7月17日からアマゾン(AMAZON)の「プライムビデオ(Prime Video)」で世界独占配信がスタートしたドラマ「犯罪者」。同作は太田愛の同名小説を実写化したもので、通り魔事件を軸に、高橋一生が演じる刑事の相馬亮介と、水上恒司が演じる事件で唯一生き残った青年の繁藤修司らが、社会の裏に潜む巨大な陰謀と見えない真相に迫っていく緊迫のクライム・ミステリーだ。作中で、社会に翻弄される2つの魂として対峙した高橋と水上。刑事と被害者という立場で相まみえた2人が、お互いに得た刺激や過酷な撮影現場の裏側、そして作品の根底に流れる社会の歪みと怒りについて、混じり気のない言葉で語り合う。
役柄を通じて見つめる
「誠実さ」と「未熟さ」
——今回、高橋さんが演じる相馬は志の高さゆえに孤立してしまう刑事、水上さん演じる修司は理由も分からず命を狙われる青年という役柄です。それぞれ演じる上で、キャラクターに対して感じた魅力を教えていただけますか。
高橋一生(以下、高橋):普通の人ならスルーしてしまうようなことまで、深く考えてしまうところです。相手にどういう印象を植えつけてしまうかといったことをきちんと考えた上で、人間関係を築こうとする。それは現代社会において、非常に生きづらさを抱えてしまうということでもあります。しかし、その「誠実さ」のようなものが今の世の中の大半には受け入れられていないという現実こそが、逆に相馬のパーソナルな魅力を引き立てていると思って演じていました。
水上恒司(以下、水上):修司は20代半ばで、世間的には十分な大人として扱われる年齢ですが、本当に成熟する前から「大人」として振る舞わざるを得なかったがゆえの未熟さと、過去の経験による大人びた部分が同居している役でした。大人でいなければいけないけれど、まだ子どもの部分が残っていて、それを隠そうとする。そこは自分自身にとても似ていると感じました。そんな風に大人ぶろうとしていた修司が、相馬や鑓水(斎藤工)との出会いによって、だんだん等身大の素の自分に戻っていく。そこが彼の魅力だと感じましたし、大切に演じていました。
——高橋さんは松永監督に「普通の刑事ものではないですよね」と確認されたそうですが、刑事役を演じるにあたって特に目指していたものや、表現したかったことがあったのでしょうか。
高橋:刑事の目線という主軸だけで物語を追ってしまうと、ともすれば一極的な善悪の二元論や、その反転構造に陥りがちです。そういう作品もエンターテインメントとして必要ですが、今作はそうした二元論にとどまらない「外部の目線」が重要になってきます。恒司さん演じる被害者の修司、斎藤工さん演じる記者の鑓水、そして僕が演じる刑事の相馬という、3つの視点で話が進んでいくんです。ただ、警察の描写は当然出てきますし、公的な捜査の力を借りる場面もあるため、どうしても従来の「刑事モノ」になってしまう危険性を孕んでいるのではないか、と感じていました。
だからこそ、(松永)大司さんと最初に話した際、「これは非常に広い意味での、従来の刑事ドラマ的なものになってしまうことはないですよね」と確認させていただきました。それがやりたくないという意味ではなく、この作品において刑事の目線だけが強く出すぎてしまうと、僕たちが本当に考えたかったテーマが矮小化されてしまう恐れを感じたからです。監督から「そういう方向性ではないから大丈夫」と言っていただけて、非常に納得しました。
年齢を超えて「幸せな気分」になれる関係性
——水上さんは、出演の決め手として高橋さんや斎藤工さんの存在を挙げていらっしゃいました。実際に濃密な撮影期間を経て、改めて高橋さんのすごみを感じたエピソードがあれば教えてください。
水上:まだ完全には紐解けていないんです。一生さんから出てくる言葉はどれも思慮深く、「高橋一生さんはこういう人です」と一言では表現しきれないくらい、僕はもう虜になっています。いまだに興味が尽きなくて、いろいろと紐解いてみたいですね。でもそれは、本人から言葉で教えてもらうというよりも、ずっと家に入り込んで張り込みでもしない限り分からない(笑)。たとえその生活を見たとしても、本質までは分からないかもしれない。だからこそ、時間をかけてゆっくりと一生さんを解き明かしていきたいと思っています。
——具体的に、どのような部分に魅了されましたか。
水上:現場での一生さんは本当にすさまじかったです。今まで出会ったことのないタイプの方で、「僕が目指すべき役者の一人だ」と強く確信しました。一つの芝居、一つのシーンを作るにしても、次から次へと言葉が出てくる。僕も自分では意見を出せる方だと自負していましたが、それを遥かに上回る、想像以上に圧倒的な方でした。
——プライベートな時間を共有する中で、もう少し近づけるのではないかといった感覚はありましたか?
