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ダイアンのユースケが語る初著書「なんなん自分」 転機となった「M-1」と“遅咲き”芸人論

PROFILE: ユースケ(ダイアン)/芸人

PROFILE: 1977年滋賀県生まれ。嵯峨美術短期大学卒業。中学時代の同級生である津田篤宏と2000年にダイアンを結成。ボケ・ネタ作りを担当。「なんなん自分」が初めての著作となる。

人気お笑いコンビ・ダイアンのユースケによる初の著書「なんなん自分」(KADOKAWA)が出版された。本書は些細なことが気になる繊細なユースケが、300ページを超えるたっぷりのボリュームで、日常の出来事をはじめ、幼少期、学生時代、「M-1グランプリ」、家族、ラジオなど、さまざまなテーマや状況下で感じた思いを、綴ったエッセイ集だ。初の著書を出版したユースケに、自身のことや「M-1」、漫才について、話を聞いた。

初の著書を書き終えて

——エッセイのタイトル「なんなん自分」はどのように決められたのでしょうか。

ユースケ:候補がいくつかあって、その中にあったワードだったんですけど、「これどうですか?」って聞いた時に、スタッフの方から「自分自身に対して『なんなん』って思うことが書いてあるからいいと思います」って言われたんです。そこで気付いたんですけど、2つ意味がある。関西以外の方は「自分=自分自身」なんやと思うんですけど、「いや、関西弁で『なんなん自分』っていうのは、『なんなん、あなた』っていう意味なんです」と。だから、両方の意味があっていいんじゃないかと思って、このタイトルになりました。

——本文でもご自身に対して「自己ツッコミ」をされていますが、客観的に自分を見る視点は子供の頃からあったのですか。

ユースケ:そうですね……。子供の時も多少はあったと思いますが、大人になってからの方がより強くなった気がします。もともと「気にしい」というか、他人のことも自分のことも、いろいろなことが気になってしまう性格なんで。

「こう見られてるんちゃうか」とか「こいつなんなんやろ」とか。大人になるにつれて、そういう自意識というか、自分を俯瞰して見る癖が子供の時より強まっていったという感じはありますね。

——文章から漫才のようなリズムを感じます。執筆する上で意識したことはありますか。

ユースケ:僕は本を出すのも初めてですし、人の本をたくさん読んできたわけでもないので。ただ、自分が書いたものを読み返した時に、リズムよく読めるかどうか。分からんなりに「語尾を修正した方がテンポが良くなるな」とか「この言い回しの方がスッと入ってきやすいな」と調整して。声に出して読むまではないけど、頭の中で読んでみて、心地よく入ってくるようにっていうのは意識しましたかね。

——実際に書いてみて、文章を書くことはお好きだと感じましたか。

ユースケ:あまり今までやってなかったですけど、好きですね。だから「本出しませんか」って話をいただいた時は「あ、出したいな」と思いましたし。書くことが、ある種の発散になっている部分もあります。やっぱり、自分が思ってることをこう文字にすることで、ちょっと引きで見れるというか、そのことについてもう一度ちゃんと考えることができる。いろんな意味でいいなと思いましたね。

——改めて発見したことはありますか?

ユースケ:なんか「自分が正しい」と思っていたことでも、こうやって書いてみて客観的に見ると、「あ、この部分は、もしかしたら自分が悪かったのかな」とか、書くことで見えたりとかもするところもあるので。頭の中だけで考えてることとは、またちょっと思いが変わったりとかするとこもありましたかね。

「ビビり」で「ヘタレ」でも芸人に

——人見知りの結果「地獄の高校時代を送った」と書かれていましたが、当時の救いになったものは何だったのでしょうか。

ユースケ:やっぱりラジオですかね。深夜ラジオを聴き始めたのが高校生の頃だったので、それは救いというか、数少ない楽しみでしたね。でもまあ、高校にはあまり友達がいまかったんですけど、地元の友達とは遊んでいたので、なんとかやっていけたのかなと思います。

——「ビビり」で「ヘタレ」であることが書かれていますが、それでも表舞台に立つ芸人になりたいと思われたのはなぜ?

ユースケ:昔からお笑いが好きで、ずっと見てましたし。学生生活が終わって、働くとなった時に「何が好きかな」と考えたら、お笑いだったってことですかね。なんで、そこで「自分が人見知りやからな」とかは、あんま当時は考えなかったですね。ただそれが好きやからNSC(吉本興業の養成所)行こうかな、ぐらいな気持ち。

——自信はありました?

