ロドリゴ・バザン=トム ブラウン最高経営責任者 PROFILE:1975年、アルゼンチン生まれ。グッチグループの要職と、マーク ジェイコブス インターナショナル LLCでバイスプレジデント兼ジェネラル・マネジャーを歴任し、2010年12月にアレキサンダー ワン初の社長に就任。16年5月から現職 PHOTO BY TSUKASA NAKAGAWA
米トム ブラウン社は昨年3月、米国投資ファンドのサンドブリッジ・キャピタルと資本提携を結び、ストライプインターナショナルのグループ会社だった以前から経営体制を一新した。現在、同年5月に就任したロドリゴ・バザン(Rodrigo Bazan)最高経営責任者(CEO)が中心となり、グローバル戦略を推進している。16年末から北京、ニューヨーク、ミラノ、ロンドンなど12カ所に出店し、直営店舗数は26店に急増。会社全体の売上高は前年の同時期に比べて25%増となった。今後も中国や韓国、そして日本にも出店する予定だという。さらに8月に本格始動した自社ECの強化や、ウィメンズの発表をニューヨークからパリに移した理由、パリのセレクトショップ、コレット(COLETTE)2階で行われているポップアップストアについてバザンCEOが語った。
WWDジャパン(以下、WWD):昨年5月に現職に就任した際のミッションは?
ロドリゴ・バザン(以下、バザン)CEO:最大のゴールは、ブランドのDNAを失わずに成長させること。そのために皆でアイデアを出し合って、デジタルやマーケティング戦略を練ることに集中した。これまで顧客に対しての直接的なアプローチが十分できていなかったので、まずは出店やECで世界中に拡販することからスタートした。
WWD:積極的な出店は今後も継続させる?
バザン:日本も含めて出店を計画しているが、昨年末からのペースに比べると、来年はやや抑えめになる。その分、既存店の強化に注力したい。また8月からホームページ内にECモール「ファーフェッチ(FARFETCH)」のプラットフォームを導入してECを本格始動した。将来的にはECの取り扱いアイテムをプレコレクション1600点、ランウエイピース500点程に拡充する予定だ。現在は店舗でしか見られないアイテムも多いが、実現すればほとんどのコレクションを世界中の人がECで購入できることになる。
WWD:「トム ブラウン」の絶妙なサイズ感をECでどう提案する?
バザン:確かに、オンラインで「トム ブラウン」のサイズ感を提案するのは簡単なことでない。しかし大事なのはまずプロダクトのイメージを世界に発信すること。その後、ジャケットのフィット感やパンツの丈感をデジタルで表現することに挑戦しなくてはならない。
PHOTO BY KIM WESTON ARNOLD、GIOVANNI GIANNONI / WWD(c)Fairchild Fashion Media
WWD:ウィメンズ発表の場をニューヨークからパリに移した理由は?
バザン:ウィメンズのビジネスを拡大するためだ。販路拡大と合わせて、今後はヘルシーなバランスのビジネスを行うためにウィメンズを強化していく。現在の売上比率はメンズ7割、ウィメンズ3割だが、今後はメンズと同じ規模まで成長させたい。パリには世界中の有力ショップのバイヤーやプレスが集まるので、発表の場をパリに移すのは自然な流れだった。
WWD:パリコレ期間中にコレットで大規模なポップアップストアも始まった。
バザン:ポップアップストアを開催した目的は、メンズとウィメンズを1フロアに並べてブランドの世界観を訴求することだ。コレットのサラ(サラ・アンデルマン=クリエイティブ・ディレクター)から約9カ月前に連絡がきて、10月のパリコレ期間中にやりたいとリクエストした。2018年春夏コレクションが世界最速で並び、250点程の限定アイテムも取り扱う。
WWD:グローバル化を急速に進めているが、生産体制は?
バザン:生産地を増やすことは考えていない。プロダクトごとにベストな産地を選ぶ現在の体制を継続する。より多くの人に「トム ブラウン」のクリアなDNA“トムネス”を届けるためには、アイテムのクオリティーを維持するパッションが大切だ。これまで同様、日本の二戸サントップやファッションしらいしのように、優れた技術をもっている企業との取り組みを続ける。これまで数々のブランドでキャリアを積んだが、過去は忘れて新しいことに挑戦するのが私のモットー。チーム一丸となって、「トム ブラウン」らしいやり方でビジネスを拡大させたい。