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出口夏希 × 蒔田彩珠が語る実写映画「ルックバック」 是枝裕和監督の現場で育まれた“藤野と京本”という役を超えた2人の関係

「少年ジャンプ+」で発表された藤本タツキの青春長編読切を、是枝裕和監督が実写映画化した「ルックバック」が9月11日に公開された。藤本作品が実写映画化されるのは今回が初。漫画に打ち込む藤野と京本、2人の出会いと、かけがえのない関係、その先に待ち受ける運命を描いた物語で、第83回ヴェネツィア国際映画祭コンペティション部門にも選出された。

藤野と京本の子ども時代を七瀬ふうりと岡田六花、成長した2人を出口夏希(でぐち・なつき)と蒔田彩珠(まきた・あじゅ)が演じる。出口と蒔田にとって、是枝組への参加はNetflixシリーズ「舞妓さんちのまかないさん」以来。そんな2人に、役との共通点や撮影を通して育まれた関係、是枝監督との作品づくりについて聞いた。

実写映画「ルックバック」への出演

——映画「ルックバック」への出演が決まったときは、どう感じましたか?

出口夏希(以下、出口):原作があるのは知っていたんですけど、私は出演が決まったときに読みました。何より是枝さんともう一度ご一緒できることがうれしかったです。

蒔田彩珠(以下、蒔田):是枝監督から「この映画をやりたい」と最初に原作をもらったのが、発売されて1週間後くらいだったんです。でもそこからもう4、5年経っても現実的な話は全然来なくて。だから、お話を頂いたときは「やっと来た」という気持ちでした。そのときは相手役を聞いていなかったので、決まった段階で「夏希ちゃんなんだ」と知って、楽しみでした。

——蒔田さんは、是枝さんにどちらを演じてほしいかまで言われていたんですか?

蒔田:
監督から「これを映画化するときは京本で」みたいに言われていました。

出口:でも私も話を聞いた瞬間、「京本なんだろうな」と思ったんです。そしたら「藤野なの?」って(笑)。今まで演じた役とは違う印象で、しかもホクロもあるから、京本だろうと確信してたら藤野役の方でした。

——お二人自身は、藤野と京本のどちらに近いと思いますか?

出口:撮影中は自分に照らし合わせて考えていなかったんですけど、どっちかと言われたら、私はたぶん藤野寄りだなって。

蒔田:あの底抜けの明るさとか。ベッドに立って「今から街行こうぜ」っていうところとかね。

出口:あれは私でした(笑)。あとから考えると、負けず嫌いなところも似ているかな。あんまり外には出さないけど。

蒔田:私は京本だと思います。京本からは同じ匂いを感じます。思っていることをあんまり言わないところとか。でも内には秘めているし、好きなものに対してはちゃんと発言できる感じ。

出口:彩珠は、京本の静かであまり言えない感じとは真逆で、普段は元気だし、すごくおちゃらけていて、おちゃめなんですけど。でも芯のところではいろいろ考えているんだろうな、というのはあります。

リアリティーのある漫画を描く姿

——お二人は撮影に入る4カ月前から漫画を描く練習をしたそうですね。

出口:まずGペンの使い方からでした。最初は細い線すら出なかった。

蒔田:インクが全然、紙に乗らないんだよね。

出口:描き方を教えてもらってあとは感覚を覚えるしかなかったので、ちゃんとした、かっこいい線になるまでは本当にひたすら線を描いていました。藤野の場合は人物もあったので、人物も描いたりして。

蒔田:私は京本なので背景を描いたり、定規の使い方とか、画鋲を刺して定規を回すやり方を練習していましたね。

出口:漫画家の藤村緋二さんに教えてもらったんですけど、宿題まで出してもらって、他の撮影の合間に描いたりしていました。大変だったけど台本を覚えるより楽しい、みたいな(笑)。

——漫画を描く手元のリアリティーを出すために、どんなことを意識しましたか?

出口:ペンもいろいろ用意してもらって、その中から自分が一番描きやすいものを選んで、ずっとそれを使っていました。

蒔田:練習のときにいろんなペン軸を何本かいただいて、自分に合うもの、手の大きさに合うものを選びました。そのペンが自分に染みつくくらい練習していましたね。

出口:あと是枝さんからは、上手い下手よりも「音」のことをすごく言われました。「シャシャシャシャ」って。

蒔田:絵の上手さよりも、描いている姿や音ですね。最初はGペンの先が広がってしまう感じだったんですけど、かっこいい線が描けたときって「シャッ」って音がするんですよ。監督はその音が欲しかったんだと思います。

——ペンの持ち方も役ごとに意識したんですか?

蒔田:京本はペンの持ち方がちょっと特徴的で、監督から「それを真似してほしい」と言われたので、そこは練習しましたね。

——ちなみに、お二人自身が好きな漫画は?

出口:「クレヨンしんちゃん」に「ちびまる子ちゃん」に「ドラゴンボール」、あと「天使なんかじゃない」。

蒔田:「NANA」ですかね。世代ではないんですけど、年上の方に教えてもらって。「ホットロード」も好きです。

役を超えた2人の関係性

——藤野と京本の関係を、お二人はどう捉えましたか?

