PROFILE: 吉田陸人/作家

表紙を制作した吉田陸人さんが在籍するやまなみ工房は、今年で40周年を迎える。1986年、滋賀県甲賀市に開設した当初は3人だったという利用者は、現在94人。それぞれ、自分だけの文字を描いたり、粘土で何十体もの偶像を作ったり、ひたすら糸を巻きつけたりなど、自分が見つけた“好き”に熱中している。87年から施設の運営に携わり、現在施設長を務める山下完和さんがこの場所で目にしたのは、障害がある人とその家族、社会の認識の変化だった。(この記事は「WWDJAPAN」2026年1月5日&12日合併号からの抜粋で、無料会員登録で最後まで読めます。会員でない方は下の「0円」のボタンを押してください)
山下完和/やまなみ工房施設長
山下完和/やまなみ工房施設長
WWD:開設当時のやまなみ工房はどんな施設だったのか?
山下完和やまなみ工房施設長(以下、山下):僕が働き始めたころのやまなみ工房は、周囲の人からは「特別な人やかわいそうな人が行く場所」「悪いことをしたらやまなみに入れるよ」と言われるような場所。その頃は「いかに就労に結びつくか」という視点から、利用者には内職作業をしてもらっていて、慣れない作業のストレスから精神的に不安定になる人も多かった。そんな中、1人の利用者が落ちていた紙に落書きをしていたーこれまでに見たことがない、楽しそうな表情だった。それを見て、まずは「ここにいる人たちが笑顔になる場所にしたい」と思い、試行錯誤しながら今に至る。
当時の僕たちスタッフは、そういった彼らの“好き”なものを作品だとは思っていなかった。ここでは今でも、誰もアートや障害の話をしないし、作品を生み出そうともしていないかもしれない。そんな空気感に、彼らは“否定も肯定もしない心地よさ”を感じているのだろう。そんな信頼関係の上で生まれた彼らの“好き”にたまたま企業が注目し「これはアートだ」と言ってくれたことは、僕たちにとって、社会の中で初めて居場所ができたような感覚だった。
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