水上:いやいや、全然近づけないですよ(笑)。
高橋:僕は俳優の友人があまりいないんです。そもそも友人自体が少ないんですけれど(笑)。でも、恒司さんとは仲良くさせていただいていて、ふとその関係性を振り返ったときに「すっごい仲良しだな」と嬉しくなる瞬間があります。年齢は関係なく、恒司さんといるととても幸せな気分になりますね。純粋に「一緒にいて楽しいな」と思える人です。
——お二人でいる時は、やはり演技の話などをされるのでしょうか。
高橋:いえ、することはありません。「この間の現場はこうだったんですよ」「そうなんですね、僕もこういう現場ありました」といった情報交換はしますけれど、そこから深い演技論には発展しないですね。本当にたわいもない日常会話をしています。だいぶ年は離れていますが、全然普通に接してくださるので、お話ししていていつも楽しいです。
プライドをかなぐり捨てる強さと
表現者としての確かな信頼関係
——松永組はストイックな現場だったと思います。高橋さんから見た水上さんの現場での印象はいかがでしたか。
高橋:恒司さんはとても正直で、自分を取り繕うことが一切なく、作品や自分の役に真っ直ぐ向き合われている。試行錯誤する際、多くの人は「恥ずかしいと思われてしまうかも」と自分にある程度ブレーキをかけてしまいがちですが、恒司さんはそのブレーキを自覚的に外していける強さがある。だからこそ、人としてとても信頼できるんです。
プライドもすぐにかなぐり捨てて現場に入っていける。プライドを持つことはもちろん大切ですが、必要な時にそれを捨てられないと、ただのプライドの塊になってしまいます。その点、恒司さんは場面で瞬時にそれを捨てて飛び込んでいける。現場の状況や物事にこれほど柔軟に対応できるというのは、なかなか真似できることではないので、現場にいてくださって本当に頼もしかったです。
若くて、ここまで裏表なく作品や役に対して誠実に向き合い、自覚的にお芝居の構築や作品作りのポジショニングができる俳優の方は、これまであまり見たことがありませんでした。
——撮影に入る前から、そうした関係性は出来上がっていたのでしょうか。リハーサルもかなり時間をかけて入念にされたと伺いました。
高橋:リハーサルでお芝居を合わせた段階から、非常に面白かったんです。監督も含めて全員で「ああでもない、こうでもない」と意見を出し合いました。お芝居を提示していく中で、「そのアプローチだと意図は伝わるけれど、観客の受け取り方が少しズレると誤解されてしまうかもしれないから、こういう表現にしてみてもいいかもね」といったディベートを重ねました。
それに対して恒司さんが「でも僕はこう考えていたんです」「じゃあ一度やってみます」と応じたり、「とりあえず一回これを試してみるので、意見をください」と提示してくれたり。そうした建設的な議論が、リハーサルの中で非常にスムーズにできました。だからこそ、現場に入ってからもそのモードのまま挑むことができたんです。
日を重ねるごとに毎日のように顔を合わせるので、関係性が少しずつ醸成されていった部分もありますが、最初の段階で「こういう風に接し、こういう風にお芝居を交わしていけるんだ」とお互いに理解できた。あの2週間ほどのリハーサル期間があったからこそ、深い部分まで分かり合えたのだと思います。
——水上さんは、そのリハーサルのどこに特別感や他の現場との違いを感じましたか。
水上:一生さんが別のイベントの時にお話しされていたことで、僕も本当にその通りだと思ったことがあります。自分の役を立ち上げる以前に、松永監督は「この作品はこういう質感だよね」「こういう方向性を目指していきたいよね」という、前提となる共通認識を提示し、全員で見つけようとしていたのだと思います。それは結果的に役作りにも繋がっていくのですが、その中心にいたのが一生さんと松永監督でした。
