
「エクスペリエンスマーケティング」を事業領域とする博展は、リサーチ起点が特徴のデザインスタジオのwe+、接着剤メーカーのセメダインと共同で、海藻由来のアルギン酸ナトリウム系接着剤「ループグルー(LOOPGLUE)」を開発し、4月15日に実演発表会を行なった。
同製品は「高い接着性能」と「水で分解できる易解体性」を両立した点が特徴だ。主原料に海藻由来のアルギン酸ナトリウムを用い、100%自然由来の水系接着剤として開発した。
「これまでにも海藻を活用するプロジェクトを行なってきたが、昆布などが持つ滑りの粘着力に着目した」と、武蔵野美術大学准教授も務めるwe+の安藤北斗共同主宰。we+が携わった海藻由来の素材を展示する際に、施工を博展が担当したことをきっかけに、2023年に共同リサーチプロジェクトが始まったという。
博展の制作拠点で実証実験を重ねる中で、モズク由来のアルギン酸ナトリウムが木材と紙を強固に接着しつつ、水をかけることで容易に剥離できる特性を持つことを確認。製品化にあたりセメダインに相談し、量産化技術の確立と製造体制を構築した。
展示などに使用した資材を再利用できる
「時に数時間のためだけに空間設営をすることがある中で、いかに廃棄を減らし、資材を循環させるかということに、会社として長年取り組んできた」と博展の鈴木亮介サステナビリティ推進部部長サーキュラーデザインルーム統括。展示会業界では、木工造作物に壁紙を接着する「表具工事」が一般的であるが、使用後に壁紙をきれいに剥がすことが難しく、資材の再利用性や作業効率に課題があった。「ループグルー」を用いることで、水をかけるだけで壁紙を剥離でき、木工パネルを傷めることなく再利用が可能になる。
“剥がれない”けれど、“剥がしやすい”
「本来、接着剤は“いかに剥がれないか”にこだわって作るが、『ループグルー』は“剥がせる”を前提に、解体までを考えている。“剥がれない”けれど、“剥がしやすい”。相反する要素を両立している」とセメダイン製品部企画管理チームの西村香菜さんは語る。
原料となる海藻は南米チリで採取されたものを使用し、自然のライフサイクルを終えて漂着した海藻のみを回収することで生態系への影響を抑制。現地雇用の創出にも寄与している。ほぼ自然由来の原料で作っており、環境・健康面での配慮も打ち出す。「価格は従来の接着剤よりも割高になってしまう。しかし、資材の再利用や作業効率の改善等によるコストの削減で相殺できる可能性は十分にあるのではないか。環境への配慮といった点も魅力だと思う」。
雨ざらしや結露が起こる環境での使用や、非多孔質素材同士の接着には不向きだというが、木材や紙等への室内利用には非常に適している。多くの展示ブースやポップアップを手掛ける博展は5月から実用を開始し、資材再利用のサイクルを確立していくという。「実際に加水してメンテナンスとして戻していくというところの運用自体は、これからしっかりと検証し、どう生産性高く仕組みを入れていくか。まずは弊社の制作のスタジオの中で行う表装から実装・検証し、広めていきたい」と博展の鈴木部長は語る。