出口:子どもの頃って、あのような関係がありますよね。何も言わなくてもわかるというか。大人になってからそこまでの関係性になる人と出会うのって、すごく難しいなと思っていて。あの年代で出会ったからこそ2人の関係性があるんだな、と。私も小さい頃から地元の友達と仲がいいので、今から2人のような関係性の人と出会うのは難しいなって思います。

蒔田:一見すると藤野が引っ張っているように見えるけど、実は京本が引っ張っていたり。そのバランスは、同じものが好きで、一緒にやっているからこそ生まれるんだろうなと思います。

——撮影を重ねる中で、お二人の間にも藤野と京本に通じるような関係が生まれましたか?

出口:お芝居で何かを2人でするというより、2人でいるときの空気感とリズムが大きかったですね。2人が背中を向けてずっと絵を描いているじゃないですか。机に座っているときのあの空気感が、普段からずっと流れていた感じがします。

蒔田:是枝組だったというのもありますけど、他の現場で会っていたら、もっと違う空気感だったかもしれない。

出口:「舞妓さんちのまかないさん」のときはそこまで話せてないし、同じシーンでしかやり取りがなかったのですが、今回はプライベートでもずっと一緒にいたので、撮影を通して自然と仲良くなっていきました。お互い「ちゃん」付けするタイプでもないし、現場では役名で呼んだりして最初は名前で呼ばなかったけど、だんだん「彩珠」って呼べるようになって。

蒔田:私は最初、照れくさいながらも頑張って「夏希ちゃん」って呼んでました。でも一緒に過ごすうちに自然と「夏希」って呼ぶようになったと思います。

出口:撮影中はずっと一緒にいて作品を作っていたので、藤野と京本に近いような感覚になりました。

是枝監督の演出

——以前もご一緒していますが、改めて感じた「是枝組らしさ」は?

出口:アットホームさですね。スタッフのみなさん含めて自分の仕事をこなしながら、コミュニケーションも取れるし、みんなが笑顔。「舞妓さんちのまかないさん」のときからそれは感じていました。誰も機嫌が悪くない。是枝監督の現場だからこその雰囲気ですね。

蒔田:いつも子どもたちが楽しそうなんです。どの現場よりものびのびしていて、生き生きとしている。スタッフのみんながお兄ちゃん、お姉ちゃんみたいな感じで、かわいがられていて。それを見ているのも癒やされます。

——今回、是枝監督からお芝居についてはどんな演出がありました?

出口:細かいディレクションはほとんどなくて、「好きにやってみて」という感じで、任せてくれていました。セリフらしいセリフがない場面では、一言一言がけっこうアドリブだったり、息遣いをすごく大事にされていたので、そこは気をつけていました。

蒔田:セリフがない分、2人の空気感というか、2人の仲が重要だったのかなと思います。

——かなり俳優に委ねるんですね。

蒔田:本当にのびのびやらせてくれて、自由にさせてくれるから、演じている私もそこまで縛られずに自由にできる。監督が信じて待ってくれている、ということを信じてやっていましたね。

出口:監督はしっかりと私たちを見てくれる。中身を見てくれているということを「舞妓さんちのまかないさん」のときにすごく感じて、そのときに「続けてみようかな」って思ったんです。

蒔田:眼差しが温かいんですよね。

出口:モニターを見ている監督の顔が、ちょっと笑ってるんです(笑)。最初は何も言われないのが逆に不安だったんです。「舞妓さんちのまかないさん」のときはいろいろ教えてもらうことも多かったので、今回もいっぱい教えてもらおうと思って現場に行ったら、すぐOKが出ちゃって。「何も言われない、どうしよう。いいのかな?」って。

蒔田:それはそれで不安だよね。

出口:でも2人とも監督に聞きに行くこともなくて。監督がOKだしてくれてるから「大丈夫だよね?」って(笑)。

蒔田:私もお芝居に関してはあんまり言われなかったですね。動作のタイミングとかはたまにありますけど。

秋田での撮影の思い出

——季節をまたいだ撮影で、特に大変だったことは?

出口:季節通りに撮影していったんですけど、特に雪は大変でしたね。夏の撮影は1日くらいしかなかったんですけど、冬の雪が積もったシーンはうまく歩けなくて。

蒔田:本当に膝ぐらいまで埋まる深さで。息も切れて、転びそうになりながら、手を取り合って歩いてました。

出口:お互いに引っ張ってね。

——ロケ地の秋田では地元の方たちとの交流もありましたか?