その際、一生さんはあえて「僕はこう思う。それはみなさんにこうしてほしいという意味ではないけれど、一旦、僕はこう考えているかな」と言葉にされていました。そういうプロセスを踏まない限り、全員の共通項は見えてこない気がするんです。ただ台本を読んで「そんな感じで、面白いね」で終わらせてしまっては、本当に目指すべきゴールは共有できません。今回の現場では、まさにその共通項を全員で見つけようとしていました。
「3人の点を結ぶ線は、どんな線なんだろう」と。どちらの方向からベクトルが向いていて、次の一言でそれがどうガラッと変わるのか。そういった目に見えない心の動きを面白がりながら作ろうとしていた点が、他の現場とは違う大きな特徴だったのではないかと思います。
忘却社会に下ろす「錨(いかり)」
作品構造が映し出す現代の歪みとは
——劇中では巨大企業や組織の都合で「必要な犠牲」とされていく個人が描かれます。高橋さんが演じる相馬のパーソナリティーや彼が直面する周囲との摩擦は、現代社会のどのような歪みや違和感を映し出しているとお考えですか。
高橋:相馬という役を演じたからこそより強く感じるのですが、今回の「犯罪者」における作品の構造は、この社会の構造に通ずるものが大いにあると思っています。例えば、世間を大きく騒がせた事件や、人々が激しく炎上させた事象が、いつの間にか無責任に忘れ去られていくこと。そうやって風化していく現状を単に「正す」ということ以上に、あらゆる分野やジャンルにおいて、「忘れない」という強い意志を持ち続けなければいけないと僕は思っています。相馬は警察内部で周囲から煙たがられていますが、孤立無援の中で一人、その「怒り」を抱え続けている人間なんです。それは恒司さんが演じる修司においても同様で、「これはおかしい」という違和感や、事件に巻き込まれた際に「なぜ泣き寝入りしなければいけないのか」というわだかまりとして表現されています。
それぞれが社会的な立場から違和感を大っぴらに主張するわけではなく、「自分の中で引っかかっているから、これを解消しないと前に進めない」と苦悩している。その姿に、僕は深くシンパシーを感じます。僕が見る限り、現代の多くの人は「忘れること」がとても上手なように思います。お酒を飲んで発散すれば忘れられるという人も結構多いですし、そうしなければ生きていけないという側面もあるのでしょう。しかし、「忘れる」ことの繰り返しがずっと起きている。
「忘れちゃいけないもの」や「受け継がなきゃいけないもの」は、絶対に自分の中に錨(いかり)として下ろしておかなくてはいけないと思っています。それがどれほど重しになろうが、引きずらなければならないものなんです。
——水上さん、今のお話を受けて感じたことをお聞きしたいです。
水上:これが、僕が一生さんを大好きな理由です。
高橋:(笑)。
水上:実はプライベートでも、こういうお話をしてくれるんです。今お話を聞きながら思ったのは、きっとその怒りの根底にある「痛み」ですよね。一生さんの中にある痛みに、僕はものすごく興味があるんだと思います。それがあるからこそ、今の「高橋一生さん」という唯一無二の存在があるのだと改めて感じました。
PHOTOS:TAKAHIRO OTSUJI
STYLING:[ISSEY TAKAHASHI]HIROTO TAMAKI、[KOSHI MIZUKAMI]TAKUMI NOSHIRO(TRON)
HAIR & MAKEUP:[ISSEY TAKAHASHI]MAI TANAKA(MARVEE)、[KOSHI MIZUKAMI]KOHEY
[KOSHI MIZUKAMI]スーツ 14万3000円、シャツ 2万6400円、タイ 1万9800円/全てポール・スミス(ポール・スミス リミテッド)
Prime Original ドラマシリーズ「犯罪者」
◾️Prime Original ドラマシリーズ「犯罪者」
7月17日からPrime Videoで世界独占配信中
出演:高橋一生・斎藤工・水上恒司・ユースケ・サンタマリア・MEGUMI・青木崇高・チョン・イル・井上瑞稀(KEY TO LIT)/内野聖陽
原作:太田 愛「犯罪者」(角川文庫/KADOKAWA)
脚本:櫻井武晴
監督:松永大司
ドラマ「犯罪者」の視聴はこちらから
©️PROTX







