ビューティ

「ゴウトゥデイシェアサロン」の2人のトップが目指す“クリエーターが輝けるプラットフォーム”とは 【ネクストリーダー2021】

 2017年11月に東京・原宿に1号店をオープンしたフリーランス美容師向けのシェアサロン「ゴウトゥデイシェアサロン(GO TODAY SHAiRE SALON)」(以下、「ゴウトゥデイ」)。“シェアサロン”とは、フリーランスの美容師が、施術スペースを借りてサロンワークを行う美容室のこと。借りるスペースは仕切られた個室となっていて、基本的には一人の美容師がマンツーマンで接客するので、“個人経営のサロンが集まった大きなサロン”ともいえる。同サロンの経営を担当する大庭邦彦代表と、フリーランス美容師として現場を管理する大池基生取締役兼代表美容師が今回、ファッション・ビューティ業界の次世代をけん引する「WWDJAPAN NEXT LEADERS 2021」に選ばれた。そんな2人が抱くビジョンとは。

WWDジャパン(以下、WWD):「ゴウトゥデイ」をオープンしたきっかけは。

大池基生取締役兼代表美容師(以下、大池):われわれ2人は、ともに美容室業界がバックボーンにある。私は都内の美容室で9年間、美容師として働いていた。しかし、きつい、給料少ない、休日少ないといういわゆる“3K”で、16年に独立してフリーランスになった。そして当時としてはまだ珍しかったが、知人の美容室の一席を借りてサロンワークを行う“面貸し”という形態で働き始めた。すると、“お客さまとしっかり向き合えている実感が持てた”“考えたことをすぐに行動に移せるようになった”“収入も自由な時間も増えた”といいことばかりで、「この働き方をもっと広めたい」と思っていたときに大庭と出会った。

大庭邦彦代表(以下、大庭):私は前職でヘアサロン検索サイトを運営していたが、そのときから「もったいないなぁ……」と思っていた。美容師にはやる気のある人や高いクリエーティビティーを持った人が多いのに、古い業界であるだけに、いろいろと締め付けがあって輝けていない。ところが大池のように、環境や働き方を少し変えるだけで伸び伸びと輝ける美容師がいると分かり、それならば一緒にプラットフォームを作ってしまおうと思った。その試みは美容師のニーズをとらえていたようで、現在は都市圏を中心に20店舗以上を展開し、350人強の美容師(アイリスト、ネイリストも含む)が登録している。近々にさらに3~4店舗のオープンも決まっており、24年までに60~70店舗の展開を目標にしている。

WWD:躍進の理由は。

大池:時代背景によるところが大きい。私がフリーランスで働いていた頃までは、集客は美容室が行っていた。そのためフリーランスには“美容室から外された美容師”“ついていけなかった美容師”というかなりマイナスのイメージがあった。ところがSNSが急速に発達し、今や美容師が個人で集客できる時代。美容室での働き方に縛られる必要はなく、自由な働き方を選択できるようになったため、シェアサロンの成長は“必然”だと思う。実際、当サロンに登録している美容師には、飲食店、ジュエリーデザイナー、ユーチューバーなどパラレルキャリアで働いているスタッフも少なくない。フリーランス美容師に対する評判も、“自由でいい”“今の時代にマッチしている”などと一気に逆転した。

大庭:当サロンに登録している美容師の中には、大池のように「この働き方をもっと知ってもらいたい」と思う人も多く、現在の運営スタッフの約半数が元美容師だ。登録者に関しても、美容師にとどまらず、アイリストやネイリストの利用も増えているため、東京・青山にアイとネイルの専門サロンを作った。現在は登録技術者の枠が埋まってしまったため、2店舗目の出店を計画している。今後も、あらゆるビューティシャンを対象にビジネス展開していきたい。

WWD:現在の課題は。

大池:まずは“場所を提供するだけのビジネスからの脱却”を目指している。そのための施策として、1月に会計などができるオリジナルアプリをローンチした。今後はさらに、予約や経営管理などの機能も充実させていき、“ハサミとアプリさえあればどこでもサロンワークができる状態”にまで持っていきたい。ハードを提供しているだけでは優位性を築けないので、ソフトも充実させ、総合的かつ包括的に技術者をエンパワーメントしていきたい。

大庭:女性美容師がもっと輝ける仕組みを作りたい。現在の美容室業界は、美容学校を卒業したときには女性の方が多いのに、年齢を重ねるにつれてどんどん女性美容師が辞めていく、という状況にある。30歳までに女性美容師の約9割が辞める、というデータもあるほどだ。もちろん“結婚や出産といった女性ならではの事情がある”“体力的にきつい仕事で続けにくい”といった、よく言われている理由もあるだろうが、私は“女性の方が冷静に物事を見れるから”だと考えている。思いや熱さで走る男性とは異なり、女性は冷静に“続けていく価値のある仕事かどうか”を分析できる。シェアサロンの仕組みを通して、その分析でも“美容師は年齢を重ねても続けていく価値のある魅力的な仕事”と思ってもらえるようにしていきたい。

WWD:10年後の目標は。

大庭:シェアサロンは、シェアオフィスやシェアハウスと比べると、まだまだ知名度が低い。もっと生活に寄り添い、まるで水を使うようにシェアサロンを利用してもらえるようにしていきたい。さまざまな技術者が集い、利用者が日常的に訪れる、本来の意味での“サロン”にすることが目標だ。

【推薦理由】
これまで美容師は独立する場合、サロンの開業もしくは他サロンの面貸しの2択しかなかった。「ゴウトゥデイ」の登場により、低価格で施術スペースを借りることができるようになり、独立や兼業をしやすくなった。働き方の自由が大きな課題とされてきた美容室業界において、2人は新たなワークスタイルを提供。美容師だけでなくネイリストやアイリスとにもスペースを貸し出し、異なる業界にも新たな働き方を提供している。予約や物販などのサポートを行うアプリも開発し、ヘアサロン業界のDXを率いる存在として期待が高まる。

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