ファッション

ロンハーマンなど21-22年秋冬メンズ展を“浦島太郎”系新担当はこう見た

 6月1日に「セレクトショップ(メンズ)」担当を引き継ぎ、さっそく3つの展示会にお邪魔した。長く雑誌に携わっていたせいでセレクトショップの(だけでなく)展示会は、“SAY HELLOの場”との認識もあった。だから“取材頭”で訪れるのは初だ。5年以上ぶりだったり、展示会には初めて訪れる業態もあったり。そんな“浦島太郎”状態の新担当の目に、2021-22年秋冬展がどう見えたかお伝えしたい。

シンプルな男服に機能性や高級感をトッピング

 まずはサザビーリーグ傘下のエストネーション。展示会は東京・銀座にあるエストネーション セントラルの3階で行われ、ディスプレーされたのは主にオリジナルブランドだった。シーズンテーマは“ラグジュアリー オブ エストネーション”。ジャケット&パンツを機能的な素材やカッティングで再構築したり、カシミヤなどの天然高級素材を使った飽きずに着られそうなアイテムを展開していたり。実はこのあたりの提案って、10~15年ほど前に僕を含めた当時のファッション誌関係者ががんばって啓蒙していたことだったりします。そのときに植えた種が、それなりに長い時間を経て、花を咲かせ実を付けたのだなぁ……と勝手にしみじみ感に入ったり。メンズ服の“変わらなさ”に安心すると同時に、ファッションがいつの時代も楽しいものであるために、われわれメディアは次なる種をせっせとまかなければならない!と、これまた勝手にふんどしを締め直したのでした。

“アメリカ西海岸 meets 東海岸”って、ええやん!

 エストネーションをあとに(突風で傘をひっくり返されながら!)向かったのは、千駄ヶ谷のサザビーリーグ本社ショールームで行われたロンハーマンの展示会。「WWDJAPAN」のデニム担当でもある僕は、コロナ以前、ロンハーマンがセレクトするジーンズブランドのデザイナー来日時にインタビューを行っており、比較的なじみのあるセレクトショップの一つだった。ただ、展示会を見るのは相当に(最後がいつだったか分からないほど……)久しぶり。

 第一印象は、“日本における先駆者として、変わらずアメリカ西海岸スタイルしている”。プレス担当者も「はい、変わりません」と笑う。そんな中、異彩を放っていたのがアメリカ東海岸を代表するブランドである「ブルックス ブラザーズ(BROOKS BROTHERS)」とのコラボカプセルコレクションだ。これまでアイテムベースでの取り組みはあったものの、カプセル化するのは初だとか。コートやパンツも展開する中、アメリカントラッド好きな僕が気になったのは、「ブルックス ブラザーズ」がオリジンである“ポロカラーシャツ(ボタンダウンシャツ)”。いまはなき米国の生地メーカー、ダンリバー(DAN RIVER)の生地で、「ブルックス ブラザーズ」のマディソンフィット(ゆったりフィット)を別注していた。しかもタグには“MADE IN U.S.A.”の文字。んん?でも「ブルックス ブラザーズ」は昨夏、アメリカにある工場を全て閉鎖したはずでは??これは、裾に「インディビジュアライズド シャツ(INDIVIDUALIZED SHIRTS)」のタグを発見して納得。「インディビジュアライズド シャツ」は1961年創業の米国のシャツメーカーで、長く「ブルックス ブラザーズ」のカスタムシャツを受注・製造していた。今でも、ニュージャージー州の工場でモノ作りを続けている。そして縁の下の力持ちだった「インディビジュアライズド シャツ」のタグが、主役である「ブルックス ブラザーズ」のシャツに付くのはこれが初。このマッチング感に、とても“セレクトショップしてる!”と感じた。惜しむらくは7つボタンであること。6つボタンなら襟のロールがいっそう美しく……とこれは長くなるのでやめておこう(笑)。ロンハーマンは8月末、展示会同様のディスプレーでカプセルコレクションを店舗でコーナー展開する予定だ。

ベイクルーズの圧倒的ポートフォリオに心地良い疲労感(笑)

 後日、ベイクルーズの展示会に。同社が本社を構える渋谷キャストは、ツイードランの際に階段に並んで集合写真を撮ったものの、ビル内に入るのは初めて。まずは業態数の多さに圧倒され、各ブースで「5分ほどでダイジェストだけ教えてください……」とお願いしたのに、3時間ほど滞在してしまった(笑)。

 核であるジャーナル スタンダードとエディフィスは、それぞれのアイデンティティーであるアメリカとフランスにあらためてフォーカス。2業態とも“ワーク”“ミリタリー”“トラッド”といった男服の三原色とも言える不変のテーマで構成していた。ある関係者は「紆余曲折の末にたどり着いた現時点での答え」と謙遜するが、いえいえ、どうぞ胸を張ってください。

 ほかにもエディフィスから派生した417 エディフィス、同様の出自のジャーナル スタンダード レリューム、レショップ、ETS.マテリオ、ウィズム、パルプ、パリ・サンジェルマンFC、ジョイントワークス、オリエンス ジャーナル スタンダード、アンフォロー……と情報の渦に飲まれつつ(笑)、楽しく濃密な時間を過ごした。特記事項もあり、そちらは別途まとめるつもりだ。

 いずれのセレクトショップも、自分らしさを見つめ直し(おそらくは、それこそが武器である!と再認識し)いっそう研ぎ澄ませていた。SPA化するにせよ、仕入れを強化するにせよ、日本式セレクトショップが生き残るためには、とても大事なステップであり、コロナによる一時停止状態が再考する時間を与えてくれたのかな?なんて考えた。新担当として、またオールドファンとして引き続き応援したい。

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