ユースケ:いやいや、もう未知の世界やったんで。NSCには面白い人がたくさん集まると聞いていたので、自信満々というわけではなく「大丈夫かな?」という不安もあったけど、とにかく一度行ってみようと。

——NSC大阪22期(1999年入学)というと、キングコング、南海キャンディーズなど、とりわけ個性的な芸人がそろっていますけど、実際に入ってみてギャップは感じましたか?

ユースケ:僕らは入ったのが(年齢的に)少し遅かったんです。高校卒業後すぐとか、在学中に入る人も多くて、結構軽い気持ちで入ってくる人も多くて。最初は「あ、そんなに大したことないんやな」というか、本当に面白い人はそんなに多くないんだな、という印象が強かったですかね。

——同期の山里亮太さんは、当時からユースケさんのことを「圧倒的な天才だった」と評していますね。

ユースケ:いや、全然ですよ。山ちゃんはそう言ってくれますけど、当時から山ちゃんの方が全然目立っていました。僕らはネタ見せの授業でも、講師の人に褒められたのも遅かったですし。

大阪で今もある「今宮子供えびすマンザイ新人コンクール」に出るための社内予選ですら落とされたりしていました。「あいつらより俺らの方が絶対いいのにな」と思っても評価されない。だから、初めて講師の人に「面白いな」と言ってもらえた時は、「ようやく分かってもらえたんや」って嬉しかったですね。

——それは漫才の仕方などを変えたりしたんですか?

ユースケ:変えてはいないと思います。ただ、自信になった出来事があって。NSCって一期前の先輩がアシスタントをやるんですよ。僕らがNSC22期で授業受けた時は、21期の「あるある探検隊」で有名になったレギュラーさんがアシスタントをされてたんですよ。ネタ見せの授業の時、みんなからは死角になる場所でお二人が僕らのネタを見てたんですけど、松本(康太)さんが、腹がよじれるくらい笑ってたんですよ。それがチラッと見えた時に、「あ、面白いんや、俺ら」みたいな。NSCって基本、他人のネタに笑わないんで、そういうのに飢えてたから、それは今でも覚えてますね。

ダイアンの漫才

——ターニングポイントは「M-1グランプリ」だったと書かれていますね。

ユースケ:それまでもちゃんとやってはいたんですが、最後の2、3年は本当に漫才と向き合った感じでしたね。「M-1」に向けて必死にやったことで、関西でのお仕事も増えましたし、認知してもらえるきっかけになったので、それは本当に良かったと思います。

——「M-1」が終わって「自分が好きな漫才っていうのが分かった」と書かれてましたけど、どういう漫才が好きだっていうふうに思うようになりましたか?

ユースケ:「M-1」の時は、やっぱ本来自分らがやっているような形じゃない、「M-1」用にシステムに当てはめたような漫才をしていたので。「M-1」への挑戦が終わって、そういうのを気にすることなく、普段の自分らの感じのネタをやるようになって、そっちの方がやってて、お互い、楽しかったし、お客さんの反応も良かった。

別に「M-1」のネタもいいと思ってやってたんですけど、後々、また普段の自分に戻ってネタをやるようになった時に、「そっか、こういうネタの方が、自分らっぽいな」と。だからもっと自分らのネタで勝負できてたら、もしかしたらもっと良かったかも分からないですがっていう感じですかね。

——現在は賞レースの審査員も務められていますが、どのような基準で審査されているのでしょうか。

ユースケ:「キャラクター:何点」「発想:何点」「テクニック:何点」とか、そんなふうに細かく見てる暇もないので、自分の目を通して純粋にどう見えたか、という感覚を大切にしています。個人的な好みは関係なしっていうのは大前提。好みが入ってしまうと、(ネタを)やる側としては「頼んますよ」ってことになっちゃうんで。仮に聞かれた時にちゃんと自分の言葉で説明できるかどうか。そこは意識してます。

——ダイアンとして毎年単独ライブを続けていらっしゃいますが、辞めたいと思うことはありませんか。

ユースケ:いや、全然ありますよ(笑)。新ネタを作るのは本当に大変な作業ですし。ただ、ここで辞めてしまうと、ラジオとかで後輩にイジったり偉そうなことを言えなくなってしまう。「お前やってへんやん」ってなる。ピリッとする瞬間もありますけど、続けられるうちは年に一回くらい、そういう思いをしながらやっていくのがいいのかなと。お客さんが来てくれるうちは続けていきたいですね。

——今、漫才を作る上で大切にしているこだわりはありますか。

ユースケ:なんですかね……もう何年も前からですが、若い人から年配の人まで皆さんが分かるテーマにすることくらいですかね。ボケとかになってくると、分からへん人も多分いると思うんですけど。若い頃はぶっ飛んだ設定でやることもあったんですけど、今はやらなくなりましたね。

「日々を過ごしているだけで価値がある」

——44歳でご結婚されて変わったことはありますか?

