ファッション
特集 26年ファッション&ビューティ業界大展望 第10回 / 全18回

地金高騰が継続 本物志向の高まりから資産価値がより重要に【2026年ジュエリーの展望】

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TOPICS 10
ジュエリー

インバウンド消費の落ち込みも少なく、度重なる値上げにもかかわらず売れ続けるジュエリー。昨年は、「カルティエ(CARTIER)」や「ティファニー(TIFFANY & CO.)」のアジア最大旗艦店が銀座に登場するなど、ジュエラーの存在感が増している。地金高騰の継続が予想される今年、業界はどの方向へ向かうのか?(この記事は「WWDJAPAN」2026年1月5日&12日合併号からの抜粋です)

記者はこう見る!

益成恭子/編集部記者

益成恭子/編集部記者

2025年、印象に残った取材

シャネル(CHANEL)」が京都で開催したハイジュエリーイベント。故ディレクターのパトリス・ルゲロー(Patrice Leguereau)の集大成ともいえる最後のコレクションは、華やかさとはかなさが融合した感慨深い作品ばかりだった。

2026年、こんな取材がしたい

消費者の関心が資産価値に向いている今、ジュエリーの価値を大きく左右する宝石や地金といった素材、職人技について取材したい。ジュエリーの製造現場におけるイノベーションについても興味がある。

ILLUSTRATION : UCA

地金高騰で本物志向へシフト
普遍的な資産価値が重要に

2025年のジュエリー市場は引き続き活況だった。全般的な物価高により、消費者の視線は今まで以上に商品そのものの価値へ向いている。継続的な金相場高騰により、ジュエリー市場における需要も貴金属を使用したファインジュエリーへシフト。度重なる値上げをしても売れ続けている。ジュエリーであれば日常的に着用して楽しめるし、二次流通で価値が上がる可能性がある。そういった面からも、多くの消費者の間で、ジュエリーが資産価値として定着した。

高額品のインバウンド消費の落ち込みが見られる中、ジュエリーは国内客に支えられているという声が多く、多くの百貨店のジュエリーの売上高は2ケタ増だ。 “ご褒美需要”がジュエリーへシフトし、需要が多様化する一方で、地金の高騰で低価格帯のジュエリーの提案が難しくなっている。そこで、ジュエリーを資産価値と捉える消費者の需要は、エントリーから中価格帯へと移りつつある。

海外ジュエラーの売れ筋は、「カルティエ」の“トリニティ”、「ティファニー」の“ティファニー ハードウェア”、「ブルガリ(BVLGARI)」の“セルペンティ”といったアイコンに集中。50万円以上の中価格帯の動きが良く、投資の意味もあってか選ばれる商品がグレードアップしている印象だ。ブライダル需要も復調。人生の記念日の買い物にはこだわりたいという20〜30代が増加し、エンゲージでは「ショーメ(CHAUMET)」の“ジョゼフィーヌ”、マリッジでは「ブシュロン(BOUCHERON)」の“キャトル”への支持が高まった。これらも両方のブランドを代表するアイコン商品で、日常的に着用できるデザインとストーリー性から選ばれている。

国内ブランドでは新たな動きが見られた。ヴァンドームヤマダが伊勢丹新宿本店と共同開発した新ブランド「ジ エレベート(THE ELEVATE)」の登場だ。同ブランドは、ベーシックジュエリーを中心にそろえる「ヴァンドーム青山(VENDOME AOYAMA)」とは違い、18金やプラチナを使用したボリューム感のあるモードなジュエリーを提案。価格帯は20万〜60万円程度で、デビューしたばかりだが手応えを感じているという。海外ブランドと国内ブランドの比較購買が増える中、国内ブランドには少なかったテイスト・価格帯を補充することで選択肢を広げる動きだ。

