ファッション

海外メゾンを離れ、独自路線を行く若きデザイナー 「タイガタカハシ」の“時代を超える服作り”

 26歳の高橋大雅デザイナーが手掛ける「タイガタカハシ(TAIGA TAKAHASHI)」は、ビンテージウエアをベースに、付属やディテールをアレンジして現代生活に再提案する“時代を超越した服作り”が特徴のブランドだ。2021-22年秋冬は、乗馬を前提にしたバックプリーツと腕を前にふったシェイプを持つ1920年代アメリカのサックコートや、1940年代のイギリス郵便局員のコートとアメリカのワークジャケットを融合させたアイテムなどがそろう。ジャケットは4〜8万、コートは約12万円、パンツは4〜5万円で、今シーズンは立ち上がりから数週間で消化率70%を超えるアカウントもあるなど、順調な滑り出しとなった。ラグジュアリーECサイトのエッセンス(SSENCE)やスーパー エー マーケット(SUPER A MARKET)、渋谷の吾亦紅、神奈川・厚木のマスマティクス(mathematics)など8店舗で扱われ、22年春夏からは国内外合わせて22店舗に拡大する。今年12月には京都に初の直営店をオープン予定だ。

 デザイナーの高橋大雅は1995年生まれ。中学卒業後に渡英し、ロンドン国際芸術高校(International School of Creative Arts)とセント・マーチン美術大学(Central Saint Martins BA)でアートやウィメンズウエアを学んだ。メゾンブランドでアシスタントデザイナーも務め、トレンドの第一線で活動していた。そんな彼が、なぜ現在の服作りに行き着いたのか。海外生活からデザイン哲学の変化までを聞いた。

WWD:はじめに、ファッションを志したきっかけを教えてください。

高橋大雅デザイナー(以下、高橋):小さいころから物を作ることが好きで、芸術の世界に憧れがありました。美しいものに強烈に引かれる性格で、自分に合った表現方法を模索した結果、ファッションに落ち着きました。

WWD:15歳でイギリスへ渡ったのはなぜ?海外と日本では教育方針にどんな違いがある?

高橋:中学までを日本で過ごすうちに、同調圧力や周りに合わせないと生きていけない空気が嫌になったんです。そんな中、セントマーチンズが芸術の視点からファッションなど幅広い領域を学ぶサマーコースを実施しているのを見つけて、すぐにロンドンに行くことを決めました。2010年は、キャンパスがまだチャーリングクロス(現在はキングスクロスに移転)にあったころです。

WWD:言語の壁はなかった?

高橋:英語は話せませんでしたが、クリエイティブな作業では文化と言語の壁を超え、多様な国の人とつながることができました。その時、「今後の人生を海外で過ごそう」と決意してそのままロンドンの高校に入学し、大学はセントマーチンズに入りました。

WWD:卒業後、コレクションにも参加するメゾンで経験を積むが、それぞれのブランドでどんな業務を担当した?

高橋:セントマーチンズでは2年生と3年生の間、1年間ギャップイヤーを取ってインターンシップをする制度があります。もともとアントワープでも仕事をしてみたいと思っていて、ダメ元で履歴書とポートフォリオを送ってみたら、すぐに面接したいと言われ、アントワープに移住してインターンがスタートしました。主にウィメンズウエアのデザインで、ドレーピングや3Dデザインを担当し、スケッチだけじゃなく、手を動かして造形するクチュールとテーラリングを掛け合わせた視点で服づくり学びました。その後、“女性が作る女性のための服”に魅力を感じ、ロンドンのメゾンでもウィメンズウエアのデザインアシスタントを務めました。

WWD:トレンドを追求するメゾンから一転し、「タイガタカハシ」では過去の洋服を現代に再現させるコレクションを制作している。服へのアプローチが全く異なるが、心境にはどんな変化があった?

高橋:自分が何をしたいのか自問自答した結果、常に新しいものを提案するだけでなく、過去の遺物に真の美しさを見出すことも伝えたいことに気づきました。10代からいろんな国々のアンティークディーラーや古美術商を通じて70~100年以上前の服を収集するほど古着が好きで、その“コレクション”を通して、現在もしくは未来にも存在する衣服を研究したいと思ったんです。それに、ストレスのないコンフォートゾーンにいると、本当にしたいことに気づけないし、挑戦できない。誰かの真似ではなく、自分だけの道を進もうという決意でもありました。

WWD:“時代を超える服作り”の目的は?

高橋:人々の装いは社会情勢に大きく左右されます。でも、衣服がタイムカプセルのように時間に耐えて生き残ることで、失われつつある文化や伝統を閉じ込め、過去の記憶を追体験できると考えているんです。

WWD:衣服を消費し、早いサイクルでビジネスを行う既存のファッションへのアンチテーゼも込めている?

高橋:すでにこれほど素晴らしい服がたくさんあるのだから、新しく作る意味はよく考えています。アンチテーゼになりうるビジネス規模には到達していませんし、世の中の流れに逆らうことは賢明な判断ではないかもしれませんが、自分自身に対しては正直であり続けたいです。

WWD:2021-22年秋冬シーズンは順調な滑り出しとなった。手応えや率直な感想を教えてください。

高橋:自分はただ単に服を売りたいのではなく、自分の思想や美意識を共有したい。そこに共感してもらった人たちには感謝の気持ちばかりです。

WWD:冬には京都に直営店をオープンする。ECで何もかもが買える今、リアル店舗を構える理由は?

高橋:万物に神は宿るという日本の精神性を独自に解釈し、服だけでなく彫刻や建築なども含め、自分の総合芸術として提案するつもりです。人生の半分を海外で過ごし、「日本人とは何か」を客観的に考えるようになった結果でもあります。

WWD:今後、ブランドをどう成長させていきたい?

高橋:服だけを作り続けるわけではありません。今はロンドンのデザインスタジオOK-RMとのブランディングやアートディレクションプロジェクト、香川・牟礼(むれ)とイタリア・フィレンツェでの彫刻制作、失われつつある銀塩写真の研究などさまざまな取り組みを進めています。これらの表現を通して自分の美意識の幅を広げ、自分たちにしかできない現代美術に昇華した物作りを目指していきます。

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