ファッション

LVMHジャパンでラグジュアリーに携わる生き生きとした人に刺激を受ける 中高生の「ファッション育」Vol.7

 中高生のためのファッション育プロジェクト「フューチャー・ファッション・インスティテュート(FUTURE FASHION INSTITUTE、以下FFI)」は、「ファッション育」を通じて子どもたちの感性を磨き、未来の業界を担う人材やセンスを生かして働く子どもの育成を応援している。展示会への訪問や業界人へのお仕事インタビューなどを重ねるメンバーは、自らの体験をシェアして友人に刺激を提供。ポジティブなループを通して、子どもたちが「未来の自分」を思い描き、夢に一歩近づくことを願う。今回は LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)ジャパン を訪れた。

 今回中高生を出迎えたのは、LVMHジャパンの山内彩ピープル&カルチャー シニア マネジャー。山内シニアマネージャーが用意したプレインターンシップの目的は3つ、①LVMHについて知ること、②ラグジュアリー・グループの多様な仕事について学ぶこと、そして③さまざまなキャリアや人生について学び、ヒントを得ることだ。

 プレインターンシップは、なんとLVMHジャパンのノルベール・ルレ(Norbert Leuret)社長のビデオメッセージから始まった。ルレ社長は、「日本で暮らすようになってから30年近く。今はラグジュアリー業界で働いているが、それを後悔した日なんて1日もない。素敵な洋服やバッグ、ジュエリー、化粧品は、それぞれのお客さまの人生を明るく、ハッピーにしている。この業界は、モノ作りに携わる職人、それをお客さまに届ける販売スタッフを筆頭に、大勢の素晴らしい人たちの能力のもとに成り立っている。ぜひ今日からラグジュアリー業界の世界、システム、流通を勉強し、この業界に入ってもテクノロジーやノウハウの学びを続けてほしい。この世界は、永遠に勉強できる。退屈な時間、不安な時間なんて全くない。業界として明日の世界、明日の地球にも貢献している。興味があればぜひ挑戦してほしい」との言葉を残した。

 続いては、①LVMHについて知ることの時間だ。最初は山内シニアマネージャーが、「LVMH」とは「LV」と「M」に「H」、つまり「ルイ・ヴィトン」とお酒の「モエ・エ・シャンドン(MOET & CHANDON)」や「ヘネシー」の頭文字を取った名前であることを教えてくれた。グループは現在ワイン&スピリッツ、ビューティ、ファッション&レザーグッズ、ウオッチ&ジュエリー、セレクティブ・リテーリング、アザー・アクティビティーズのセクターのもとに70以上のブランドを有し、日本では38のブランドを手がけている。そんなラグジュアリー・コングロマリットを形成したベルナール・アルノー(Bernard Arnault)LVMH会長兼最高経営責任者はニューヨークを訪れた時、タクシーの運転手から「君がやってきたフランスの大統領の名前は知らないけれど、『ディオール(DIOR)』は知っている」と聞かされ、「世界に輸出できる産業として素晴らしい可能性を秘めているのではないか?」と考え、投資を始めたそうだ。

 その後は、ペアで傘下のブランドを1つ選び、そのブランドについてリサーチした後、周りのメンバーに紹介するというワークショップに挑戦した。くじ引きで選ばれたブランドは、「ロエベ(LOEWE)」や「マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)」「パルファン・クリスチャン・ディオール(PARFUMS CHRISTIAN DIOR)」など。それぞれはスマホでブランドの歴史や最近のニュースを調べ、作ったメモをもとに、周りの学生にプレゼンした。

 ②ラグジュアリー・グループの多様な仕事について学ぶこと、と③さまざまなキャリアや人生について学び、ヒントを得るためのプログラムは、LVMHジャパンで働くさまざまな職種のスタッフへの突撃インタビューだ。山内シニアマネージャーがプレインターンシップの場に呼んでくれたのは、人事、デジタル、そして法務という、買い物していてもなかなか出会い、知ることができない職種の人たち。中高生はグループに分かれて、スタッフに学生時代からLVMHジャパンに入社したきっかけ、現在の仕事などをキャリアインタビュー。大きな模造紙1枚にまとめて、周りの学生に紹介した。

