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柴咲コウが語る、映画「時には懺悔を」で向き合った役作りと「人と人とのつながり」

PROFILE: 柴咲コウ/俳優・歌手

PROFILE: (しばさき・こう)8月5日生まれ、東京都出身。1998年に俳優デビュー。映画「GO」(2001年)で日本アカデミー賞最優秀助演女優賞、新人俳優賞などを受賞し、注目を集める。2002年に音楽活動を開始。RUI名義の「月のしずく」をヒットさせたほか、福山雅治とのユニット「KOH+」として、ドラマ「ガリレオ」(07年)や映画「容疑者Xの献身」(08年)の主題歌を担当した。16年にレトロワグラースを設立し、18年には環境省の「環境特別広報大使」に就任。短編映画制作プロジェクト「MIRRORLIAR FILMS」では、22年に「巫.KANNAGI」で監督デビューし、27年公開予定の「Season10」でも監督を務める。俳優、歌手、プロデューサー、ディレクターとして多角的に活動している。

構想18年。中島哲也監督が打海文三の同名小説を映画化した「時には懺悔を」が、8月28日に全国公開された。ある探偵が殺された事件を追う一匹狼の探偵・佐竹(西島秀俊)は、やがて9年前の新生児誘拐事件へとたどり着く。重い障がいのある少年・新との出会いをきっかけに、過去に傷つき、誰かを傷つけてきた大人たちの人生が交差していく。

柴咲コウが演じるのは、佐竹と長く距離を置いてきた妻・由紀。かつて脳性麻痺の息子・正樹を自宅で介護する中、夫を頼ることができず、過酷なケアに追われて孤立していった女性だ。息子に深い愛情を注ぎながら、なぜ自分自身を追い詰め、家族との関係を見失ってしまったのか。中島監督との撮影、夫婦の間に残された思い、衣装やメイクによる役作り、そして柴咲自身が考える「美しさ」について聞いた。

中島哲也監督の“鷲のような目”

——中島哲也監督とは、映画では久しぶりのタッグとなります。出演を決めた理由を教えてください。

柴咲コウ(以下、柴咲):中島監督とは映画「嫌われ松子の一生」(2006)以来、久しぶりにご一緒させていただきました。当時から、物語の切り取り方や演出の緻密さが強く印象に残っていました。

今作はこれまでとはまったく異なる題材で、出演するには覚悟が必要でした。自分にこの役を演じ切れるのかとも考えましたが、中島監督のもとでなら挑戦できるのではないかと思い、出演を決めました。

——久しぶりに参加した中島監督の現場はいかがでしたか?

柴咲:まるで鷲のような目で、芝居をじっくりと見透かされているような感覚がありました。その緊張感の中で、表現のさじ加減を非常に細やかに演出していただきました。通常、初日は現場の空気や監督の意図を探りながら入ってしまうのですが、中島監督への信頼があったので、安心して臨むことができました。

「“自分”という人生の主人公」を生かせているか

——由紀は、脳性麻痺の息子・正樹を自宅で介護する中で孤立し、次第に追い詰められていきます。彼女をどのような人物として捉えましたか?

柴咲:自分の経験だけでは表現が難しい役だったので、想像と監督の演出を頼りにしました。私自身、「“自分”という人生の主人公を、きちんと生かせているだろうか」と考えることがあります。

由紀の根底には、正樹へのかけがえのない愛情があります。ただ、夫を頼ることも、周囲に助けを求めることもできないまま、自分のことを後回しにして息子を優先し続けていた。その生真面目さが、結果として彼女自身を追い詰め、幼い長女・観月の苦しみに気づく余裕さえ奪ってしまったのだと思います。

——夫の佐竹とは、長く距離を置きながらも、完全には切り離せない関係が続いています。2人の間には、どのような感情が残っていたのでしょうか?

