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19世紀の資本論と、2021年6月公開の映画 エディターズレター(2021年5月14日配信分)

※この記事は2021年05月14日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

19世紀の資本論と、2021年6月公開の映画

 思考なき労働を続けると、元来こちらの方が大事なハズの人と、彼らが生み出すモノの価値が逆転してしまうと説いたのは、資本論でお馴染みのマルクス。以来、思考の源泉となる「情報の共有」や「説明」は怠らないよう努力しているつもりですが、とはいえなかなか難しいですね(笑)。新体制となった編集部ではプリントメディアとデジタルメディアの作り方を大きく変更。その概念についてはちゃんと説明したつもりでしたが、完璧なシェアにはまだまだ至らず、です。究極、「完璧なシェアなんてできるのか?」なんて思い始めてしまい、時には思考がグルグル回転しています。

 そんな中、1本の映画を一足早く拝見させていただきました。「トップショップ」で栄華を誇ったフィリップ・グリーン卿を題材にした「グリード ファストファッション帝国の真実」です。「グリード」というタイトル通り、主役のマクリディ卿が終始強欲でイヤなヤツすぎるのですが、私にとって印象的だった場面は、マクリディが値下げをゴリ押ししたがゆえ、売り上げを維持するには数を作るしかなくなり、結果、1着あたりの縫製のスピードアップを求められた工場で働く女性たちのシーン。マルクスが指摘した通り、「思考なき労働(この場合は、思考が許されない労働、と言えます)」の結果、“数十ポンドのスカートの方が価値アリ”となんなら自分さえ思い込んでしまっている感がある女性たちの労働を表現したシーンでした。

 マルクスは上述の、「なんなら自分さえ、自分よりモノの方に価値がある」と思い込めてしまう、行き過ぎた資本主義の弊害を説いたのだと理解しています。そして、そんな世界は本当に悲しい。ならば私にできることは?改めて「情報の共有」や「説明」だと思ったのです。

 てな具合に、ゴールデンウイークは19世紀の書籍と、20世紀に芽生えたファッションシステム、そして21世紀の組織論について思いを馳せました。ファッションとビューティ、プリントとデジタル、さらには150年強を行ったり来たり。どうやら私は、つくづく行ったり来たりがスキみたいです。

 余談ですが、「グリード」ではマクリディの誕生日を祝うために、ギリシャのミコノス島にコロッセオを設け、呼び寄せた数百人に神話の時代を思わせる洋服を着せてパーティ‼︎なんてシーンがあります。10年前の私なら正直、「すげぇ‼︎楽しそう‼︎」って思ったでしょう。それが今は、映画を見ながら「なんたるムダ‼︎」と思ってしまう。感覚がつくづく変わったんですね。

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