 プレインターンシップの最後には、山内シニアマネージャーと中村実LVMHジャパン シニア ヴァイス プレジデント ヒューマン リソーシズ(以下、中村SVP)が、自分らしいキャリアの築き方のヒントを教えてくれた。2人は、「キャリアは、働くことだけではなく、生きること。自分を知り、社会のニーズや将来必要な資産と掛け合わせることが必要だ。好きで得意なことだから情熱を傾けたり、得意で稼げそうだから専門性を磨いたり、稼げそうで必要とされそうだから天職に決めたり、必要とされているし好きだから使命感に燃えたり。自分が価値を置くものを明確にして、才能を特定し、情熱にスキルと知識を投資して『強み』に変え、その『強み』を必要とされることに近づけるために発信。そして商品やサービスに変えて、対価にしてほしい」とエールを送った。

参加した学生のレポートから
 「ルイ・ヴィトン」「セリーヌ(CELINE)」「ジバンシィ(GIVENCHY)」など、70を超えるラグジュアリーブランドで構成されているLVMHについて学び、自分の将来について考えられた貴重な3時間だった。どのブランドも長い歴史とアイデンティティーを守りながらも常に新しい挑戦を続ける姿勢が、いつの時代にも求められるブランド像を創り出しているのだと感じた。後半では自分がなりたい姿、やりたいことを掴み取るには、自ら行動して自分の意思で切り拓いていくことが大切だと思った。既に高校生でも選択の連続の中、後悔することもたくさんあるが、自分の選択を正解にできるのは自分しかいないのだと改めて感じた。一度の体験でさまざまな背景を持った大人の方と交流できたことがとても新鮮だった。LVMHに関わる方たちがそれぞれ自分の仕事に誇りを持ち、生き生きしているのを見て、私も好きなことや得意なことを生かした仕事を見つけたいとより強く思えた。ルレ社長から「常に勉強を続けること」とアドバイスを頂けたことが強く心に残っている。興味のある分野だけでなく何かを深掘りする過程で見つけた一見関係のないものからも吸収する姿勢が、自分の人生の可能性を広げるために重要と実感した。何がどう繋がるかは分からなくてもインプットを増やせば、生きた知識として自分の源になり得ると信じている。将来自分のやりたいことが見えてきているところだが、固めすぎずにさまざまなジャンルに触れ、自分の興味の種をたくさん育てていきたい。

 LVMHジャパンで働いている方々の仕事は多岐にわたります。今回お話を聞いたのはデジダルや人事、そして弁護士の方々。仕事内容は違っても、それぞれがファッションのより良い未来のために働いていることがわかりました。ファッション企業と聞くと、真っ先にデザイナーやバイヤーなどが思い浮かびますが、その裏には目立たなくても企業を支ている人達がいることを改めて実感しました。

 今回、私はまず「ディオール」について短い時間ですが調べました。「ディオール」 は1946年にクリスチャン・ディオールが創設したブランドです。戦後、贅沢に飢えている女性たちにコレクションで魅せるととても注目の的となったそうです。人事のお仕事をされている中村SVPは、幼い頃から海外にいる期間が長かったそうで、自分の得意な英語や海外での経験を仕事にどう活かしているかを話してくれました。お客さまに良い商品を届けるには、まずいい会社が必要。いい会社であるためには、働く人たちが良いこと。人事の仕事は、会社や人をどう良くするかを考えることだから「楽しい」と言っていました。

 最初は「ルイ・ヴィトン」や「ディオール」「ティファニー(TIFFANY)」の会社と考え、凄そうだから参加してみました。そしたら案の定すごくて、ものすごくたくさんのブランドをリードしている会社でした。なんとお酒まで。ファッションやお酒などの会社なのに、弁護士がいることに驚きました。商品を売るときは法律に従わなきゃいけないと聞いて、納得しました。 働いている人がみんな生き生きしているのも印象的でした。

 今回のプレ・インターンシップではLVMHジャパンの企業としてのあり方を学びながら、キャリアデザインについて学んだ。 ラグジュアリーブランドの名前は聞いたことがあってもLVMHがどのような企業なのかについて知っている人は少ないのではないだろうか。LVMHはファッションからコスメそしてホテル運営まで行っている。 まず初めに参加者が自己紹介して、好きなことについて重点的に話した。この「好きなこと」がキャリアデザインにおいて重要なことを今回の体験を通じて各々が感じたのではないだろうか。さらに2人1組でLVMHのブランドについて調べて、発表するというアクティブラーニングも行った。発表するにあたり、新たに知ることや何を優先的に伝えるべきなのかを考えてペアワークができたのは、参加者にとって貴重な経験であるように感じた。最後はLVMHで働く方々に直接お話を伺う時間。キャリアデザインの実体験をそれぞれから感じることができた。全体を通じて、「好きなこと」は自分にとって大きな武器になることを感じた。「好きなことだからこそ磨きたいと感じ、磨くことで他との差別化を図ることができ、その違いがお金を産むきっかけにつながる」という流れを、実際に「好きなこと」で仕事をしている方々から感じることができたプレ・インターンシップだった。