柴咲:2人は、お互いを諦めたように見えて、実は完全には諦めきれていなかったのだと思います。長い間、避けたり逃げたりしながらも、相手への思いを捨てきれずにいた。佐竹は、一人の人間としても、親としても、パートナーとしても、自分の弱さを頑なに閉じ込め、さまざまなことから目を背けながら生きてきた人です。私には理解しきれない部分もありますが、「本当はもっと感情を表に出したいのではないか」とも感じました。

その気持ちがわずかでも見えたとき、由紀の中にも、パートナーとして彼を受け止める余地が生まれる。2人の関係は途切れたように見えて、完全には失われていなかったのだと思います。

——病室で由紀と佐竹が向き合う場面では、中島監督からどのような演出がありましたか?

柴咲:監督から、「そこまで暗くしなくていい」「もっと淡々としていていい」と言われました。人は深い悲しみを抱えていても、意外と普通に振る舞えるものです。由紀の苦しみを、芝居で見せようとしすぎなくていいのだと気づかされました。完成した作品を見て、あれ以上暗く演じていたら、少しつくられた芝居に見えていたかもしれないと思いました。監督に抑えていただいて、より自然に由紀の感情を表現できたのではないかと思います。

——由紀は入院中で、衣装やメイクも抑えられています。ビジュアル面では、どのように役をつくっていきましたか?

柴咲:衣装やヘアメイクは、監督を中心としたチームと一緒につくり上げていくものだと考えています。違和感があればお伝えしますが、基本的には作品全体の方向性を受け入れ、俳優としてそこに入っていく感覚です。

今回は、由紀の心情を装いで強く説明する役ではないと考え、その方向性に身を委ねました。入院中ということもあり、衣装は控えめで、メイクにもほとんど色味がありません。ただ、監督からは「あまり病人らしくしすぎないように」とも言われていました。かなり地味ではありますが、由紀には合っていたと思います。普段は、色について直感的なイメージを伝えることもあります。例えば、淡く柔らかな水色やベージュ。一見すると主張は強くないけれど、どこかにその人なりの小さなこだわりが感じられる。そうしたニュアンスを大切にしています。

「知らない」から特別な目で見てしまう

——本作には、実際に障がいのある子どもたちも出演しています。撮影前には、どのような準備をしましたか?

柴咲:クランクイン前に、スペシャルニーズ・スーパーバイザーの安田一貴さんや当事者の方々、そして親御さんから、必要な介助について教えていただく機会がありました。痰や鼻が詰まったときの吸引、食事や水分補給の方法、使用する器具などを、体験しながら学びました。それまで知らなかったことばかりでしたが、事前に接し方や介助の方法を学べたことで、撮影でも構えることなく、自然に同じ時間を過ごせたと思います。

——その経験によって、見方が変わった部分はありますか?

柴咲:親御さんの考え方はさまざまで、同情されたくない方もいれば、寄り添ってほしい方もいらっしゃる。必要とする関わり方は、一人ひとり異なると思います。ただ、理解する人が増えれば、もっと生きやすい社会になるという願いは、障がいの有無にかかわらず、多くの親御さんに共通するものではないでしょうか。

知らないからこそ、必要以上に特別な目で見てしまうことがあります。社会に理解が広がれば、私自身もよりフラットに接することができる。そのことに気づかされた、貴重な経験でした。

出演のない日にも現場を見る理由

——撮影現場や完成した作品を通して、ほかの俳優の方々の演技で印象に残ったことはありますか?

柴咲:撮影中に、宮藤官九郎さん演じる明野と新ちゃんの場面を見たことがあります。とにかく、その場面を見たかったんですよね。佐藤二朗さんが、ぼんやりとたたずみながら周囲を観察している姿も目にしました。俳優がその場にどのようにたたずんでいるのかは、見ているだけでも大きなヒントになります。

完成した作品では、新ちゃんをめぐる場面に、軽やかさや滑稽さがありながら、深い情も感じられました。宮藤さんの軽快さもあって、そのバランスが本当に絶妙でしたね。

——柴咲さんは、ご自身の出演がない日にも撮影を見学することがあるのでしょうか?

