石田萌デザイナーによる「ホウガ(HOUGA)」は3月17日、「楽天ファッション・ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」で2026-27年秋冬コレクションを発表した。螺旋階段を降りた窓ひとつない小さな空間で、演劇を思わせる形式のランウエイを披露した。
中央の階段から降りてくるモデルたちは、踊り場に座ったり、バケツに入った花を手に取ったり。時には笑みを浮かべたり、互いの存在を感じ取るように交流したりと、自由に振る舞う。その様子には、「ホウガ」を着た日の静かな高揚感や、日常のふとした瞬間に立ち上がるときめきが映し出されていた。狭い空間ゆえの距離の近さもショーという形式を忘れさせ、道ゆく人の日常を眺めているような感覚を生み出した。
劇場キャスト“テアトルホウガ”として登場したモデルたちは、石田デザイナー自身が直感的に惹かれ、「この人が『ホウガ』を着たらどうなるだろう」と思った人たちだ。振る舞い方に細かい指示はせず、それぞれが“自分らしく”あることを前提とした。会場に配置した、シールが貼られたままのバケツや演出家の私物の本も、“ありのまま”を表現するため。「飾らなくても美しいものは美しい」という思いを空間全体で表現した。
全30体のルックは、リボンやレース、チュールなどを随所にちりばめ、ブランドらしいモチーフを保ちながらその見せ方を更新。ブルゾンやキャップといったスポーティーな要素を差し込み、日常にドレッシーな要素を取り入れるスタイルを提示した。階段を登り降りするモデルたちが裾を持ちながら歩く様子からも、日常にドレスを取り入れる想像を駆り立てた。
服に救われ、服で救いたい
「ホウガ」は2019年にデビュー。7年目に突入し、今季はよりブランドらしさを押し出すことを選んだ。「自分自身、先輩の服に救われてきた経験があり、服には人を強くする力があると感じている。自分の服もそうでありたい」。
今季のテーマは「Our playground(私たちの遊び場)」。重圧から半歩ズレた視点を持つことで、見慣れた街は遊び場になるという思いを込めた。一方で、石田デザイナーは「そういった幸せを感じることは意外と難しいと思っていて、私自身も簡単に感じられるタイプではない」とも語る。日常の美しさに気づく尊さと難しさ。そううまくは運ばない葛藤さえも包み込む、「ホウガ」の優しく静かな反骨心が服、人、空間の全てににじんだコレクションとなった。