ファッション
連載 マリエが本音で語る「私の33年目のサステナブル」

配送で直面した、洋服の包装への気付き マリエが本音で語る「私の33年目のサステナブル」 Vol.19

昨今話題の過剰包装は、ファッションとも関係しているのでしょうか?

今回は、私のブランド「パスカル マリエ デマレ(PASCAL MARIE DESMRAIS)」が”サステナブル”と言われるようになったきっかけを紹介します。それは、私をプラスチックと向き合わせてくれた最初の出来事でした。

「パスカル マリエ デマレ」が始まったのは、今から4年前の2017年。5分も経たずに完売してしまった1型の限定Tシャツをどう配送するか?当時は、配送の仕方も知らないインディーズブランドでした。一着一着の袋詰めは、私の仕事。自宅で行い、その様子はライブ配信しました。佐川急便で送るのか?それとも郵便局に頼むのか?受け取り手にとって、一番コスパの良い方法は?そう考え思い浮かんだのは、包装でした。

生鮮食品とも違う、ファッションのお届けです。私も、憧れのブランドを購入した時は、包装の高級感にまでワクワクを覚えた一人です。ブランドのショッピングバッグは、収集するほどでした。でも、いざ自身がお客様に洋服をお届けするようになったとき、私には洋服を素敵に、豪華に包む予算がありませんでした。

そこで、紙袋を作ることにしたのです。再生紙を利用した大型の紙袋。そこにはVOCガス(編集部注:揮発し大気中でガス状になる有機化合物を含んだガスのこと)を出さない方法でロゴをプリントしました。VOCガスは、印刷工場の作業員さんに健康被害を及ぼすと聞いたからです。誰かが喜んで購入してくれたアイテムをお届けする際に誰かが傷つくなんて「何かが違う」と思った私は、少し高くてもその方法に意味があると思い、予算は少ないながら制作をお願いしました。

すると、お願いした枚数よりはるかに多くの紙袋が届きびっくり!「予算オーバーだ!! 」とゾッとしたくらいです。印刷工場が「私たちの健康を考えてオーダーしてくれたことが嬉しかった」と、感謝の気持ちを込めて特別に多く納品してくれました。その日のことは今でも、紙袋をお客様に手渡しする際に言葉で伝えています。

コストを削減しなければならない「パスカル マリエ デマレ」にとって、受け取り側にご満足いただきつつも、リーズナブルな包装にするのは“戦い”のようです。大きな壁は、プラスチックのビニール包装。一枚一枚包むのが常識なのだと知りました。Tシャツを包装するために購入した100枚のプラスチックビニール袋は、持ってみると結構ずっしり……。1枚のプラスチック袋は、5~8gでした。せっかく思いを詰め込んだ紙袋を制作したのに、”あたりまえ”にとらわれ、ビニール袋を購入してしまったことを後悔したんです。

そこから、私たちの新しいジャーニーが始まりました。環境に配慮した洋服づくりをどれだけ努力しても、届けるときも負荷をかけてはならない。もちろん受け手のお客様の理解も大事ですが、私たちの配慮も必要です。そこで私たちは、

・買ってすぐ捨ててしまう資材は、極限までサステナブルに!
・まずは下げ札!
・“えのき”(下げ札を下げるために用いるプラスチック)は使わず、廃棄される予定だった紐を使用
・過剰包装を避け、包みは紙、再生紙、バイオビニールに変更
・納品時の段ボールは二次使用。オリジナルのビニールステッカーも廃止

を決めました。ファッション業界は、捨てるためだけに使用され続けるプラスチック問題に向き合うべきなんです。

今、「パスカル マリエ デマレ」のお客様は、そのほとんどが包装を拒否してくださいます。いつも「なにか袋に入れますか?」と伺いますが、ほぼみんな「いらないです。それがポリシーでしょう?だから好きです」って答えてくれます。一応、紙袋は用意していますが、誰も欲しがりません(笑)。そんな方々にはいつも、「ありがとう」という感謝の気持ちを込めて商品をお渡ししています。

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