ユースケ:僕は結構するのが遅かったので、それまではやっぱり独身の芸人の方が、すごいんじゃないか、みたいに思っていたんですけど、結婚してからはほんまに、「いや、結婚してやってる方がすごいな」っていうのは、結婚すると分かるというか。結婚して、芸人という仕事を成立させてる方が、すごいんやなって。まあ、これはもう完全僕の意見ですけど。

——NSC入学、東京進出、結婚。どれも「遅め」じゃないですか。それは用心深い性格ゆえでしょうか。

ユースケ:いや、そうなんですよね。だから僕は、全部遅いんですよ。それこそ「なんなん?」って思いますね。全てが遅い。自分でも何でかなと思います。用心深いからなのか、みんなが先に行って、「あ、大丈夫そうやな」と確認してから行くタイプなのか……。早い方がいいに決まっているんでしょうけど、これが僕のタイミングなんですかね。

——芸人を志した時に思い描いてたその芸人像と、今の自分って何かギャップありますか?

ユースケ:いや、もう、めっちゃあります。それはみんなそうやと思いますけど。最初は「すぐ売れる」と思って入ってきますけど、全然そうじゃないし。以前、東野幸治さんに言われたことがあるんです。「NSCに入る前の自分が見た時に、今の自分にファンレター出すか?」「いや、出さないっすね」みたいな(笑)。

だから当時の自分の理想とは違うにしても、当時の自分に恥ずかしくないような、「ここはちゃんとやってるな」と思える部分がどんだけあるか。それがあれば、それでいいんじゃないかという風には思いますね。

——ダイアンとしての将来像はありますか?

ユースケ:テレビとかメディアのお仕事もそうですし、劇場とかに出続けるっていうのもそうですし、それをバランスよく続けていければ、それが一番いいかなという感じですね。

——本の中で「夢がなくてもいい」「生きているだけで素晴らしい」といったことも書かれていましたが、競争の激しい芸能の世界で、なぜそう思えるようになったのですか。

ユースケ:こういう世界にいるからとかはあんまりなにも思わないですけど、「夢に向かって頑張ってますか?」「やりたいことをやりましょう」というような風潮が強いですけど、そうでなくても素晴らしいと思うんです。僕は動物が好きでよく動物のYouTubeを見るんですけど、彼らはそんなこと考えて生きていないじゃないですか。誰かに迷惑をかけず、普通に生活していくだけでも十分すごいこと。何か大きな夢がなくても、日々を過ごしているだけで価値がある。それは単純に、僕が思うことですね。

——最後に、ユースケさんのように繊細で生きづらさを感じている人へアドバイスをいただけますか。

ユースケ:できれば、そういうことを感じずに生きられるのが一番いいと思うんです。でも、もともと気になってしまうタイプの人は、なかなかそう簡単にはできない。意識して“気にしないようにする”という方法もあると思いますけど、正直、気にすればするほどこっちがストレスを感じてしまって、あまりプラスにはならない。

だから、“感じなくする”方向に持っていくのか、それとも、感じてしまう前提で、それを解消できる何かを持っておくのか。そこは人それぞれやと思います。僕はこうやって本に書いたり、テレビやラジオで喋ったりできるので、そういう形で発散できる分、まだいいほうやけど、たぶんそういう場がない人のほうが多いですよね。

だから、自分を変えていくのがいいのか、それとも何か解消できる方法を見つけるのか……もし何もなかったら、早急に見つけてください。こっちは悪くないのに、こっちがストレスを感じてしまうっていうのは、すごく理不尽なことではあるんですが、仕方ないことなんで。結局は、そういう「なんなん」という思いを、受け止めてくれる「捌け口」を見つけてもらうしかないですかね。

PHOTOS:MIKAKO KOZAI(L MANAGEMENT)

「なんなん自分」

著者:ユースケ(ダイアン)
発売日:2026年1月21日
価格:1870円
判型:四六判
ページ数:320ページ
発行:KADOKAWA
https://www.kadokawa.co.jp/product/322110000152/

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