。変わらず一般的な洋服の形を超越し「コム デ ギャルソン」らしいが、「意図」さえ不要と捨てたため、これまで付きまとっていた畏怖を伴う迫力などから解放され、シンプルに「強く」なった。

 既存のフォーマットから完全に脱却したベストブランドは、「バレンシアガ(BALENCIAGA)」だ。映画のプレミア上映のために来場したセレブが身にまといレッドカーペットの上でパパラッチされた22年サマー・コレクション(22年春夏プレに相当)は、上映された「ザ・シンプソンズ(The Simpsons)」の映画と共に全世界を駆け巡った(登場人物の洋服は、22年サマーとは異なっている)。映画を見に来たセレブが実際は見られる対象だったり、日常生活を送る映画のキャラクターが日々に寄り添うラグジュアリーを標榜する「バレンシアガ」の洋服をまとっていたり、そもそも「ザ・シンプソンズ」という媒介を通してファッションが他のカルチャーと交差したり。確立されているからこそ融合しきれないラグジュアリーの世界の「壁」の完全なる瓦解を感じさせた。

 インドのホーリー祭に着想を得て大胆な色と感情の爆発を表現した「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」、ブータンの女性の清らかな心に刺激を受け神々しい精神の世界を形にした「ジュンヤ ワタナベ(JUNYA WATANABE)」、細田守監督の最新作「竜とそばかすの姫」のアニメーションの世界でCGのアバターモデルがランウエイを歩いた「アンリアレイジ(ANREALAGE)」などは、パリではショーを開かなかったが「それでも」、もしかしたら「だからこそ」、ファッションの新たな可能性、「希望」を見せてくれた。

MONCLER GENIUS x コレクションの記事

関連タグの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

“カワイイ”エボリューション! 2026年春夏ウィメンズリアルトレンド特集

「クワイエット・ラグジュアリー」の静寂を破り、2026年春夏のウィメンズ市場に“カワイイ”が帰ってきました。しかし、大人がいま手に取るべきは、かつての「甘さ」をそのまま繰り返すことではありません。求めているのは、甘さに知性と物語を宿した、進化した“カワイイ”です。「WWDJAPAN」12月15日号は、「“カワイイ”エボリューション!」と題し、来る2026年春夏シーズンのウィメンズリアルトレンドを徹…

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。