
津吉学デザイナーが手掛けるメンズブランド「ファンダメンタル(FDMTL)」は9月4日、「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」に初参加し、2026年春夏コレクションを発表した。ブランドとしてのショーは、設立20周年の節目の25年春夏に初めて行い、今回3回目。会場の渋谷ヒカリエホールには、ゲスの極み乙女のメンバーでもある川谷絵音や休日課長ら参加するインストゥルメンタルバンド、ichikoroを迎え、ギターやベース、ドラムの演奏にのせてショーがスタートした。
スタンダードを壊した新バランス
今シーズンの新たな挑戦は“解体と再構築”。デニムやワークウエアを分解し、再編集することで新しいバランスを提示した。象徴とするファーストルックは、デニムジャケットと、それを解体しハーフパンツに仕立てたセットアップ。パンツは、ジャケットの胸ポケットが腰ポケットになり、長い袖は垂れ下がっている。ジャケット本体も襟を外してベルトループをあしらい、胸元からはボトムスのウエスト部分が飛び出すように設計した。
この他に、津吉デザイナーがコレクションする古着のボロ布をもとにした緻密なダメージ加工やメッシュ地への転写プリントでモダンなアプローチを探求。細部まで調整を加えたタイダイ染めのスエットパーカは、インディゴの濃淡が奥行きを生み、色落ちや経年変化の美しさを繊細に表現した。クラシックなデニムや伝統的な刺し子に実験的な加工を加えることで、「着るほどに完成していく服」というブランドの哲学をあらためて打ち出した。
ショーで広がるクリエイションの可能性

05年の立ち上げ以来、「ファンダメンタル」はジャパンメードの藍染めやデニムを軸に、工場や職人と対話しながら技術や加工、デザインを独自で突き詰めてきた。イタリアのメンズ見本市「ピッティ・イマージネ・ウオモ(PITTI IMMAGINE UOMO)」やパリの合同展示会「マン(MAN)」などにも参加し、現在は北米や欧州、アジアでも展開している。ショーで披露したような「ヴァンス(VANS)」とのスニーカーや、「ニューバランス(NEW BALANCE)」「ディズニー(DISNEY)」など数々のコラボレーションも手掛けてきた。
実力を備えながらも津吉デザイナーは、「自分は何者なのか」と問い続けてきた。転機となったのは昨年のショーで、“服屋”から“ファッションデザイナー”と自身を定義したことだ。初のショーではシグニチャーであるインディゴやデニムを全面に打ち出し、2回目はミリタリー要素を取り入れた色や素材に挑戦。そして今シーズンは再びインディゴを主軸に据え、3回のコレクションを通して、自身に問う“揺らぎ”やその余韻がまだ“漂う”感覚を「Echo(こだま)」と題した。20年で培った技を土台に、探究心はさらに広がっている。ショーという舞台で芽生えた新しい表現は、次にどんな“こだま”を響かせるのか注目したい。