情報筋によれば、LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)は、傘下に持つ「マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)」を10億ドル(約1480億円)程度で売却する交渉を進めているようだ。米投資銀行JPモルガン(J.P. MORGAN)と提携し、米ブランド管理会社のオーセンティック・ブランズ・グループ(AUTHENTIC BRANDS GROUP以下、ABG)、WHPグローバル(WHP GLOBAL以下、WHP)、ブルースター・アライアンス(BLUESTAR ALLIANCE以下、ブルースター)を含む複数の買い手候補と交渉中で、関係者によると「交渉が決裂しなければ、近く合意に至る可能性もある」という。米「ウォール・ストリート・ジャーナル(WALL STREET JOURNAL)」などの海外メディアが報じた。
本件について、LVMH、JPモルガン、ABG、WHPはコメントを差し控えるとした。また、ブルースターからのコメントは得られなかった。
なお、米ブルームバーグ(BLOOMBERG)は2024年5月、LVMHが「マーク ジェイコブス」について“戦略的な選択肢”を検討していると報じたが、LVMHは当時これを否定している。
LVMHと米ファッションブランドの相性
「マーク ジェイコブス」は1984年、当時ニューヨークにあるパーソンズ美術大学(Parsons School of Design)の学生だったマーク・ジェイコブスが、後に長年のビジネスパートナーとなるロバート・ダフィー(Robert Duffy)と共に設立。瞬く間に人気ブランドとなり、94年にニューヨーク・ファッション・ウイークに初参加。97年には、LVMHが擁する「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のアーティスティック・ディレクターに就任し(2013年に退任)、「マーク ジェイコブス」もLVMHの傘下となった。
LVMHは、傘下ブランドを長期的な目線で開発し、大きく成長させることに定評がある。一方で、米国のファッションブランドとの相性は今ひとつという印象だ。01年に「ダナ キャラン ニューヨーク(DONNA KARAN NEW YORK)」を運営するダナ キャラン インターナショナル(DONNA KARAN INTERNATIONAL)と「ダナ キャラン」ブランドのライセンシーであるガブリエル・スタジオ(GABRIELLE STUDIO)を買収したものの、16年にはG-IIIアパレル グループ(G-III APPAREL GROUP以下、G-IIIアパレル)に売却。また、21年7月には、故ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)が13年に設立した「オフ-ホワイト ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH以下、オフ-ホワイト)」の商標を所有するオフ-ホワイト合同会社(OFF-WHITE LLC)の株式60%を取得しているが、24年9月にはブルースターに売却している。なお、ヴァージルは18年3月から21年11月まで「ルイ・ヴィトン」のメンズ アーティスティック・ディレクターを務めた。
ABGやWHPの保有ブランドは?
ABGは、10年の設立。「バーニーズ ニューヨーク(BARNEYS NEW YORK)」「フォーエバー21(FOREVER 21)」、米「ブルックス ブラザーズ(BROOKS BROTHERS)」「リーボック(REEBOK)」など多数のブランドを保有しており、世界のIP(知的財産)ビジネスをけん引している。
WHPは19年の設立。「アン・クライン(ANNE KLEIN)」「アイザック ミズラヒ(ISAAC MIZRAHI)」「ジースター ロゥ(G-STAR RAW)」「ヴェラ・ウォン(VERA WANG)」などを保有。ブルースターは06年の設立。前述のオフ-ホワイト合同会社のほか、ラグジュアリー・ストリートウエアブランド「パーム エンジェルス(PALM ANGELS)」や、サーフブランド「ハーレー(HURLEY)」などを保有している。