
コーセーの2025年1〜6月期連結決算は、売上高が前年同期比0.9%増の1605億円、営業利益が同17.7%減の113億円、経常利益が同49.1%減の96億円、純利益が同38.9%減の70億円だった。アジア市場が減収だった一方、国内の「コスメデコルテ(DECORTE)」と傘下のアルビオンが伸長し、全体としては増収を確保した。ただ、新たに連結対象となった米ピューリ社におけるのれん償却費や、米タルト社の物流費増などが収益を圧迫した。
化粧品事業は、売上高が同0.9%増の1279億円、営業利益が同20.0%減の978億円だった。「コスメデコルテ」は、国内では同2ケタ成長と堅調に推移したものの、アジア市場の不振で全体では同1.5%減となった。「雪肌精」は国内では前年並だったが、海外が前年同期を上回り、同0.5%増で着地した。営業利益は、アルビオンや中国本土が好調だったが、中国免税事業の減益や「タルト(TARTE)」の苦戦が足を引っ張った。
コスメタリー事業は、売上高が前年同期並みの312億円、営業利益が同3.4%減の37億円だった。「ヴィセ(VISE)」や「ファシオ(FASIO)」の販売が振るわなかったが、「メイクキープ」シリーズが好調だった。その他の事業は、売上高が同17.4%増の13億円、営業利益が同26.0%増の7億円だった。主にアメニティ事業での増収に加えて、原価率の改善が収益に貢献した。
地域別の売り上げでは、日本市場は同3.6%増の1047億円だった。アジア市場は、ピューリが連結対象となったものの、中国と免税チャネルの落ち込みが響き、同9.6%減の210億円だった。北米市場は、同1.2%増の308億円、その他地域は同8.2%減の38億円だった。
下期は「タルト」再構築や
価格改定で収益性改善図る
北米地域における売上高の大半を構成する「タルト」は、現地通貨ベースで前年同期比1.3%増となったが、円高の影響により円換算では同1.1%減となった。1〜3月期は自然災害や「トランプ関税」などの影響で消費意欲が低下し、不調に陥ったが、4〜6月期に入り回復の兆しが見え始めた。
下期は主力製品であるコンシーラーやマスカラへのマーケティング投資を継続し、店頭消化の回復とブランドのプレゼンス維持に注力する。市場規模の大きなプラットフォームへの参入や、SNSを活用した話題喚起も強化する方針だ。
小林一俊社長は「これまでもアメリカ市場の厳しい環境下でもスピーディーな施策で成長してきた実績がある。ファブレス企業として、引き続きフットワークの軽さにも期待している」と述べる。下期から26年度にかけては、「営業利益を再び2ケタ以上に引き上げることは十分可能だ」と強調した。
タイを中心としたグローバルサウス市場では、「パンピューリ(PANPURI)」事業の収益拡大を目指す。小林社長は「タイでは一時的に治安への懸念から中国人旅行者が減少し、内需が落ち込んだが、収益は増加傾向にある」とし、「『パンピューリ』は『タルト』に次ぐ成功ブランドとして、新たな市場を獲得していくポテンシャルがある」と期待を示す。
中国事業では、黒字化を「25年度の必達目標」と掲げ、独身の日(W11)での販売目標の達成を目指す。販路拡大や費用対効果の高いプロモーション投資を推進する。
日本市場では、主力ブランド「コスメデコルテ」からの新製品投入を通じてブランドの勢いを一段と加速させる。また、ヘアケアなどのコスメタリー領域でもシェア拡大を狙う。傘下のアルビオンは、26年に公式ECサイトを立ち上げ、デジタル接点を拡充。9月には同社初の企業広告を展開するほか、知名度向上を目的とした大型プロモーションも実施する。
5月にナチュラル・クリーンビューティ市場に向けて新たに投入した「雪肌精ブルー」や「プレディアブルー」に関しては、「海外、とりわけクリーンビューティの存在感が高まっている市場を意識して開発したものの、現状では日本国内ブランドの一つという認識にとどまっている」と懸念を示す。「セフォラとの商談や、話題性のある施策を含め、海外展開に向けた具体的な取り組みを検討している」と述べた。
10月には、原材料高騰や商品価値、顧客ニーズとのバランスを踏まえた価格改定を実施予定だ。上期では「コスメデコルテ」が平均6%の値上げを実施しており、今後は「雪肌精」「インフィニティ(INFINITY)」「ワンバイコーセー(ONE BY KOSE)」「メイクキープ」「カルテHD」などでも一段高い改定率となる見通しだ。
25年12月期の連結業績予想は据え置き、売上高が前年比4.1%増の3360億円、営業利益は同15.2%増の200億円、純利益が同83.7%増の138億円を見込む。