25年は、海外ジュエラーの日本市場への投資が目立った年でもある。「カルティエ」と「ティファニー」は、銀座にアジア最大の旗艦店を出店。アイコンを中心に、エントリーからハイジュエリーまで幅広い商品をそろえ、VIPルームを充実させたまさに、大きな“宝石箱”だ。これら旗艦店は、増え続ける訪日客とジュエリーへの関心が高まる国内客双方に存在感をアピールするとともに、国内外富裕層のショッピング・デスティネーションとしての役割を担う。両ブランドとも、日本に上陸して50年以上。中国におけるラグジュアリー市場の低迷を見ると、アジアの新興市場よりは成熟・安定した日本市場に投資するのが賢明という判断だ。これら旗艦店が加わり銀座で「ティファニー」は5店舗、「カルティエ」は4店舗(2丁目ブティックは改装予定)体制になる。家賃が高い銀座で、大型店出店後も既存店を維持できるのは絶好調の証拠だ。

今年も地金の高騰から、さらに本物志向が高まり、デザイン、品質、資産性のバランスが重要視されるようになるだろう。海外ジュエラーは、アイコン中心に商品のバリエーションを充実させコミュニケーションすることで、幅広い層にリーチしていくはずだ。長年続くアイコンはブランドのシンボルで、普遍的な価値を持つ。時代に合う価値観でアップデートしていけば、多くの消費者に価値が明確に伝わるからだ。一方で、多様化が進み“人とかぶらないもの”への需要も広がっていくだろう。その受け皿の一つとして、国内各社からは、海外ジュエラーとの橋渡しになるようなデザインや価格帯のファインジュエリーの提案が増えていくと思われる。

専門家はこう見る!

本間恵子/ジュエリージャーナリスト

本間恵子/ジュエリージャーナリスト

PROFILE:(ほんま・けいこ)国内大手宝飾メーカーのデザイナーとして活躍後、ジュエリー専門誌のエディターに転身。フリーランスとして国内外のジュエラーを取材し、幅広くグローバルトレンドを発信している

良いものを高く売る努力が必要な時代に

2025年の一大事は、金・銀・プラチナの価格高騰に尽きる。金価格はこの1年で約1.7倍、銀は約2.2倍、プラチナは約2.4倍に上昇し、最高値の更新が続いた。いずれも安定した資産としての価値や工業用金属としての重要性、そして地政学リスクによっての高騰だが、多くのアナリストたちは26年も貴金属価格に追い風は吹き続けると予測する。

一方で、資産性ではなく、愛の象徴としての情緒的なストーリー性で消費者に訴求してきたダイヤモンドは、世界的な需要の低迷が続く。大粒石やファンシーカラーを除いてダイヤモンドが低迷を続ける理由は、過剰な在庫と合成ダイヤモンド(ラボグロウンダイヤモンド)の影響が大きい。かの「デビアス(DE BEERS)」の事業売却が画策されながら、買い手がつかない状態が、この業界の伸び代のなさを物語っている。

その合成ダイヤモンドも、生産過剰で価格が半分以下に暴落し、閉業するメーカーが出てきた。「合成ダイヤモンド元年」といわれた2019年からわずか数年で、合成ダイヤモンドは天然ダイヤモンドにとって代わる魅力を確立することなく、アクセサリー用の素材に没落しようとしている。

反対に、希少性の高いカラーストーンは驚くほどの価格上昇ぶりだ。色鮮やかなエメラルド、ルビー、サファイアはいうまでもなく、スピネルやトルマリンのような、“通好み”とも見られていた宝石に熱狂的な人気が集まった。コロンビアン・エメラルド、ビルマ・ルビー、カシミール・サファイアなど、最高級の代名詞ともいえる産地で採掘され、美しく見せるための人工的な処理をしていない石は、非常に好調に動き続けた。

ハイジュエリーの場合、こうした“素材価値”に“職人技”というさらなる価値を上乗せする動きがある。人の手による繊細な仕立てには、それ自体に高い価値があるという考え方だ。今年も、ハイブランドが宝石と職人技を重視する動きは変わらない。

そして「今買わないと値段が上がる」というのが単なるセールストークではなく、事実そうであるという状況は今後も続く。円安傾向も厳しく追い打ちをかける。もはや「良いものをできる限り安く売る」という旧来のモデルでは行き詰まるだけだ。これからは「できる限り良いものを高く売る」。コストを下げる努力より、高く売るための努力が重要になる時代がやってくる。

ジュエリーの動向を読み解く上で
振り返っておきたいニュース3選

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