 「30年前にファッション業界に入ってから、1日も、後悔は全くありません。」 そう話してくださったのは、ノルベール・ルレ社長。 ファッション業界、ラグジュアリー業界をけん引する大企業の社長が、そう言い切る凄さを感じた。オフィスの社長室に向かう通勤の道すがら、不安を感じたり退屈だと思ったりしたことは一度もないとも仰っていた。化粧品の商品開発に携わっている私の母は、学生時代から大好きで仕方なかった化粧品を開発するという夢ある仕事に就きながらも、部署異動を考えるほど“ままならない”気持ちになることもあるようだ。就職活動で社会人の方と接する中でも、ここまで言い切る方は見たことがない。だからこそ、ルレ社長の言葉に衝撃を受けた。 ファッション業界に入って1日も後悔をしたことがない理由は、「美しく、立派な商品」にあるそうだ。「私たちの商品を使って頂くと、お客さまの人生が少しだけ明るくなるんじゃないかと思います」と語るルレ社長の言葉から、我が子を誇らしく思うような自負を感じた。 メンバーの自己紹介では少し緊張しながらも、「メイクをしない子にメイクをしてあげると喜ばれることが嬉しくて、メイクが好き」「作曲家は何を考えていたのか想像することが面白くて、ピアノを弾くことが好き」など、等身大の自己紹介をしてくれた。趣味を話す機会はあるが理由まで聞かれる機会は少ないからか、多くのメンバーが言葉を選びながら理由を語る様子が印象的だった。絶賛就職活動中で「自分とはどういう人間なのか?」という問いに向き合う必要性を痛感している私にとって、中高生の間に「なぜ自分は、これが好きなのか?」を言語化する価値は非常に大きいと感じた。就職活動では「自己分析」という言葉がついてまわるが、シンプルに考えれば、「なぜ自分はこれが好きなのか?」という問いを若いうちからゆったり考えることが、何よりも将来のヒントになると思った。 ペアワークでブランドを紹介するパートやインタビューでは、人によって「面白い」と思う情報が異なる点が如実に現れた。ブランド紹介で話したい情報、インタビューしたい質問、プレゼンの内容など、いろいろな部分に個性が出る(とはいえ気づきを共有する時間に、「マーク・ジェイコブスがイケメンだった」と答えた子がいたが、これは年代問わず全員が共感したのではないだろうか)。年齢も育った環境も異なるため、人によって視点が異なるのは当たり前だが、高校生と大学生が一緒にワークをする機会は意外とないため興味深く、楽しめた。中学生、高校生、大学生、さまざまな職種の社会人の方がお互いのモノの見方・考え方を共有できる点は、FFiの大きな魅力だと思う。 今回のプログラムでは、ブランドを調べる時間、商品が発売されるまでに携わっているお仕事の紹介、職業インタビュー等、仕事のミクロとマクロの両方を知ることができる濃密な体験だった。その上で私が最も素敵だと感じた点は、熱量を持って仕事に打ち込む社会人の方々が建前を使わず、飾らずに話をしてくださる点だった。就職活動は建前だらけの飾られた質疑応答で溢れているように感じてしまう私にとって、これは非常に貴重な機会だと感じた。 休憩時間にイマドキの若者の服の買い方を貪欲に聞いて回り、最後はメモまで取ってらっしゃったデジタル・ディレクターのように、生き生きと熱量を持って仕事に取り組み、道を切り開いていく大人になりたいと思った。

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「WWDJAPAN」10月7日号は、2025年春夏ミラノ・ファッション・ウイークを総括します。今季はデザイナーらが考える「生き方」が表出したシーズンでした。個々が抱える生きづらさを出発点に、批判の目を持って疑問を呈したり、ポジティブに現実を受け止め軽やかに生きるための術を提案したりといった表現が目立ちました。

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