出口:ありました。一緒にご飯を食べて、一緒にお酒を飲んで。居酒屋やご飯屋さんが遅い時間まであまりやってなかったんですけど、私たちの撮影が終わる時間に合わせて遅くまでやってくださったりして。すごく協力してくださいました。

蒔田:エビフライがおいしくて。おばあちゃんが揚げてくれるんですよ。お米とかもいただきました。

——藤野と京本の部屋も、かなり作り込まれていましたね。

出口:本当にあの世界にいる感じでした。秋田の体育館の中に組まれたセットだったんですけど、あの部屋に入ったときだけ家に帰ってきたような感じがあって。私たち自身もあまりセット感を感じなかったです。

蒔田:2人の関係性が進むにつれて、小物がどんどん増えていくんですよ。カメラだったり、サメだったり。それがよかったよね。

出口:藤野も最後まであのサメを抱えていますし。

蒔田:2人が過ごした年月を小道具で表現していて、素敵でした。

——部屋で漫画を描くシーンをはじめ、後ろ姿だけで感情を伝えるショットも印象的でした。

出口:監督からも「背中で」と言われて、返事だけはしてたけど(笑)。でも、ちゃんと気持ちが入っていれば背中にも出るんじゃないかと思っています。

子どもたちから引き継いだもの

——驚いたのは子ども時代からお二人への切り替わりがとても自然だったことです。子ども時代を演じたお二人から意識して引き継いだものはあるんですか?

出口:皆さんに言われるけど、特にないんです。単純に似てたのが大きいんじゃないかな。私も「どこから変わるんだろう?」と思っていたんですけど、「あそこのタイミングなんだ」って。すごく違和感がなかった。(七瀬)ふうりちゃんと私、なんか似てたんですよね。髪を切ってからも。

蒔田:私も(岡田)六花ちゃんとは特に何もしていないです。髪型も一緒だから、映像で観てもどこから切り替わったのか、パッとはわからなかったですね。

——中学生から大人までの成長を演じるのは大変だったのでは?

蒔田:最初は「中学生なんてできるのか」って思っていましたけど、意外と中学生でした(笑)。でも、中学生よりもっと幼い気持ちだったかな。

出口:地元の中学生の方たちにも協力していただいて、学校にも行ったんですけど、私が一番幼かったんですよ(笑)。今の子ってやっぱり大人っぽいですね。それで、すごく心配していたのがなくなりました。

——完成した作品を初めて観たときはいかがでしたか?

出口:最初、隣同士に座って観ていたんですけど、めちゃくちゃ恥ずかしかったです。初めの方は、子どもたちの世界が本当に素敵で見入っちゃったんですけど、自分が出てくる瞬間はめっちゃ緊張しました。

蒔田:わかる。恥ずかしかったよね。

出口:でも、やっぱり是枝監督の映画ってすごいなと思いました。自分を見ているというより、ちゃんとその世界がそこにあったので。観終わったあとの余韻がすごかったです。子どもたちのシーンも撮影中は見られていなかったので、愛おしかったな。

蒔田:かわいかった。どういうふうになっているのか全然想像できていなかったんですが、すごく画がきれいで。音楽もそこで初めて聴いて、すべてが完璧に一致しているなと思いました。

——最後に、ヴェネツィア国際映画祭への意気込みを聞かせてください。

出口:私たちだけじゃなくて、関わったすべてのスタッフの思いが込められた作品なので。私たちが代表として行きますけど、みなさんの思いも持っていくので、「ちゃんと伝えられるかな」ってドキドキしています。でもヴェネツィアに行けるので、すごく楽しみです。あとは……ご飯を食べたい(笑)。

蒔田:ね!おいしいご飯を食べたいです(笑)。

PHOTOS:KYOTARO NAKAYAMA(SIGNO)
STYLING:[NATSUKI DEGUCHI]AMI MICHIHATA [AJU MAKITA]MASAKO OGURA
HAIR & MAKEUP:[NATSUKI DEGUCHI]TOMOMI SHIBUSAWA(beauty direction)、[AJU MAKITA]CHIKA UENO

[NATSUKI DEGUCHI]ニットベスト 18万8100円、(中に着た)トップス 20万3500円、スカート 48万9500円、シューズ 29万3700円/全てメゾン マルジェラ(マルジェラ ジャパン クライアントサービス 0120-934-779)、ピアス(片耳販売)各 1万7600円、ブレスレット 1万6500円/共にマリア ブラック(マリア ブラック 表参道店 080-4009-2020) [AJU MAKITA]トップス 3万800円、パンツ 19万8000円、ベルト 2万4200円/全てアカネ ウツノミヤ(アカネ ウツノミヤ 03-3410-3599)、その他スタイリスト私物

作品概要

◾️実写映画「ルックバック」
2026年9月11日から公開中
出演:出口夏希 蒔田彩珠
七瀬ふうり 岡田六花
野呂佳代 池田良 佐々木みゆ 山田真歩
宮藤官九郎/菅田将暉
原作:藤本タツキ「ルックバック」(集英社ジャンプコミックス刊)
監督・脚本・編集:是枝裕和
音楽:坂東祐大
撮影:上野千蔵
マンガ監修・指導・制作:藤村緋二 亀井賢史
配給:K2Pictures
後援:秋田県にかほ市
企画・プロデューサー:小出大樹
公式サイト
©藤本タツキ/集英社 ©2026 K2 Pictures・集英社

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