AIが検索を代替し、個人に最適な提案を行う「エージェント時代」の到来を前に、ZOZOはAIエージェントの自社開発を加速する。澤田宏太郎社長は10月31日の決算会見で、「AIエージェント時代の到来は、ZOZOにとって再び大きく成長するチャンス」と語った。いち早くAI×ファッション販売時代の到来を見据えて、着々と準備を進めてきた澤田社長の解像度はかなり高い。澤田社長の目には、何が見えているのか。
ZOZOの2025年4〜9月期決算は、商品取扱高(=GMV、その他商品取扱高を除く)が前年同期比12.2%増の3124億円と堅調だった。数字上は2ケタ成長を示すが、今期から英ファッションECの「リスト(Lyst)」を連結しており、見かけ上の押し上げ効果もある。主力の「ゾゾタウン(ZOZOTOWN)」は4.5%増にとどまり、力強さを欠く。年間のGMVは6000億円規模(26年3月期予想ベース)、年間購入者数は1200万人超と、ZOZOはもはや“簡単に成長できない規模”に差し掛かっている。
一方で、オンラインショッピング全体では、AIの存在感が急速に高まっている。チャットGPTを筆頭に対話型AIが普及し、購買行動はこれまでの「検索→リンクのクリック→情報収集→購入」から、「AIに相談→推奨→即購入」という流れへ移行しつつある。つまり、外部検索から「ゾゾタウン」への流入や、EC内で主流だった検索連動型のリコメンド機能などの有効性は、今後大きく低下する可能性がある。澤田社長は「日本よりも海外のほうが先行しているが、これは不可逆な動き。日本にもこの波は確実に来る」と語る。
その上で澤田社長が強調するのが、ファッションとAI検索における「商材としての優位性」、すなわち“AIが苦手とする領域”である点だ。「日用品や家電のようにスペックで比較できる商品は、AIエージェントが理解しやすく、販売の上流をハックされやすい。一方でファッションは、トレンドや着こなし、好み、サイズ、フィット感など、複数の要因が複雑に絡み合い、汎用AIでは処理しきれない」。ファッションという“曖昧な商材”は、ZOZOが得意とするデータ解析の腕の見せどころでもある。

定期購読についてはこちらからご確認ください。
購⼊済みの⽅、有料会員(定期購読者)の⽅は、ログインしてください。