柴咲:クランクインから長く現場にいて、自分が物語の中心として撮影に参加する場合と、撮影日数が少なく、時々現場に入る場合とでは、作品の捉え方がまったく違います。

出演日が少なかったり、撮影が飛び飛びだったりする作品ほど、「どのような空気の中でつくられているのだろう」と気になります。そういうときほど、実際に現場を見たほうがいいと思っています。スタッフを含めた現場全体の空気を感じたり、モニターを見せてもらったりします。どのような色合いで、監督がどのような視点から画面を捉えているのか。そこに作品の答えのようなものが一番表れていると思うんです。自分の撮影に入る前にそれを見ることができれば、非常に大きなヒントになります。

——俳優だけでなく、歌手やプロデューサーとしても表現活動を続けています。そうした経験が、映像を見る視点にもつながっていますか?

柴咲:どうなのでしょうね。ただ、自分の中には自然と絵コンテが浮かぶんです。音楽活動でも、ミュージックビデオの監督を務めたことはありませんが、実は自分で絵コンテをつくり、それを監督してくださる方に見せたことがあります。頭の中で映像が動き、自然と組み立てられていくんです。

今回のような作品でも、台本を読んだときに自分が思い描いたものと、実際の映像にどのような違いがあるのかを見ています。「この場面を、こう切り取るのか」と感じることもありますし、そこに監督の個性が表れるのだと思います。そうした表現を自分の中にも取り入れながら、学ばせてもらっているという感覚です。

——本作には「誰もが誰かの光になる」という言葉があります。柴咲さんは、この作品を通じて、人と人とのつながりをどのように感じましたか?

柴咲:とても難しい作品なので、私自身、一言で総括したくないという思いがあります。受け止め方は見る方によって異なりますし、皆さんの反応に触れることで、私も初めて気づくことがあるのだと思います。

一個人として感じるのは、何げない日常にも、人の心を晴らしたり、温かくしたりする瞬間があるということです。例えば、コンビニの店員さんや、乗り物でたまたま居合わせた人との短いやり取りによって、心が軽くなることがあります。そうした経験が積み重なっているからこそ、誰かを「まったくの他人」とは思えないんです。

接点や関係の深さはそれぞれでも、私たちは同じ時代を生きています。この作品を通じて、血縁だけではないつながりや、これから新たに紡がれていく縁もあるのだと感じました。

自分の個性に素直でいることが「美しさ」

——俳優、歌手、プロデューサーなど、さまざまな立場で活動する現在、柴咲さんが考える「美しさ」とは、どのようなものですか?

柴咲:人にはそれぞれ、物事を見る視点や好みがあります。だからこそ、自分自身の個性に素直でいることが、とても大切だと思っています。その人ならではの感覚や個性を大切にして生きることが、結果として、人としての美しさや魂の美しさにつながっていくのではないでしょうか。

私自身、自分の内側から自然と湧き上がってくる「こうしたい」「ああしたい」という思いには、きちんと耳を傾けたいと思っています。そして、自分で状況を動かせるのであれば、なるべく行動に移していく。自分の気持ちに素直に従って動いていると、ワクワクしますし、何より楽しいんですよね。そうやって自分らしく生きていくことが、美しさにつながるのだと思います。

PHOTOS:YUKI KAWASHIMA
STYLIST:KEI SHIBATA
ヘアメイク:SHIGE(AVGVST)

ドレス 17万500円/N21(IZA 0120-135-015)、イヤリング 139万9200円、ネックレス(ピンクゴールド) 110万円、ネックレス(ホワイトゴールド) 50万6000円、リング(右手:ピンクゴールド) 44万8800円、リング(右手:ホワイトゴールド) 48万8400円、リング(左手) 97万6800円、ブレスレット 187万4400円/全てピアジェ(ピアジェ コンタクトセンター 0120-73-1874)

作品概要

◾️「時には懺悔を」
8月28日から全国公開
監督:中島哲也
出演:西島秀俊 満島ひかり
黒木華 宮藤官九郎
毎熊克哉 鈴木仁 烏森まど 山﨑七海
唯野未歩子 野呂佳代 長井短 しんすけ 山下舜太 諸角優空
柴咲コウ
塚本晋也 片岡鶴太郎 / 佐藤二朗
役所広司
原作:打海文三「時には懺悔を」(角川文庫/KADOKAWA)
脚本:中島哲也 門間宣裕
制作:REMOW 
制作プロダクション:さざなみ
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
©2026 映画「時には懺悔を」製作委員会
映画「時には懺悔を」公式サイト

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