東京都とアーツカウンシル東京は、「ヒロココシノ(HIROKO KOSHINO)」を特別協力に迎えて2024年から「こどもファッションプロジェクト」を開催している。ファッションや洋服を題材に児童が楽しみながら創造性を育む機会を創出することが目的で、対象者は、小学生から18歳までの児童。2回目となる今年は、デザイナー職に関心がある児童向けに「ファッションアカデミー」と、イベントプロデュースや撮影などの職に関心がある児童向けに「ファッションムービー制作体験」の2軸で講義を実施している。
「WWDJAPAN」は8月4日、全3回からなる「ファッションアカデミー」に潜入した。100人の児童を相手に、コシノヒロコ=デザイナーや娘の小篠ゆま氏といった、ブランドチームで勤務するファッションのプロフェッショナルらが、テキスタイルや洋服制作について直々に教える内容だ。
今年のテーマは“ぬいぐるみの洋服を作る”。児童1人につき1体の犬のぬいぐるみを与えて、好きな生地やボタン、リボン、テープなどを選ばせ、立体裁断の手法で洋服を仕上げていく。「ヒロココシノ」は、パリの素材見本市「プルミエール・ヴィジョン」で仕入れた布や、ランウエイショーで披露したクチュール用の布など、これまで蓄積してきた貴重な大量のアーカイブ素材を放出。コシノ=デザイナーは「ここにあるテキスタイルは、ブランドの歴史を感じられるようなパワーのあるものばかり。子どもたちがクリエイションを広げられる起点になると思う」と話した。
参加した100人それぞれの個性が爆発したような空間だった。ワンピースを作る児童もいれば、ズボンを仕立てる児童もいたほか、シックでクラシカルな生地を選ぶ者もいれば、子どもらしいポップな色の生地を選ぶ者など。コシノ=デザイナーやゆま氏が話すと、彼らは真剣な面持ちで頷きながら話を聞き、「すごく楽しい」と服作りに夢中になっていた。
開催2回目ながら想定を超える応募
事前に参加希望者を募集し、想定以上の応募があった。やむを得ずコシノ=デザイナーが提出作品による選抜を行い、100人に絞ったという。「この条件で子どもを教育するのは最高のぜい沢。子どもたちは、今はまだ才能が発揮されていない状態だが、これからそろそろ差が出てくるはずで、服作りを通して彼らが感じていることを見られるのは面白い。洋服を作りたい、オシャレしたいなどの気持ちをきっかけに、将来大物デザイナーが生まれるかもしれない」と期待を寄せた。